※当サイトには広告リンクが含まれています。
<編集部からのコメント>
さて今回も4月4日に発表された、黒田日銀による「量的・質的金融緩和」、別名「異次元の金融緩和」について。
どちらの呼び方が浸透しているのかは分かりませんが、「量的緩和」で検索すると前者の「量的質的金融緩和」が先に出てきますのでこちらの方が浸透しているのかもしれません。
リョウテキシツテキ・・・という呼び名は何とも不自然ですし、日本語としても「テキ」のリフレインは正しくなさそうですが、なぜこう書くかと言うと、以前の金融緩和の手法が「量的金融緩和」と呼ばれていたので、それとの違いを出すために「質的」を加えて「量的質的金融緩和」ということになったのではないかと思います。
ちなみにアメリカの金融緩和は「QE2」「QE3」のように数字で区別しています。QE2はもちろんクイーン・エリザベスU世をもじっているわけですが、どちらがスマートかどうかは別にして、文化の違いが出ていて面白いですね。
本題に戻って、ではこの「量的質的金融緩和」が以前のものと比べて具体的に何が違うかといえば、主に「マネタリーベースを2倍に拡大すること」ということのようです。要するに今までやってきた金融緩和の規模を2倍にしていく、ということですね。
バブル崩壊以降、実質的に20年以上続いてきた金融緩和の中で、唯一確実な効果として挙げられるのは「金利の低下」です。残念ながらインフレにも株価上昇にも景気回復にもつながりませんでしたが、金利だけは着実に低下しました。
とすると今回の「量的質的金融緩和」でも、少なくとも、さらなる金利の低下は期待できそうです。上記記事にもある通り、今後の金利の低下を見越し、個人や企業のマネーの動きが勢いを増しそう、というのはその通りだと思いますし、実際、足元ではすでに住宅ローンでも、今まで絶好調だった変動金利タイプのシェア拡大に陰りが見え始めていますね。
>>>住宅ローン変動金利タイプ、2月のシェア低下
今後はこうした住宅ローンの固定金利タイプ人気がさらに高まってきそうです。
しかし。
新たな金融緩和策発表後の、最も代表的な金利指標である長期金利がどのようになっているかと言えばこのようになっています。
追加金融緩和への期待の高まりと共に2月以降、大きく下がってきたわけですが、4月4日に終値ベースでは0.4%台前半まで急落した後、そこからは概ね上昇してきているのですね!昨日(10日)は何と0.615%まで上昇して終わったようです。
もちろん長期金利の絶対水準としては、0.6%でも「異次元の低金利」と言えるわけですが、一方で金融緩和発表直後には0.3%台まで低下したことを考えると記者も含め、「あれ、何で上昇するんだっけ?」と違和感を感じる方の方が多そうです。
実際、3月は平均すれば長期金利は0.60%前後で推移したと思いますので、もう一段、長期金利が上昇するようであれば、5月の住宅ローン金利は、「4月よりも高い」という可能性もゼロではありませんね。
ではなぜ「バズーカ砲」とも称される、この量的質的金融緩和後に金利が上昇しているのでしょうか?
別の報道によれば某証券会社の方のコメントとして「日銀による国債の買い入れがあまりに巨額なため、投資家はその影響がどの程度のものか判断できず、適切な価格水準を見定められなくなっています。この1〜2か月くらいはこうした状況が続くのではないでしょうか」と紹介されています。
この見立てが正しいかどうかは分かりませんが、今回の量的質的金融緩和の影響が大きすぎて、金融市場への「余震」が続いているのは間違いなさそうです。
加えて金融市場では、「期待」の段階で最も相場が動きやすく、それが「事実」となると、「材料出尽くし」として、いかにポジティブな内容であっても一旦は下落することがよくあります。今回もそうした、金融相場特有の動きを感じるのは記者だけではないと思います。
仮に本当に1〜2ヶ月、こうした変動が続くようであれば、場合によっては上記の通り、5月の住宅ローン金利はむしろ今月より上昇する可能性は十分あります。ご留意ください。
とは言いつつ。
そうなったとしても、やはりそれは短期的な動きだと思います。上記の通り、今までの日本の金融緩和の歴史の中で、唯一と言ってもいい成果が金利の低下でしたから、今回もさらなる金利の低下については相応に期待していいのではないかと思います。
インフレ期待を盛り上げようとしている安倍総理や黒田総裁には申し訳ないのですが。
とすると住宅ローン金利も短期的にはむしろ上昇する局面があったとしても、数ヶ月〜1年という期間で見ればさらに下落する可能性が高そうです。焦らず慌てず、このチャンスをじっくりしっかりご活用いただければと思います。
ただし。
忘れてはいけないのは、そもそも今の住宅ローン金利は十分低いという点ですね。
仮に長期金利が0.6%から0.3%に下がったとしても、今の住宅ローン金利が半分になるわけではありません。実際、長期金利が低下していたにも関わらず4月の住宅ローン金利は3月と比べてほとんど変化はなかったですしね。
何が言いたいかと言うと、中期的に見れば住宅ローン金利はもう少し下がる可能性はあるものの、とは言えもう金利の低下余地はかなり小さくなっており、あまり金利低下期待を高めすぎない方がいいのではないか、ということです。
長期的に見れば住宅ローン金利が「底値」にあるのは間違いなく、さらにもう少し金利が低下するのを待ちすぎて、住宅ローンの借り入れや借り換え機会を逃すくらいなら、どこかでエイっと決断することも重要な気がしますね。
新規借り入れの場合であれば、タイミングよく素敵な物件に出会えるかどうかは分かりませんし、借り換えの場合であれば、0.1%の金利の低下のために、今の金利水準よりたとえば1%以上高い金利を払い続けるとすると本末転倒です。
リョウテキシツテキ金融緩和によって、住宅ローン金利がさらに低下する可能性についてはYesだと思いますが、「大きく」低下する可能性はNoだと思う、ということですね。読者のみなさんの相場観はいかがでしょう?
参考にしていただければ幸いです。