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新規参入の意向が報じられながら全く話が進んでいなかったのが、ゆうちょ銀行の住宅ローンです。2012年9月に認可申請したようですから、かれこれ4年半もたなざらしだったわけですね。
認可が進まなかった背景としてはもちろん、ゆうちょ銀行の審査体制に対する懸念があったのでしょうけれど、とはいえ4年もあればさすがに一通りの審査能力を身につけることはできたのではないかと思います。新規参入銀行であるソニー銀行も楽天銀行もイオン銀行も、自分たち自身で審査をしているわけで、ゆうちょ銀行だけできないというのはさすがに説得力がありません。
要するにこれは、実質的に「政府管理」となっているゆうちょ銀行が住宅ローンビジネスに参入すると「民業圧迫」になることから、金融庁が地域金融機関の収益悪化を懸念して「待った」をかけ続けている、ということなのでしょうね。本音と建て前が絡み合い、なんだかよくわからないことになっています・・・。
ちなみに記者自身も、日本の金融界の「ガリバー」であるゆうちょ銀行が住宅ローンビジネスに参入することに、あまり良い印象を持ちません。郵政民営化のゴタゴタを思い返せばわかるように、「日本の政治そのもの」である郵政、そしてゆうちょ銀行によって、健全かつ活発な競争が行われている住宅ローン市場が変容してしまう可能性は十分あります。
もちろん住宅ローン利用者にとって良い変化であれば問題ないのですが、悪い変化が起こることもあり得ますからね。
さらにもし懸念通り脆弱な審査体制で不良債権の山を築いてしまうと、今のままの体制であれば巡り巡って「国民負担」ということになるのでしょうから、やはり素直に賛同する気にはなれないです。
そんな複雑なまなざしで眺めていたゆうちょ銀行の「住宅ローン新規参入問題」ですが、先日の報道によれば、ゆうちょ銀行自身が参入を断念した、ということのようです。その理由はこう述べられております。
・住宅ローンビジネスは民間の金融機関が既に網羅しており、ゆうちょ銀行が進出すると消耗戦になる。
・低金利と競争激化で住宅ローンからは十分な収益を見込めない。
・競合する地方銀行からの反発にも配慮する必要があった。
ある意味、住宅ローンの「過当競争」をインサイダーであるゆうちょ銀行自身が認めているわけで、住宅ローン利用者からすればポジティブに受け止めてもいいのかもしれません。
また、ゆうちょ銀行側の「本音」としては、「いつまで待っても認可が下りる目途が経たないので諦めた」というのもあるのでしょうね。
そうしたわけで、「ゆうちょ住宅ローン」の誕生は当面無くなったわけですが、記者の抵抗感はさておき純粋に住宅ローン利用者の立場から言えば、このニュースは「悲報」という事になるのでしょうね。
何と言ってもゆうちょ銀行は全国津々浦々に支店がありますので、特に地方にお住まいの方にとっては住宅ローンの有力な選択肢となる可能性がありました。
ゆうちょ銀行がどのような住宅ローンを目指していたかは分かりませんが、基本的には「審査は厳しいけれども金利も低い住宅ローン」か「審査は甘いけれど金利も高い住宅ローン」かのどちらかとなります。
どちらも一定のニーズがあるわけで、そうした選択肢が減ることは良いことではありません。
では具体的に地方にお住まいの方は割高な住宅ローンの利用を強いられているのでしょうか?
ということでまず、業態別の住宅ローン金利タイプをチェックしてみると、住宅金融支援機構の2017年2月に発表された調査結果ではこのようになっています。
固定金利の内訳は業態によって多少のバラつきがありますが、それでも全体的な金利タイプの割合はおおむね共通していそうです。とすると、「顧客の意にそぐわない金利タイプを押し付けられている」ということはなさそうです。
となると次に気になるのが金利水準ですね。というわけで、九州を「地方」のサンプルにすると怒られてしまうかもしれませんが、福岡・熊本・鹿児島という九州の南北を貫く3県でその住宅ローン金利をチェックしてみたいと思います。
・福岡銀行住宅ローン(表面金利)
変動金利 : 0.975%
10年固定 : 1.15%
20年固定 : 1.85%
・肥後銀行住宅ローン(表面金利)
変動金利 : 0.950%
10年固定 : 1.10%
20年固定 : 取り扱い無し
・鹿児島銀行住宅ローン(表面金利)
変動金利 : 0.950%
10年固定 : 1.10%
20年固定 : 2.50%
ちなみに2017年4月現在の住信SBIネット銀行と三菱UFJ銀行の金利は以下の通りです。
・住信SBIネット銀行住宅ローン(表面金利)
変動金利 : 0.447%
10年固定 : 0.56%
20年固定 : 1.06%
・三菱UFJ銀行住宅ローン(表面金利)
変動金利 : 0.875%
10年固定 : 1.05%
20年固定 : 2.70%
さすがに、ネット銀行の中でも人気の住信SBIネット銀行の住宅ローン金利とは比べるべくもありませんが、住宅ローン残高1位の三菱UFJ銀行の金利と比べる限り、上記の三地方銀行の住宅ローン金利は「悪くない水準」と言えます。
であるなら、ゆうちょ銀行の住宅ローン断念を残念がる必要はそれほどなさそうです。
また、念のため住信SBIネット銀行住宅ローンの「取り扱い地域」をチェックしてみるとこうなっています。
「日本国内全域(離島を除く)」
つまり日本のほとんどの地域で利用できるわけで、なおさら「ゆうちょ銀行の住宅ローンは不要」と考えてよさそうです。
上記の通り、ゆうちょ銀行が住宅ローンの新規参入を断念した「本音の理由」を「いつまで待っても認可が下りる目途が経たないから」と述べましたが、意外と本音でも「住宅ローンビジネスは民間の金融機関が既に網羅しており、ゆうちょ銀行が進出すると消耗戦になる」と思っているのかもしれません。
だとすると・・・「悲報」ということでもなさそうですね。
参考になさってください。
<日本住宅ローンプランニング編集部>