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<編集部からのコメント>
ここ最近、繰り返しご案内しているように、4月、5月と段階的に長期金利が急上昇し、それに伴い住宅ローン金利も上昇中です。長期金利の最近の推移はこのようになっています。
日銀が、国債買入の方法を柔軟にすると発表したり、株価が連日大きく低下するなど、金利の低下要因は少なくないのですが、長期金利は足元では相変わらず0.8%台を維持し、確かに上昇はしていないものの、下落もせず、「小康状態」と言えます。
ここから上昇するのか、それとも下落に転ずるのか予断を許しません。上記要因に加え、そもそも「異次元の金融緩和」が表明されている中で、金利が上昇してしまうこと自体、理解に苦しむわけですが、住宅ローンを検討されている方や、借り換えを予定されている方にとっては、落ち着かない状況ですね。
市場金利の混乱が沈静化し、長期金利も、住宅ローン金利も低下していくことを期待したいと思います。
さてそうした住宅ローン金利の上昇を背景に連日報道されているのが、住宅ローン金利タイプの人気の変化ですね。具体的には今まで磐石の人気だった変動金利タイプから、固定金利タイプへ人気がシフトしている、とのことです。
今後、金利が本格的に上昇していく、ということであれば、確かに「金利が低い間に固定金利タイプで金利を固定してしまおう」と思うのは自然なことなのかもしれません。
では実際にそうした金利タイプのシェアがどのように変遷しているかと言うと、上記記事でも紹介されているように、住宅金融支援機構が発表した「住宅ローン利用者の実態調査」によると、4月の住宅ローン変動金利タイプ利用者のシェアは、3月に比べて3.4%減の45.7%だった、ということですね。
それ以外の金利タイプのシェアもまとめるとこういうことのようです。
・変動金利タイプ : 45.7%(−3.4%)
・当初固定金利タイプ : 30.4%(+2.6%)
・全期間固定金利タイプ : 23.9%(+0.8%)
いかがでしょうか?
確かに変動金利タイプのシェアが落ち、その分、固定金利タイプのシェアが増えているのですが、その変動幅は全体の3%ちょっとですね。つまり、これだけ金利上昇が騒がれても、ほとんどシェアは変わらなかった、と全く逆の見方をすることもできそうですね。
そして、多少シェアを落としたとは言え、引き続き半分近くの人が変動金利タイプを選んでいるわけで、「それでも変動金利タイプが一番人気」とも言えます。
ここで住宅金融支援機構の発表データから、シェアの推移をチェックするとこのようになっています。
確かに、変動金利タイプが支持を集めているのは間違いありませんが、一方で、株価が上昇しアベノミクスという言葉が認知され始めた1月くらいから変動金利タイプのシェアが徐々に低下してきている、ということですね。
将来の金利を正確に予測できない以上、どの金利タイプがベターか、もしくはベストか、というのは一概には言えませんし、仮に全期間固定金利タイプを選び、相対的に割高な金利を払ったとしても「金利上昇を心配しなくていいので安心」と思えることに価値があるのであれば、それも心理的なメリットと言えます。
つまりは経済合理性だけでは選べないところが面倒なところかもしれませんが、これから住宅ローンの金利タイプを選ぼうとする方にいくつか選択のポイントを挙げるとすれば、まず最大の分かれ道は「インフレ経済が実現するかどうか」です。
インフレとは、モノの値段や金利、株価、土地の値段が上がる状態で、つまりは「お金の価値が下がり続ける状態」ですが、株価や金利が90年代からずっと低迷してきているように、かれこれ20年以上、インフレの反対の「デフレ」の状態が続いています。
安倍政権や黒田日銀は景気浮揚のために、デフレからインフレ経済への構造転換を目指しているわけですが、ではなぜ、このインフレ転換が住宅ローンの金利タイプ選びのカギになるかと言うと、
「インフレになるまで、日銀のゼロ金利政策は継続され、ゼロ金利政策が続いている間は短期金利はほぼ0%となり、短期金利がほぼ0%となっている間は、それにリンクする住宅ローン変動金利タイプも超・低金利が維持されるから」
ということです。
何だか「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな話に聞こえるかもしれませんが、こちらのメカニズムはもっとダイレクトにつながっていますので、短縮すれば「インフレになるまでは住宅ローン変動金利タイプは金利上昇しない」ということになります。
実際のところ、確かに長期金利=10年金利はここのところ急上昇していますが、1年ものの市場金利はといえばこのようになっています。
4月にチョコっと金利が上がりましたが、絶対水準としては0.25%と昨年の水準よりはるかに低い、超・低金利を維持していますね。ほぼ全くの無風状態です。
つまり「金利が上昇した」「住宅ローン金利が上がった」と言っても、それはあくまで10年や20年と言った長期間の金利の話であって、それより期間の短い金利についてはゼロ金利政策により引き続き低く抑えられているわけですね。
その証拠に今月の住宅ローン金利も、主要銀行の変動金利タイプの金利はほぼ据え置きとなりました。10年ものや20年ものの金利が大幅に上昇したにも関わらず、です。
>>>今月の住宅ローン金利
ちなみに・・・結果的に、変動金利タイプと固定金利タイプとの「金利差」が拡大しているわけですが、となると、その「金利差」から、再度、変動金利タイプの人気やシェアが高まってきそうな気がするのですがいかがでしょう?それを占う、この住宅金融支援機構の調査が今年度から隔月となってしまったのは残念な限りです・・・業績が厳しいのでしょうか?
少し話が逸れましたが、そんなわけで、仮に「日本でインフレなんて起きっこない」と強く確信するのであれば、金利上昇に焦って動揺する、他の住宅ローンユーザーを尻目に悠々と変動金利タイプを継続していく、というのも選択肢の1つだと思います。
記者もどちらかといえば、少子高齢化という構造的な問題を抱える日本では、インフレ経済が実現する可能性については極めて懐疑的であります・・・。
とは言いつつ、「何が起こるか分からない」のが世の常であり、特に金融市場についてはそれが当てはまります。ご自分の金利観に拘泥せず、最低限の金利上昇リスクをヘッジしておこうとするのも、ある意味、「大人の対応」として理解できます。
そうした時に選択肢に上がってくるのが、期間5年や10年などの「当初固定金利タイプ」ですね。これらは固定金利タイプとは言え、金利固定期間が相対的に短いことから、金利がそこまで高くないところが魅力です。
また、当然のことながら金利は景気に連動しますので、景気回復期には上昇し、景気後退期には低下します。では今の「アベノミクス期待」が火をつけた景気回復局面がいつまで続くかといえば・・・もちろん正確には誰にも分かりませんが、一般的な認識としては2年から5年と言ったところではないですかね?
歴史的に見れば、世界的に景気回復局面の賞味期限は「平均4年程度」と言われています。だとすると期間5年や10年の当初固定金利は、今回の金利上昇傾向をやり過ごすにはちょうど良い期間と言えるのかもしれません。つまり当初固定期間が終了する頃には、また景気が落ち着き、金利が低下していることを期待できるかもしれない、ということですね。
実際、上記調査結果に戻ると、「固定金利タイプのシェアが増加している」とはいっても、「全期間固定金利タイプ」のシェア増加はわずかで、相対的にこの当初固定金利タイプの人気が高まっていることが分かります。その人気の背景にはそうした利用者の金利観が影響しているのかもしれませんね。
参考になさってください。
ちなみに記者は、事ある毎にご案内しておりますが、金利上昇のリスクヘッジとしては「ミックス金利」をオススメしたいと思います。たとえば住宅ローン借入額の半分を変動金利、半分を当初固定金利で借りる、というやり方ですね。
これであれば、変動金利タイプの低金利メリットも、固定金利タイプの安心感も、半分ずつ得られることになります。
もしかすると経済的な効果よりも、「どちらに転んでも得する」感による、心理的な効果の方が大きいかもしれませんね(笑)。こちらも参考になさってください。