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先週の日銀の新しい金融緩和の枠組み変更を受けて、長期金利は「0%」に向けて操作されていくことになりました。
とするとこれまでの長期金利のマイナス水準は修正されて当然という気がするのですが、今日も長期金利は「−0.060%」とどっこいマイナス水準に沈んでいます。
確かに金融機関からすれば日銀の当座預金に預けても−0.1%のペナルティがかかるのであれば、−0.06%であっても国債を購入した方がいいと考えても不思議ではありませんが、しかし日銀が「0%」と言っているわけですから、それより低い金利で購入するのは「割高」だと言えます。
市場では「多少のマイナスなら日銀は気にしない」という読みもあるようですが、日銀が新たな「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」で目指すイールドカーブコントロールとは要するに金利のカーブを「右肩上がりにする」ということです。
そのためにはやはり長期金利=10年金利はそれなりに上昇しないと「右肩上がり」になってこないと思うのですが、ただ先日の日銀黒田総裁の講演を聞くと、この枠組みは「長期金利のキャップになる」ということのようです。
キャップというのは「上限」ということですから、言い換えれば「長期金利は0%以上にはならない」ということであり、「どれだけマイナスであっても構わない」という風に聞こえます。
だとすると・・・新たな枠組みにおいても長期金利はずっとマイナスを維持するのかもしれませんね・・・。いやはや金融政策の「真意」を読み解くのは難しいものです。
いずれにしても市場が今後、この新たな金融緩和をどう解釈し、素直に日銀に管理されていくのか、あるいはそうならないのか注目ですね。
さてそのようにこれまでのマイナス金利に伴う市場金利の低下はターニングポイントを迎えつつあるわけですが、それでも少なくともこれまでの金利低下で住宅ローンが借り換えを中心に大きく盛り上がってきたのは間違いありません。住宅金融支援機構が発表した、2016年4−6月期の業態別の住宅ローン新規貸出額及び貸出残高の推移を見ても、それははっきりとわかります。
昨年の同じ時期が約4兆4千億円で、今年は5兆9千億円ということですから一気に32%も増えているのですね!これぞマイナス金利効果と言えそうです。
ただし。
ちょっと思い出していただきたいのが、この前の2016年1−3月期の新規貸出額は5兆8千億円で、前年である2015年1−3月期は5兆9千億円ですからむしろ減少していたのですね!
そんなわけで本当に増えたのかどうか、もう少し長期的にチェックする必要があるわけですが、過去3年の新規貸出額の推移をチェックするとこうなります。
こう並べてみると・・・確かにこの4−6月期の住宅ローンの新規貸出額は明らかに伸びていますね。マイナス金利政策が住宅ローンの貸出・借入動向に大きな影響を与えたのは間違いなさそうです。
ちなみにこうやって見ると年間約20兆円くらいの新規貸出があるわけで、住宅ローン残高もそれくらい伸びているのではないかと想像されるわけですが、実際の「残高」の推移はこのようになっています。
「4−6月期」で比較すれば過去3年でこのように増加していることになります。
・2014年 : 178兆円
・2015年 : 180兆円(+2兆円)
・2016年 : 183兆円(+3兆円)
つまり、残高としては2〜3兆円しか増えていないのですね!
約20兆円も新規貸出があるのに、残高が2〜3兆円しか増えていないとすれば、これはつまり「新規貸出のほとんどが借り換えか・・・」と早合点してしまうかもしれませんが、そうではありません。
と言うのも住宅ローン残高は約定弁済があるために放っておいてもどんどん残高が減っていくのですね。
仮に平均的な借り入れ年限を25年くらいとすれば、単純計算で毎年4%ずつ残高が減少することになります。とすると2015年4−6月期→2016年4−6月期では、このような入れ替えが起こったということですね。
・新規貸出 : 21兆4千億円
・約定弁済 : −7兆2千億円
しかしこれなら残高が14兆2千億円増えるはずですが、実際には2兆8千億円しか増えていません。この差額=11兆4千億円が「借り換え」ということでしょうね。整理するとこうなります。
・新規住宅ローン : 10兆0千億円
・借換住宅ローン : 11兆4千億円
・約定弁済 : −7兆2千億円
・住宅ローン残高 : +2兆8千億円
確かにこれなら数字がピッタリ合います。
つまり過去1年で住宅ローン残高180兆1千億円のうち、11兆4千億円が借り替えられたということになります。残高比では約6%ということですね。
結構な割合のような気もしますが、実際には恐らくこの残高の半分以上は「借り換えた方が得」なのでしょうから、まだ大多数の方が「割高な金利を払っている」のだと思うと・・・複雑な気持ちもします。
まだ借り換えをされていない方はとりあえず各銀行が提供している「借り換えシミュレーション」で借り替えメリットを試算してみてはいかがでしょうか。
ちなみに今回、借換をした人は「約6%」という数字が出ましたが、先日のこちらのコラムでは全く異なる元データから奇しくも「約5%」という数字が出ました。
>>>マイナス金利後も借り換えた人は5% 残り95%は割高な住宅ローン金利を払っている!?
どちらも当たらずとも遠からずと言ったところかもしれませんが、いずれにしても9割以上の人は「割高な金利を払っている可能性がある」ということですね。
心当たりがある方は繰り返しになりますが、まずは借り換えメリットを試算されることをオススメいたします。
参考になさってください。