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<編集部からのコメント>
先日もご案内しましたが、年前半で大きく伸びた住宅ローン需要ですが、ここにきてようやく落ち着きはじめた感があります。
そろそろタイミング的には消費税増税に間に合わなくなりつつあることに加え、一旦、住宅ローン金利が上昇してしまったことや、あるいは足元では住宅ローン金利がむしろ少し低下し、大きな追い風となっていた「金利上昇懸念」がやや後退していることも背景にあるのではないかと思います。
何事も、焦ったり慌てたりして良いことは一つもありません。しかも住宅購入や住宅ローンは「一生に一度」の大きな買い物であり、なおさら冷静さが必要です。
落ち着いて検討できる状況に戻りつつあるのは悪いことではないと思います。
そうすると何だかんだ言って、住宅の「増税前の駆け込み需要」は結局それほどでもなかったのかな、と思い始めていたたわけですが。
今朝の新聞を見て驚きました。不動産経済研究所が発表した首都圏の7月の新築マンションの発売戸数は、前年同月比で31.6%増の5,306戸になった、とのことですね。3割を超える増加率というのはなかなかインパクトがあります。
ちなみに過去の新築マンションの発売戸数は前年同月比でこのような推移になっているとのことです。
・首都圏
7月:31.6%増
6月:22.0%増
5月:49.2%増
※上半期計:17.1%増
・近畿圏
7月:−18.0%減
6月:15.3%増
5月:−3.4%減
※上半期計:9.5%増
こうやって並べてみると・・・結構、マチマチですね。奇麗な右肩上がりになっているイメージがありましたが、全くの記憶違いでした・・・。
首都圏では5月に49.2%増という増加率になっているほか、近畿圏では逆にデコボコしており、徐々に増加しているという流れではありませんね。
結局のところ、これは新築マンションの発売戸数であり、当然のことながら新しいマンションが発売されないことには数字が伸びないわけで、マンション業者がいつ、どれくらいの規模のマンションを売りに出すかで全体の数字は大きく変わってきます。
加えてマンション開発には、土地購入から、設計、基礎工事、本体工事、内装工事まで何年もかかるわけで、「今、売れているから、もう少し作っておこうか」というわけにはいきません。
そうするとこの数字はあくまで売り手側の事情によって積みあがっていくものであり、これがそのまま消費者のニーズの強さを表しているわけではないと言えます。
では消費者のニーズの強さを表す指数は何かというと、一般的に言われているのは「契約率」ですね。発売されたマンションのうち、何%がその月のうちに契約となったのかを表す指数ですが、首都圏の7月の契約率は81.6%となり、上記記事の通り、好調の目安とされている70%を大きく上回っています。
つまりは全体的に見れば、今のところ供給と需要が高水準でバランスしているということであり、相応の「駆け込み需要」が発生しているのは間違いなさそうです。
しかし消費者として、さらに気になるのは今後の「供給」ということかもしれません。
今、消費者サイドで駆け込み需要が発生しているとしても、今後どこかで沈静化していくのは間違いありません。実際のところ、上記の通り、異常な住宅ローン需要については一旦、ピークを過ぎたような気がします。
だとすれば、今後住宅需要が落ち着く中で、高水準の供給が続くようだと、値崩れが起こり、リーマンショック後のアウトレットマンションや、エコポイント終了後の薄型テレビのように、お買い得物件が出てくる可能性がないでもありません。
事実、前回の消費税引き上げの際には、その後、多くの住宅が売れ残り、値段がかなり下がったと言われています。
一方、駆け込み需要が収まるより早く供給が減ってしまえば、逆に品薄となって、値段は下がらないわ、選択肢は狭まるわと、消費者にとっては残念な状況になります。
気になる今後の住宅供給ですが、それを占う1つがマンションの在庫数です。上記記事の続きでは、首都圏のマンション在庫数の推移について、このように紹介されています。
リーマンショック直後に1万戸を大きく上回る形で増えてしまった、首都圏のマンション在庫ですが、5年かけて大きく減少してきたことが分かります。89年以降の約25年の間で、今マンション在庫は最も少なくなっているのですね。
つまり、マンション販売業者は、今回の駆け込み需要に対し、どんどん新規に開発するのではなく、今までの在庫を整理しながら、販売戦略を進めてきた、ということになります。
・・・なかなか賢いですね!
となると、今後も住宅価格は暴落しないばかりか、上記の通り秋以降は品薄となってくるケースも考えられますね。そうしたシナリオも頭に入れておいた方がいいかもしれません。
もちろんこれは首都圏のマンションに関わるデータですので別の地域や、あるいはマンション以外の住宅については別の動きとなる可能性も十分ありますが、一方、住宅業界で過去の教訓が生かされているのだとすれば、全体的にも似たような傾向となっていそうですね。
ご検討の方は調べてみてはいかがでしょうか。
さて、こうした駆け込み需要にのるか反るかというのは大変難しい問題で、記者自身はどちらかというと「のらない」方ではありますが、今回の住宅の駆け込み需要は、消費者にとって吉と出るのでしょうか?凶と出るのでしょうか?
それは分かりませんが、少なくともマイホーム購入に際して大切なことは、そうした駆け込み需要がなくても買いたい物件なのかどうか、一呼吸置いて考えてみることかもしれませんね。
もしそれでも買いたいと思えるなら問題ありませんが、そうでないとすると・・・やはり「増税しようが何しようが絶対欲しい」と思える物件が出てくるまで待ってみるのも手ですね。
結局のところ、住宅ローン金利の動向や、地価、税制などの住宅に関わる全ての要素を一旦無視して、その物件の魅力だけにフォーカスした時に、それでもまだ大きな魅力を感じるかどうかが重要と言えるのでしょう。
参考になさってください。