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住宅ローンの借入は人生の一大イベントですね。失敗が許されないとすると慎重にも慎重を期す必要がありますが、とすると気になるのがみんなの借入状況かもしれません。
というわけで前回に引き続き住宅金融支援機構から発表された「フラット35利用者調査」から、住宅ローン利用者の所要資金、年収倍率、総返済負担率についてチェックしていきたいと思います。
まずは所要資金ですが、住宅種別=注文住宅、土地付注文住宅、建売住宅、マンション、中古戸建て、中古マンションの6種類でこうなっています。
2017年の平均所要資金(購入金額)はこうなります。
・注文住宅 : 3,359万円
・土地付注文住宅 : 4,039万円
・建売住宅 : 3,337万円
・マンション : 4,348万円
・中古戸建て : 2,393万円
・中古マンション : 2,844万円
意外というべきなのか、むしろ今時当然なのかは分かりませんが、新築マンションが平均4,348万円と断トツですね。そのうちマンションがステータスシンボルとなってくるのでしょうか。
他方、中古戸建ては平均2,398万円ですね。新築マンションと耐用年数が違いますし、建て替えなどの費用を勘案するとトータルコストではどちらが安いのかは微妙かもしれませんが、少なくとも「新築マンションの満足度が中古戸建ての満足度の2倍」ということはないと思いますので、積極的に中古戸建てを選ぶという選択は合理的です。
なお過去10年の値動きを見てみると、2008年のリーマンショック直後に落ち込んだ後、2013年のアベノミクス開始以降順調に上昇してきていることが分かります。住宅ローン利用者の立場から言うと「順調」という表現は適当ではないかもしれませんが・・・。
しかしそうした中でも低位安定しているのが「建売住宅」と「中古戸建て」です。その理由は定かではありませんし、人気があれば価格が上がるはずでしょうから、価格が上昇しないのにはしない理由があるわけで、また購入してからの「値上がり益が見込みにくい」という点ではむしろネガティブに考える方もいるかもしれませんが、とは言いつつ「高値掴みリスク」を避けるために戸建てを選ぶというのも合理的ですね。
もちろんマイホームは合理性だけで選ぶべきものではありませんが・・・。
では次に年収に対してどれくらいの住宅を購入しているのか=年収倍率を見てみたいと思います。こちらも住宅種類別の集計ですね。
2017年の平均年収倍率はこうなります。
・注文住宅 : 6.5倍
・土地付注文住宅 : 7.3倍
・建売住宅 : 6.6倍
・マンション : 6.9倍
・中古戸建て : 5.1倍
・中古マンション : 5.6倍
土地付注文住宅は7.3倍、マンションは6.9倍と高めであることが気になりますが、全体的には6倍前後ということで「そんなものかな?」という気はします。
一方で過去10年のトレンドを見てみると右肩上がりで上昇しており、概ね+1倍程度増加しています。もちろんこれはそれだけ「背伸びした物件を購入している」ということですから、よろしくない傾向ですね!
前回のコラムを思い出してみると、フラット35住宅ローン利用者の平均年収は過去10年で以下のように減少してきています。
2007年には平均690万円だったものが、2017年には598万円になっているわけですね。「年収が下がっているのに所要資金=購入資金は増えている」わけですから、年収倍率が増加するのは当然と言えます。
ただ過去10年を振り返ると住宅ローンに関してうれしい動きと言えるのが住宅ローン金利の低下ですね。主要な市場金利であり、住宅ローン金利と関係の深い10年もの国債金利=長期金利は過去10年でこのように推移しています。
10年前は1.5%あったものが足元では0%近辺ですね。住宅ローンの平均借入期間が30年程度とすると、単純計算で言えば−1.5%×30年÷2=22.5%ほど総返済額が減っている計算となります。
つまりは住宅ローンの返済負担という観点から言うと「年収の減少+住宅価格の上昇」vs「住宅ローン金利の低下」との戦いだと言えます。
では実際に住宅ローンの返済負担=総返済負担率はどうなっているかと言うとこうなっています。
2017年の平均総返済負担率は21.2%となっています。過去10年を振り返ってみても21%前後で推移しており、ほとんど全く変化していません。
つまり
・過去10年でフラット35住宅ローン利用者の年収が減少し、住宅価格が上昇しているものの、そうしたネガティブインパクトを住宅ローン金利の低下が吸収し、住宅ローンの返済負担は増えていない。
ということですね!黒田日銀に感謝ですね・・・。
実態としては、年収と返済負担が「固定値」であり、住宅ローン金利の低下に反比例して住宅購入予算=購入住宅価格が上昇しているということではないかと思いますが。
逆に言えば今後金利が上昇すると、住宅購入予算も購入住宅価格も低下していくということですね。住宅市場としてはWパンチということになりそうです。
いずれにしても住宅ローン利用者としては過去10年で住宅ローンの返済負担が増えていないという事実を冷静に受け止め、金利が上がっても下がっても、年収が減っても増えても、一喜一憂することなく堅実な返済計画を立てていただければと思います。
参考になさってください。
<日本住宅ローンプランニング編集部>