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<解説・異論・反論>
言わずもがなですがこの数年の間に市場金利も住宅ローン金利も大きく低下しています。いつもご案内している2000年からの長期金利の推移はこのようになっており、特に2006年以降は基本的には金利はずっと低下してきたことが分かります。つまりほぼ10年の間、金利はずっと低下し続けてきたわけですね!
もちろん折々で多少金利が上昇する局面はあったものの、全体的には低下傾向を維持してきたということですね。
その要因として大きいのはもちろん金融緩和です。金融緩和と言えば2013年に発動された「異次元緩和」が有名ですが、実際のところバブル崩壊以降ずっと拡大を続けており、それがこの長期にわたる低金利を実現させています。
住宅ローンの平均返済期間は約14年という話がありますが、それが正しければほとんどの方がまともな金利上昇を体験しないまま、つまり金利上昇リスクがゼロのまま完済を迎えつつあるということになります。
ということは・・・結果的には少なくともこの15年の間、あるいはバブル崩壊後の25年の間は住宅ローンの金利タイプで言うと「変動金利タイプを選んだ人が勝ち」だったということですね。
もちろん、あくまで結果論にしかすぎませんし、固定金利タイプを選んだ方は割高な金利の代わりに「金利が変わらないという安心」を得られたわけで、単純に勝ち負けを決められるものではないものの、日本ではそれくらい「金利上昇リスクがない」ということは間違いありません。とすると、やはり住宅ローン金利に関して、「まずは変動金利で様子を見よう」という方が多いのは納得できます。
本当に金利が上昇してくれば固定金利に変更することもできますしね。
特に上記の通り「異次元緩和」が実施されてからは金利が大きく下がり、上記グラフを見てもお分かりになるとおり市場金利も住宅ローン金利も「史上最低水準を更新中」という状況です。なおさら変動金利タイプに人気が集まりそうですね。
実際のところ先日のコラムでもご案内したように、最新の業態別住宅ローン貸し出しシェアはこのようになっています。
主要な業態に絞ると2014年度上半期は前年同期比でこうなっています。
・国内銀行 : 3兆7,163億円 → 3兆5,174億円 (−5.4%)
・信用金庫 : 4,798億円 → 4,591億円 (−4.3%)
・労働金庫 : 4,094億円 → 3,187億円 (−22.1%)
・住宅金融支援機構 : 4,406億円 → 3,456億円 (−19.5%)
全体的に消費税増税の影響で伸び悩んでいる状態ではあるものの、特に大きくシェアを落としているのが労働金庫と住宅金融支援機構です。労働金庫は固定金利タイプのシェアが高いほか、住宅金融支援機構は100%、全期間固定金利ですからね。やはりここからも、深化する低金利を背景に、住宅ローン利用者の「変動金利選好姿勢」が浮かび上がってきます。
前置きが長くなってしまいましたが、こうした状況を踏まえればアンケート調査でも「変動金利優位」の傾向が浮かび上がってくることが容易に予想されるわけですが、では住宅金融支援機構が発表した2014年11月・12月期の調査結果はと言うとこのようになっています。
前回調査=2014年9月・10月と比較するとこのように変化していることになります。
・変動金利タイプ : 47.8% → 41.6%
・当初固定金利タイプ : 26.6% → 30.1%
・全期間固定金利タイプ : 25.6% → 28.3%
何と変動金利タイプが減少して、固定金利タイプのシェアが増加しているという結果になっているのですね!さすがに無理がある、説得力のない調査結果ですね・・・。
ちなみに以前もご案内しましたが、一般社団法人住宅生産体連合会が発表した「戸建注文住宅の顧客実態調査結果」では、住宅ローン金利タイプ別構成比についてこう発表しています。
また、不動産流通経営協会が住宅を買った世帯を対象に毎年実施している動向調査ではこのような結果でした。
つまり多くの調査が大体、 このような割合を明示しているということです。
・変動金利タイプ : 60%
・当初固定金利タイプ : 25%
・全期間固定金利タイプ : 15%
こうした傾向は他の調査でも同様ですし、記者の感覚とも合います。加えて上記の通り貸し出し実績を見れば全期間固定金利タイプの苦戦は明らかであり、なおさらこうした「固定金利の人気が盛り返しつつある」という調査結果を信じろという方が難しいですねぇ。
もちろん調査結果に手心を加えているとは思いませんが、481件というサンプリングの仕方に何か問題点が隠れているのかもしれません。つまりは毎回同じ人が回答している等ですね。
ちなみに今回の金利タイプシェアはちょうど2013年7月−10月期の調査結果と似通っていることが分かります。
ではこの時期の住宅金融支援機構=フラット35の市場シェアをチェックしてみると、ちょうど上記の業態別住宅ローン貸し出しシェアに記載がありますね。つまり2013年7月−9月期と、2014年7月−9月期とではこのように推移しているということです。
・住宅金融支援機構の貸出シェア : 8.5% → 7.4%
順調にシェアを落としているのは上述の通りですが、では再度アンケート結果に目を向けると、同じ時期に全期間固定金利のシェアはこのように推移しています。
・全期間固定金利のシェア(アンケート結果) : 25.3% → 26.7%
むしろ上昇しているのですね!当然、前者の数字はまず間違いない正確なもので、後者はサンプル数が1000人以下のアンケート調査結果ですから、どちらがアヤシイかと言えば・・・やはりこの住宅金融支援機構のアンケート調査はかなり「眉唾もの」ということですね。
残念ながら金利タイプの調査としてはこの住宅金融支援機構が実施しているものが一番有名ではありますが、故意かたまたまかは別にしてかなり実態とかい離している面がありますので、ミスリードされないよう、十分ご注意ください。
一方、気になるとすれば、その金利低下が続いていた住宅ローン金利がこの3月に久しぶりに上昇した点ですね。こうした金利の変化が住宅ローン利用者の金利観にどう影響するのか注目したいと思います。
長期金利を見る限り、すでに金利は低下傾向にありますので、4月以降は再度住宅ローン金利は低下していくものと思いますが・・・。
参考になさってください。