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<編集部からのコメント>
10月に入ってから予兆もなく世界の金融市場が荒れ模様となっていますね。内外の株価が大きく下がっているのはみなさんご存知なのではないかと思いますが、それに呼応するように内外の金利も低下傾向にあります。
まず住宅ローン金利と関係の深い長期金利はこのように推移しています。
9月に少し金利上昇したのもつかの間、足元では再度低下し0.4%台と史上空前の金利水準に逆戻りしています。
そして「内外の金利も低下傾向」とご案内したようにアメリカの長期金利もこのようになっています。
10月からガガガっと低下していることがわかります。こうした動きを俯瞰すれば、すわ金融危機か!?と感じなくもないですが、ただ問題はそこまで相場が暗転する理由が全く見当たらないことですね。あえて言えばエボラ熱問題くらいでしょうか?
逆に言えば遠くない将来、自律的に反転する可能性も高そうですが、それはともかくとしてこのように金利が低下傾向にあるということは住宅ローン利用者にとっては追い風となりますね。
特に10月は住宅ローン金利が半年ぶりに一部上昇しましたので、こうした金利低下の動きはなおさらありがたい、ということになりそうです。実際のところ、11月の住宅ローン金利は全般的に低下するでしょうしね。期待しておきたいと思います。
さてそのように多少上昇するタイミングがあっても全般的には長期金利も住宅ローン金利もジリジリ低下しているわけですが、そうした傾向の元で人気が出るのが住宅ローンの変動金利タイプです。
アベノミクスが注目されはじめた頃には金利上昇懸念から住宅ローンの固定金利タイプの人気が回復したこともありましたが、その後の金利低下によってそうした懸念はすっかり払拭されましたからね。合理的にも変動金利タイプの人気が回復するのは当然という気がします。
そうした住宅ローン顧客の動向を把握する上で定点観測となるのが、住宅金融支援機構が定期的に公表している「民間住宅ローン利用者の実態調査」です。その最新の「金利タイプ別利用状況」の調査結果はこのようになっています。
2014年7月−8月期の調査結果としては前回比、こういうことですね。
変動金利タイプ : 38.0% → 40.8%
当初固定金利タイプ : 30.6% → 31.6%
全期間固定金利タイプ : 31.4% → 27.6%
確かに住宅ローン金利が低下傾向にある中で、変動金利タイプの人気が上昇する一方で固定金利タイプのシェアが低下しており、「やはり金利が低下すると変動金利タイプを選ぶ人が増えるのですね」と結論づけてお終い、ということでもいいと思います。
ただ毎回、イチャモンをつけて恐縮ですが、この調査は、この種の調査の中では最も有名であり、最もデータが豊富なものではあるのですが、どうもその結果がおかしいのですね。
先日のコラムでもご紹介しましたが、一般社団法人住宅生産体連合会が発表した「2013年度戸建注文住宅の顧客実態調査結果」では、2013年度の住宅ローン金利タイプ別構成比についてこう発表しています。
つまりこの調査では住宅ローン利用者はこのような選択をしたということですね。
・変動金利タイプ : 61.0%
・当初固定金利タイプ : 21.9%
・全期間固定金利タイプ : 17.1%
上記、住宅金融支援機構が実施している「金利タイプ別利用状況」の調査結果グラフは2013年1月からカバーされていますが、変動金利タイプのシェアはおおむね4割ということで、後者の調査結果と無視できない極めて大きな乖離があることがわかります。
正直申し上げて記者の感覚からすれば「変動金利タイプのシェアは6割」と言われた方がよっぽど納得できるわけですが、今回、別の新たな調査結果が報道されていましたのでそれを確認してみたいと思います。
上記記事のとおり、こちらは不動産流通経営協会が住宅を買った世帯を対象に毎年実施している動向調査とのことですが、その中で住宅ローン金利タイプのシェアはこのようになっています。
一部、無回答などはあるものの、3つの金利タイプのシェアはこのようになっています。
・変動金利タイプ : 59.1%
・当初固定金利タイプ : 27.4%
・全期間固定金利タイプ : 6.8%
今回の調査では固定金利タイプを選考している人が増えているという結果ではあるものの、変動金利タイプのシェアは59.1%と引き続き圧倒的です。そしてこの「約6割」というシェアは奇しくも、上記住宅生産体連合会の調査結果とほぼ同じなのですね!
この調査は首都圏1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の住宅購入者を対象とした調査のようですので、住宅金融支援機構の調査対象とはズレがあるのかもしれませんが、しかし別の2つの調査がどちらも似たような結果になっているというのは看過できませんね。
ちなみにこの不動産流通経営協会の調査では当初固定金利タイプの内訳としてこのように示しています。
つまり27.4%を占める当初固定金利タイプ利用者のうち、4割超が「5年以下」という極めて短い固定期間を選んでおり、これが実質的に変動金利タイプとほぼ同じ商品であるととらえれば、27.4%×4割=約11%の方は変動金利タイプに含めるという考え方もできそうです。
そうすると全体の7割の人が実質的に変動金利タイプ利用者という見方もできるのですね。
しかしこうなってくると疑問に思うのが、なぜ住宅金融支援機構の調査では変動金利タイプのシェアが安定的に約4割となるのか、という点です。
うがった見方をすれば、住宅金融支援機構は全期間固定金利タイプの代表的な商品であるフラット35の元締めであり、そうした立場が調査結果に影響されていると考えてしまうわけですが・・・さすがにそれは下衆の勘繰りというところでしょうか。
今のところ2対1となっておりますが、他の調査ではどのような結果となるのか、注意深くWatchしていきたいと思います。
もちろんだからといって、変動金利がよくて全期間固定金利が悪いなどとお勧めする気はありません。未来の金利動向は誰にも正確に予測できない以上、選んだ時点で「正解」が用意されているものではないからですね。
あくまでご自分の金利観と、「金利上昇リスクに対する保険料」としていくらの金利アップなら許容できるのか、あるいはできないのか、といった視点で検討を進めていただければと思います。
もちろん変動金利タイプを選んでおいて、金利が上昇してきたら固定金利タイプに切り替える、といったことも可能です。
当サイトとしては、変動金利タイプと固定金利タイプを半々ずつ取り入れる「ミックス金利」をお勧めしておりますが、上記調査結果に表れているとおり、今のところは全くのマイノリティです・・・。
参考になさってください。