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<解説・異論・反論>
5月の首都圏のマンション供給は前年同月比で18.7%減ということですね。あくまで供給の問題ですのでこれが即ち需要が減退していることを示すものではないものの、1年前は増税直後でかなり落ち込んでいたを考えるとそこから約2割も減少したというのはかなり気になる状況です。
もちろん大型物件が供給されるかどうかでもかなり変わってくるでしょうし、そうしたブレを加味すると毎月の数字よりも3ヶ月ごとの数字や半年ごとの数字の方がより信頼性があるのだとは思いますが、
ただこうした「減少」という報道を耳にすると住宅市場を取り巻くより本質的な懸念が沸き起こってきます。
つまり、スローダウンしている住宅市場が再度、数量的に盛り上がることはもうないのではないか、という疑念ですね。ここ数年の住宅市場の動向を振り返ってみるとこのようになっています。
こちらは新設住宅着工件数の推移ですが、年度計で見ると2007年までのミニバブル当時は120万〜130万戸前後で推移していたのに対してリーマンショック以降は80万〜90万戸に留まっています。駆け込み需要があった2013年4月〜2014年3月期=2013年度でも99万戸に留まり100万戸に届いていません。
この状況は90年代のバブル崩壊後の「失われた10年」を彷彿とさせます。当時、なかなか回復しない地価や株価に対して「そのうち回復する」という甘い見通しを持っていた人は少なくないと思いますが、結局、その後今に至るまで地価も株価もバブル時の価格まで回復していません。
その大きな要因の1つは少子高齢化という社会構造の変化ですね。バブル崩壊の影で「団塊の世代」とその子供たちである「団塊ジュニア」という二大市場の加齢が着実に進み直接的な消費が減る一方、そこから下の世代の人口はどんどん減っていくわけですから、全体の消費が増えるわけがありません。
さらに最近では人口そのものが減り始めていますからね。大規模な移民受け入れでもしない限り、今の人口を維持するのは不可能です。個人的には無理して人口を維持する必要はないのではないかと思わないでもないですが・・・。
それはともかくとして、そうした少子高齢化の波がいよいよ住宅市場にもやってくるとすれば、住宅需要は着実に減少していくことになります。実際のところこれまで住宅市場をけん引してきた団塊ジュニアももう40代ですからね。遅かれ早かれ住宅市場から卒業していくのは確実です。
住宅市場の縮小は住宅関連産業の方々はともかくとして、消費者からすれば良い面も悪い面もあり悲観的になる必要はありませんが、将来的に売却を検討したり、賃貸併用住宅の建設・購入を考えておられる方は注意した方がいいのでしょうね。若年層が減り、高齢層が増えるとすれば、住宅に対するニーズも郊外の戸建てから都心のマンションに移っていくでしょうし、ワンルームなどの若年層をターゲットにしたニーズも減っていくことになります。
住宅の損得は20年や30年といった長い期間で考えないといけませんからね。今後の人口動態の変化の影響を十分考慮していただければと思います。
ではそうした変化は住宅ローン利用者の中ではどのように表れているのでしょうか?その実態を浮き彫りにするデータを住宅金融支援機構が発表しています。住宅ローン・フラット35利用者の平均年齢の推移はこのようになっているということですね。
2006年当時のフラット35住宅ローンの利用者の平均年齢が37歳前後なのに対して、直近の2014年は40.4歳まで上昇しています。平均年齢が40歳を超えているのですね!やはりベースとしての少子高齢化というのは住宅ローン業界においても着実に進行していることになります。
となると今後は住宅ローン市場の主軸は新規借り入れから借り換えに移っていく、ということでしょうね。借り換えは完全なゼロサムゲームですから、金融機関同士の競争はより血みどろになっていくことになります・・・各行のご武運をお祈りしたいと思います。
ただ一方で無視できないのがその平均年齢のカーブで、完全な右肩上がりというわけではなく、リーマンショック直後の2009年から2010年にかけて有意に低下しています。これはどういうことなのでしょうね?
正解を持ち合わせているわけではありませんが、仮に
・景気がよくなると住宅ローン利用者の平均年齢が上がり、景気が悪くなると住宅ローン利用者の平均年齢が下がる
という法則があるのだとすれば面白いですね。たとえば景気が良くなると投資用不動産の需要が高まり、そうした住宅に対するローンが増えるのだとすれば平均年齢が高まるのも納得できます。もちろんフラット35は投資用不動産に使えませんが、ただ居住用不動産を投資用不動産に切り替えるのは簡単ですからね。間接的に住宅ローン需要が広がる可能性は十分あります。
仮説に仮説を重ねておりますので信憑性は全く保証できませんが・・・。
そのように考えると足元の平均年齢の上昇も同じようなメカニズムが働いている可能性があるものの、しかしこの9年間で初めて平均年齢が40歳を超えている点を踏まえればやはりベースとして少子高齢化が進んでいるのは間違いないと思います。
だからと言って住宅ローン利用者に何か直接的な影響が出てくるものではないと思いますが、間違いなく言えることは40歳代の借り入れであっても特に臆することなく堂々と申し込めばよいということですね。実際のところ上記表の通りフラット35利用者はこのような年齢分布となっています。
・30歳未満 : 12.1%
・30歳代 : 44.3%
・40歳代 : 24.9%
・50歳代 : 10.8%
・60歳代 : 7.9%
40代どころか、50代以上の方も約2割いらっしゃるわけですからね!これからは「借りたい時が住宅ローン適齢期」となってくるのでしょうか。ライフステージで言うと子供が独立し始める50代以上になってから夫婦2人のための「終の棲家」を購入するというのは意外と合理的なのかもしれませんけれど。それほど広い家も必要ないでしょうし。
ただそれでも退職目途である60歳や65歳で完済する保守的な資金計画に基づいて利用することが重要なのは言うまでもありません。参考になさってください。