※当サイトには広告リンクが含まれています。
<編集部からのコメント>
最近の住宅に関するニュースの中でも驚きだったのが、不動産経済研究所が発表した2014年8月度の首都圏と近畿圏のマンション市場動向です。結論から言えば8月の首都圏のマンション新規発売戸数は2,110戸で、1年前の2013年8月と比較すれば何と49.1%減。つまり半減してしまっているのですね!
報道ではこの点が主に強調されているような気がしましたが、ただよく考えてみれば1年前は増税前の駆け込み需要が起きていて(新築マンションの駆け込み需要は特別措置を考慮すると実質的に2013年9月がデッドラインでした)、そこと比べれば何割か減少するのは当然ですね。
気になったのはむしろ前月=2014年7月との比較で、こちらは何と50.0%減と前年同月比よりさらに減少幅が増えていることになります。
しかしこちらも100歩譲ればあくまで「発売」戸数、つまり売り手側の販売戦略によって増減するものです。単にボーナスシーズンである7月には多めに売りに出し、8月はお盆や天候不順もあって「お休みモード」という供給サイドの事情に基づくもので、消費者のニーズを正確に反映したものではないのかもしれません。
ではより直接的に買い手側=消費者サイドの需要動向を示すものは何かと言うと・・・契約率ですね。つまり新しく販売された戸数の何%が契約に至ったかを示す数値ですが、8月の首都圏の新築マンションの契約率は69.6%ということでした!
・・・と言われてもピンと来られないかもしれませんが、こちらの値は、好不調の目安が70%といわれておりまして、今回70%を切ったということは・・・不動産市場の現状や先行きに「黄色信号が灯った」ということですね。前月=7月の契約率は83.7%でしたので、よりその下落振りが際立ちます(逆に今回の下落は一時的だ、という見方もできるかもしれませんが)。
ちなみに8月の近畿圏はどうだったかと言うと、新規発売戸数は前年同月比で39.0%減、前月比で39.6%減と不冴えですね。
一方、気になる契約率は71.7%と70%をクリアしたものの、前月と比較すれば5.4%ダウンしており、苦戦した様子が伺えます。
この新築マンションの契約率の推移はこのようになっています。
安部政権によるインフレや金利上昇、増税が意識されはじめた2013年から首都圏の契約率は75%〜80%と高水準を維持しており、今年4月の増税後も好調に推移してきたことが分かります。
特に堅調だったのが前月=今年7月だったわけで、83.7%とこの3年の中では最高値になっています。だとすればこの8月の数値は「その反動」であり、やはり一時的と言えるのかもしれませんが、一方で70%を割り込んだのはこの3年の中でこれまで3回しかないわけで・・・気になる下落であるのは間違いありません。
今後この契約率がどうなるのか注目ですね。
ということで住宅市場の今後の先行きについては、折りしも地価や建設費が上昇傾向にあることもあり、懸念材料が少なくないわけですが、ではこれから住宅ローンを利用しようとしている方の意識はどうなっているかと言うと、住宅の「買い時感」を調査した結果を住宅金融支援機構が発表しています。具体的にはこういうことですね。
何と・・・「今後1年は買い時」だと思う方が前回調査から大きく増加しているのですね!34.0%から42.2%へ一気に10%近く上昇していることが分かります。
一方、買い時だと思わない方は15.7%と、こちらも7%近く減少していることが分かります。つまり、この結果だけを見れば、消費者は増税の心理的な影響を乗り越えて、積極姿勢に回帰していることになりますね。
こちらは6月に実施した調査ですので多少のタイムラグがあるものの、2つの調査結果は消費者が住宅購入に対して強気なのか弱気なのか示唆している内容が矛盾しており、どちらが正しいのか気になるところです。
ただ別の調査でも住宅の買い時感は回復しつつあるという結果になっていたと思いますので、今のところ2対1で「住宅購入に強気になりつつある」というのが優勢ということにしておきましょうかね?サンプル数が少なくてすみません・・・。
>>>住宅の買い時感が1年3ヶ月ぶりに上昇って本当!?
ちなみに今回の住宅金融支援機構の調査では、「買い時だと思う理由」についても調査しておりましてこうなっています。
「住宅ローン金利が低水準だから」というのが圧倒的な後押し材料となっているわけですね。もしこれが一般的な傾向と言えるのであれば、住宅ローン金利が史上最低水準にある間は、よほどの経済危機が起こらない限り、住宅市場が大崩れする可能性は少ないのかもしれません。
逆に日本経済が十分回復し、インフレ経済が定着し、長らく続いてきた金融緩和政策がいよいよ終了することとなれば市場金利も住宅ローン金利も浮上を始めることになります。住宅市場の「本当の試練」はその時かもしれませんね。
もちろん少子高齢化が進む日本ではインフレ経済が定着することも、金融緩和政策が終了することも、永遠にないケースも想定されるわけですが・・・。
参考になさってください。