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安倍政権発足からも、アベノミクス開始からも、日銀黒田総裁就任からも、異次元緩和開始からも、約5年となっています。その間の長期金利の変動を振り返るとこうなります。
異次元緩和スタートによって概ね順調に低下した長期金利は2016年の「マイナス金利」によってついにハイライトを迎えたわけですが、その後は日銀の「イールドカーブコントロール」によって誘導目標が「0%」にされたこともあって「0%前後」で推移していることが分かります。
正確に言えば長期金利は「0%〜0.1%」のレンジで推移しているわけですが、これは長期金利が0.1%に近づくと、日銀が「指値オペ」によって「0.11%以上に上昇しない」ようにすることで実現されています。まさにコントロールされているのですね。
「イールドカーブコントロール」発表時は「中央銀行が金利をコントロールできたことはない」という冷めた見方もありましたが、実際にはほぼ完璧に運営されています。やはり「国債を無尽蔵に購入できる」という点は大きいですね・・・。
さて当然のことながら、住宅ローン人気は金利に反比例することになります。つまり金利が下がれば住宅ローン人気が上昇し、金利が上がれば住宅ローン人気が低迷するということです。
要するに上記グラフを反転させた、このような人気カーブが予想されるわけですが、実際のところはどうなのでしょうか?
というわけでちょうど日銀が「貸出先別貸出金統計(2017年12月)」を発表していますので、そこから住宅ローンの新規貸出の推移をチェックしてみるとこうなります。
・2012年:14兆4千億円
・2013年:14兆7千億円
・2014年:14兆0千億円
・2015年:14兆1千億円
・2016年:16兆7千億円
・2017年:15兆3千億円
きれいに2016年に向けて増加していったのかと思いきや、意外とそうでもないですね。2013年に1回目のピークが来ていますが、これは2014年の消費税増税に向けての駆け込み需要によるものかと思います。
しかしそれでも2016年は住宅ローンの新規貸出が大きく伸びました。やはりマイナス金利政策に伴う長期金利の低下、そして住宅ローン金利の低下が大きいのでしょうね。
またイールドカーブコントロールによって長期金利がプラス水準に回復した2017年も、住宅ローンの新規貸出は前年ほどではないにせよ高水準を維持しており、その点では住宅ローン人気と金利水準は相関していると言えます。当たり前と言えば当たり前ですが・・・。
ただその2017年の実績も「2016年の住宅ローン人気が多少後ずれした」という見方もあるかもしれません。住宅ローンは申込から借り入れまで1年以上かかる場合もありますからね。
というわけで念のため、「年毎」ではなく「3ヶ月毎」の住宅ローンの新規貸出の推移をチェックしてみるとこうなります。
この動きを見る限り、最新の2017年10月〜12月期の新規貸出額は2013年や2014年、2015年の同期水準を上回っていますので、前年ほどではないにせよ、失速している様子は見られません。やはり足元の住宅ローン人気は「まずまず高い」ということなのでしょうね。
なおこのような足元の根強い住宅ローン人気の背景として、「金利先高観」もあるのかもしれません。これまで何度もご案内しているように、「全体的に低金利が維持されるのは間違いないものの、金融緩和の出口を見据え、長期金利が0.2%程度上昇することはあり得る」という見立てが金融市場に残っています。
ではみんなの住宅ローン金利見通しはどうなっているかと言うと、ノムコムが実施した「不動産購入に関する意識調査アンケート」ではこのようになっています。
こちらは半年に一度の調査ですが、「金利は上がっていくと思う」という回答が、2016年7月調査を底にして徐々に上昇していることが分かります。こうした金利観の変化が一般的なものなのかどうかは分かりませんし、単に上昇した住宅ローン金利を後追いしただけかもしれませんが、「動かない住宅ローン金利」の裏で、関係者の思惑は徐々に変化しているということですね。
仮に長期金利が上昇するとしても「+0.2%」程度であれば慌てる必要は全くないとは思いますが、ただ一方で、「住宅ローン金利が上昇する可能性がゼロではないのに静観していていいのか」という考え方もあるのかもしれません。
当サイトとしては、業者や他サイトにありがちな、「住宅ローンの金利上昇懸念を煽って借り入れを促す」といった「扇動」は厳に慎みたいと思いますし、仮にそのように長期金利が上昇したとしても影響を受けるのは住宅ローン固定金利だけであって、人気の住宅ローン変動金利は低金利を維持するのではないかと思いますが、確度はともかくとして、上記の通り日銀が長期金利を多少引き上げる可能性がある点は頭の片隅に入れておいていただければと思います。
参考になさってください。
<日本住宅ローンプランニング編集部>