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<編集部からのコメント>
先週=4月第1週の金融関連のハイライトといえば間違いなく、新しく日銀総裁に就任した黒田氏による「異次元」の金融緩和です。
今まで金融緩和といえば専ら、いかに金利を引き下げるかに注目されてきたわけですが、それを転換し、資金量=マネタリーベースを拡大させることを目標として実施する、ということですね。上記記事にもあるように、資金供給量の残高を2012年末時点で138兆円となっているものを、来年末=2014年末には270兆円まで広げる、ということです。
正直、素人からすれば、138兆円や270兆円と言われてもピンと来ませんし、それが多いのか少ないのかも全く分からないわけですが、そうした素人の戸惑いをよそに激しく反応したのが金融市場で、予想を大きく上回る金融緩和だったことから、長期金利は歴史上最低金利だった0.435%をあっさり割り込み、0.315%まで低下したようですね。
0.315%!
長期金利=10年もの金利という感覚すれば信じられないような低金利、ということになります。
ただ一方で、最低金利をつけたその日に長期金利は0.620%まで上昇するなど1日の中で大きく変動し、金融市場自体もこの異次元の金融緩和の効果を読みきれていないことが分かります。
ちなみにそうした金融緩和や金利低下の報道を受けて、世の中の方々の住宅ローン金利に対する関心が高まったのかどうか、当サイトにお越しになる方の数も4月4日以降、大きく増え、今に至っております。
そういう意味では、黒田総裁による日銀の最初のお仕事は上場の出来だったと言えそうですね。もちろんそうした発信力は、日銀新総裁に求められていたスキルの1つではあったわけですが。
さてそのような空前の金融緩和によって引き起こされる効果というのはどういうものがあるのでしょうか?
まず金融市場にお金があふれるわけですから金利は低下します。供給が需要を上回れば下がるのは金利も物価も同じ、ということですね。
加えてそうやって余ったお金が株式市場や不動産市場に流れていくことになりますから、間接的に株価や地価の上昇要因となります。
と、ここまでは教科書に載っていそうな金融緩和の基本的な効果ということになりますが、最近の金融緩和は一歩も二歩も先を行っていて、もっと直接的に株価や地価を上昇させる効果があります。その仕組みは上記記事でも説明されているようにこういうことになります。
左側のゾーンとなりますが、今の日銀は国債の購入を通じて金融市場に資金を供給するだけでなく、株式投信=ETFや、不動産投信=J−REITを直接購入しているのですね。これはダイレクトに株価やREIT指数を上昇させる効果があります。
そして資金供給量=マネタリーベースを増やすということは、まさにこのETFやJ−REITの購入額を増やすということも意味するのですね。
株価はまだしもJ−REIT市場はまだまだ小さいので、こうした日銀の購入拡大の影響はモロに響きます。実際のところ、東証のREIT指数は過去1年間でこのような推移となっています。
ビックリするくらい上昇していますね!1年前は約900ポイントで、今は約1,600ポイントですから、何と1年で8割近く上昇していることになります。「アベノミクスによりバブルが起きる」と警鐘を鳴らす人もいますが、少なくともJ−REITに関してはとっくにバブルの様相ですね。
さらにこれから、実際にJ−REITが追加購入されていくわけですから、まだまだ上昇しそうです。以前と比べて、日銀が直接影響を与えられる市場が増えている、という点は理解しておく必要がありそうですね。
ではこのようなREITバブルはどのような形で地価上昇につながっていくのでしょうか?
世の中には様々なREITがありますが、そのほとんどはオフィスビルを対象にしています。つまりこうたREITの活況は、まずは3大都市圏などの都心部のオフィスエリアの地価上昇という形で現れてきます。
であれば、個人向けの不動産には関係ないと思われるかもしれませんが、残念ながらそうではなく、こうした地価上昇は周りの地域を巻き込みながら連鎖反応的に上昇していくのですね。
仮に都心部のオフィスエリアから地価が上昇するのであればその波は都心部から周辺地域、そして郊外へと広がっていきますし、オフィスエリアから住宅エリアへと拡大していくことになります。
実際のところ、国土交通省の調査によれば、全国的に地価が下げ止まり、そして上昇傾向が徐々に鮮明になってきています。日銀のREIT購入拡大がそうした傾向を後押しする要因の1つとなっているのは間違いありません。
>>>公示地価、下げ止まりへ 上昇地点は5倍
以前の金融緩和と地価上昇の関係は、金融緩和→金利の低下→カネ余り→不動産市場への資金流入→地価上昇、といったやや「風が吹けば〜」的な因果関係だったのに対し今は、金融緩和→REIT購入→地価上昇、とダイレクトな関係に変わってきている点は注意が必要ですね。
これから住宅購入を検討されている方にとっては、金融緩和のデメリットと言えるのかもしれません。
ただし金融緩和には上記の通り金利の低下や、景気の底支えなどメリットも多いですね。こうしたメリットとデメリットを冷静に把握した上で、うまくチャンスへと結びつけていただければと思います。
参考になさってください。