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<編集部からのコメント>
話題としては完全に1週間遅れとなってしまいましたが、2020年夏季オリンピックの東京招致が成功しましたね!すばらしい。
事前のメディアによる記者会見などを見ると、東京の開催案そのものより、福島の汚染水問題に質問が集中していましたので、これがIOC委員の心境にも重なるとすれば、正直厳しいだろうな、というのが記者の印象でした。
と言う事で期待値を大きく下げていたわけですが、蓋を開けてみれば圧勝の結果で正直嬉しいというよりも驚きました。いやもう皇室・総理から、スポーツ界・財界のスタッフまで、関係者のご尽力には頭が下がるのみです。
勝因はもちろん、最終プレゼンではなく、各IOC委員に対する「表裏一体」となった切り崩し工作なのでしょうね。記者のような「甘ちゃん」には、そうしたハードな交渉術・ロビー活動と言ったものがどういうものなのかは全く分かりませんが、日本にもそうした力があったのですねぇ。その点ではやはり「チームジャパンの勝利」という表現は適切なのではないかと思います。関係者のみなさま、ひとまずはお疲れ様でした。
さて、冒頭ご案内したように完全に周回遅れとなってしまった今回のコラムですが、その理由はといえば、ぶっちゃっけオリンピックの経済効果は極めて小さく(もちろんオリンピックの感動を矮小化しているわけではありません。あくまで経済的には、という意味です。)、住宅ローンや住宅ローン金利への影響は皆無であり、当サイトで取り上げるような話題ではないと考えていたからですね。
ところが先日、何気なくネット検索していると、「オリンピック 住宅ローン」といったキーワードが散見され、意外に世間ではオリンピックと住宅ローンとを結び付けている人が多いのかな?と思いなおし、あらためて筆を取った次第です。
まず押さえておくべきなのは、この2020年東京オリンピックの投資額と、試算されている経済波及効果がいくらとされているか、ということですね。これについては東京都が2012年6月に公式発表しておりまして以下の通りです。
・投資額
施設整備費 : 3,557億円
大会運営費 : 2,951億円
その他 : 5,731億円
合計 : 1兆2,239億円
・経済波及効果
生産誘発額 : 2兆9,609億円
付加価値誘発額 : 1兆4,210億円
雇用者所得誘発額 : 7,553億円
合計 : 5兆1,372億円
これを単純合算していいものなのかどうかは分かりませんし、むしろ投資に伴う付加価値は後段の経済波及効果に含まれているとも思いますが、とりあえず景気よく(?)合算してしまうと、全体では6兆円を超える影響・効果のあるイベント、ということになります。
この金額を「あぁ、少ないね」と考える人はいないとは思いますし、実際には経済的にも世界最大級のイベントであるのは間違いありませんが、しかしながら日本の現在のGDPは480兆円もありますからね。いくら6兆円でも「1%ちょっと」という規模です。
さらにこれらの経済効果は2013年から2020年まで7年間かけて生み出されるもので、1年当たりで考えれば1兆円を切ってきます。仮に年1兆円としても全体のGDPからすればわずか0.2%です。
もう完全に誤差の範囲内というレベルですね。
ちなみに震災復興費用として約19兆円が支出されていますが、ではこの復興費用で景気が良くなったり、金利が上昇しているかといえば全くそんなことはありません。
19兆円でもそうなのですから、7年/6兆円ではいわんをや、というところですね。
加えて、日本では基本的には交通網などのインフラは出来上がっていますね。「五輪を機会に新しいインフラが完成し、経済が大きく成長する」というシナリオは想定しにくいといえます。もしかすると、線路は一本も、新駅は一つも増えないのではないですかね?
そんなわけで、世界的なイベントとしてのオリンピックの感動はともかくとして、経済的な効果は想像以上に少なく、結果として、住宅ローンや住宅ローン金利にほとんど影響しない、というのが記者の理解であります。
その証拠として、2012年に実施された、同じ先進国であるイギリス/ロンドンオリンピック開催時のイギリスの長期金利をチェックするとこうなっています。
2008年からの5年間のグラフですが、オリンピックが開催された2012年7月から8月にかけての金利が最も低いという、なんとも皮肉な結果ですね!
ちなみにロンドンオリンピックの投資額は当初予算の4倍となった、という記事を見た記憶がありますが、それでも国全体の景気や金利を押し上げる効果は全くなかったということですね。
2011年から2012年というのはヨーロッパの債務危機が騒がれていた時期であり、経済を下支えするために、金融緩和策によって金利が下げられていたのか(内部要因)、あるいは主に南欧の債務危機国から投資マネーが英国債に流れ込んでいたのか(外部要因)、その理由は分かりませんが、いずれにせよ、当たり前といえば当たり前ですが、そうした経済要因の方がはるかに直接的に金利に影響する、ということです。
そう考えればやはり、2020年の東京オリンピックによって住宅ローン金利が上昇する、といった可能性は極めて低いと思います。
むしろ経済循環から考えれば、世界的に2009年から始まった今回の景気回復局面が2020年まで10年以上続く、ということはちょっと考えづらいですね。
景気の平均周期は約4年といわれており、100歩譲って今回はその倍の8年続くと考えても2017年には景気後退となる計算となります。
となると、2020年は景気後退期の真っ只中で、当然、景気と金利は連動しますので、むしろ金利は最低値を更新している頃合である可能性もゼロではありません。
そんなわけで「2020年の東京オリンピックまで景気は回復し、それに伴い金利も上昇していく」という夢のようなシナリオはまさに白昼夢となりそうです。
参考になさってください。
ちなみに上記記事で取り上げられている、大和証券が試算した経済効果は150兆円ということですが、これはもう失礼ながら、完全に寝ぼけてらっしゃるとしか思えません。
「1,000歩」譲ってこの通りだとしても、7年間で150兆円ということは1年あたり21兆円であり、やはりGDP=480兆円からすれば、効果としては限定的です。復興予算と同じ規模ですね。
加えて、本当にそこまで「オリンピックバブル」が起きるとすると、オリンピック終了後の反動が怖いですね。そして皮肉にもそうした反動は、景気悪化を通じて基本的には金利低下へとつながっていきます。
というわけで繰り返しになりますが、2020年の東京でのオリンピック開催が、住宅ローンに影響を与え、直接的に住宅ローン金利を上昇させる可能性はほぼゼロだと思います。
それ以外の経済要因・金融要因・政策要因の方が、はるかに住宅ローン金利に影響するということですね。
2020年の住宅ローン金利は果たしてどうなっているのでしょうか?