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世の中には大きく分けて「賃貸派」か「持ち家派」に分かれているようで、両者でどちらが得なのか、日々論戦が交わされています。参考までに両者の主張をまとめてみました。
【賃貸派の主張】
・賃貸はいつでも引越しできる気軽さがある
・都内のそれも駅に近いマンションで生活でき便利
・持ち家だと不動産に多額の投資をするためポートフォリオがいびつになる
・賃貸は管理組合や町内会など面倒な付き合いがない
・水回りの修理などに自己負担がかからない
・古くなったら同じ家賃で新築の賃貸物件に引っ越せばいい
・家族構成にあわせた住まい選びが可能。子どもが成人したら一戸建てはToo Big
・固定資産税などがかからない
【持ち家派の主張】
・賃貸は将来何も残らない。持ち家なら資産として残る
・賃貸は家賃を払うだけ無駄
・壁紙などを汚しても持ち家なら気にならない
・一国一城の主として家を所有する満足感を得られる
・持ち家も条件次第で売ることは可能。不動産投資として儲かることだってある
・狭い賃貸マンションでは子どもに恥ずかしい思いをさせてしまう
・近所づきあいがあった方が、何かと安心だし、楽しい
このようなお互いの主張は、決して交わることがなく、平行線のまま続きます。持ち家派はすでに多額のローンを背負っているので、自ら下した判断を肯定化するパワーは半端ではありません。
実は私は賃貸派なのですが、持ち家派には何度もこう脅されています。「先延ばしにしていること事態がリスクだよ」と。彼らは次の3つのタイミングで、今すぐ持ち家を購入することがベターな判断だと説きます。
1.年齢からくるタイミング
2.情勢のタイミング
3.供給のタイミング
「1.年齢からくるタイミング」は、もし持ち家を将来的に購入する場合は、年金生活の始まる前、たとえば55歳くらいまでにローン完済を目指すことになります。ならば今すぐにスタートすべき。
「2.情勢のタイミング」は、今は史上最低の金利水準。税金は最大控除で、デフレなのでモノを買うには価格が安くチャンスというわけです。
「3.供給のタイミング」は、再開発が進んでいる今が、物件が最も多く、購入するチャンスということ。いつでもほしい物件が手に入るとは思うな。家探しは早くした方がいい、との主張です。
なるほど。たしかに説得力があります。ただしこれもすべて「持ち家をいつか買う」ということが前提のアドバイスなのです。「オレは一生、賃貸派だ」というと、冒頭で紹介した「賃貸派」と「持ち家派」の主張が再開されます。そして結論は出ないまま、永遠に議論が繰り広げられていくのです・・・。
<編集部からのコメント>
賃貸か持ち家か。筆者の中では明確にその結論が出ているのですが、残念ながらこちらのブログでは(ブログを一方的に批判するのはアンフェアかもしれませんが)、表層的な話に終始していますね。金融投資系のサイトなのに残念なことです。
まず賃貸か持ち家かという議論は、経済合理性で測られなければいけません。なぜなら経済合理性というのは「結局どっちがオトクか」ということで主観の入り込む余地はありません。「賃貸派」や「持ち家派」と言った主義・主張に影響を受けるものではないからです。
■持ち家の場合
ではまず持ち家の方のコストから考えて見ます。モデルケースとしてこんな場合ですね。
土地 2,000万円
建物 2,000万円
合計 4,000万円
頭金 500万円
住宅ローン 3,500万円
これで3%、30年のローンを組んだとします。支払う利息は30年間合計で大体1,800万円です。
次に固定資産税ですが、ざっくり年10万円×30年として300万円です。
それから家の修繕費がいくらくらいかわかりませんが、10年で200万円くらいですかね?なので30年で600万円とします。
これで終わりでしょうか?
違いますね。建物は老朽化が進むと、住めるかどうかはおいておいて、価値が急速に減っていきます。日本の場合、築20年もすれば、ほとんど無価値という評価でしょう。これを「減価償却」と言いますが、このケースで言えば建物の価値2,000万円が0になるということになります。
したがってもろもろのコストを合計すると
<持ち家の30年分のコスト>
支払利息 1,800万円
固定資産税 300万円
修繕費 600万円
減価償却 2,000万円
合計 4,700万円
となります。
■賃貸の場合
次に同じ物件を賃貸で借りることを想定します。通常の不動産利回りは5%〜7%くらいだと思いますので、仮に6%とします。単純に考えれば4,000万円×6%=240万円が賃料になりますが、上記の通り建物の価値は減っていきますので、それも加味すると30年分の賃料は4,860万円となります。
ただし話はこれで終わりではありません。賃貸の場合、持ち家の頭金に消えた500万円は預貯金のまま運用できます。仮に年1%で30年間運用できるとすると、30年間分の利息は複利で167万円になります。
あとは賃貸の場合、持ち家と資金の流れが違うので、もう少し利息で儲かりそうな気もしますが、一方、更新料といった費用の要素も出てきますので、ここでは割愛します(結論に大きな影響は出ないと思います)。
したがってもろもろのコストを合計すると
<賃貸の30年分のコスト>
賃料 4,860万円
預金利息 ▲167万円
合計 4,697万円
となります。
■結論
あら不思議、持ち家のコストは4,700万円、賃貸のコストは4,697万円とほぼ同額になりました。
つまり持ち家も賃貸も30年間で考えれば「コストはほぼ変わらない」ということなのです。
そう、結論から言うと持ち家も賃貸も経済合理性から言えば「どっちも同じ」なのです。
したがって持ち家派の主張である「賃貸は将来何も残らない。持ち家なら資産として残る」とか「賃貸は家賃を払うだけ無駄」というのは、経済合理性から言えば全くの誤解です。
持ち家の場合は、お金が減価償却と支払利息に消え、賃貸の場合は、それが賃料に消えるという違いだけで、どちらもお金が消えていくことには変わりはないのです。
したがって持ち家か賃貸か、という問いには(どちらも変わらないので)経済合理性ではなく、ライフスタイルや住宅に対する価値観で決めればいいのです。
つまり「賃貸はいつでも引越しできる気軽さがある」が「持ち家の場合、一国一城の主として家を所有する満足感を得られる」ので、どちらがいいですか、というような判断になってきます。
■持ち家派が有利になるケース
ただし2つだけ、持ち家派が間違いなく有利になるケースがあります。
1つ目は「持ち家に30年以上住む」ケースです。建物価値が20年で0になるからと言って、当然、住めなくなるわけではありません。田舎には築50年とか60年の家はごろごろしていますよね。減価償却が終了し、住宅ローンを完済しおえれば、持ち家の場合のコストは激減しますから、そこからは経済合理性の観点からは本当においしくなります。
2つ目は「築20年以上の中古物件を購入する」ケースです。この場合も建物の価値はほぼ0になっていますから、減価償却によるコストはほとんどありません。住宅ローンの支払い利息くらいのものですね。こちらも建物の利用価値と売買価値のギャップに注目したスマートな購入方法だと思います。
20年経っても、30年経っても住みたい家かどうか。
結局、賃貸か持ち家かの判断基準はそこなのかもしれませんね。