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<解説・異論・反論>
マイナス金利はと言えば、ヨーロッパなどで債務問題などを背景に、スイスやドイツなどの財政が健全な国の債券の値上がり=金利の低下が続き、ついに「満期を迎えると元本が減ってしまう」状態を指します。たとえば101万円で買った債券が満期を迎えると100万円になってしまうイメージですね。
そんな債券、誰も買わないような気がしますが、実際には購入する人がいるからこそ値上がりするわけで、運営上一定割合保有しておかないといけない場合もあれば、「1万円の損」より「100万円の安全」を重視するケースなどもあるのかもしれません。
そのように信用不安の高まりから、資金の逃避先である投資対象に発生するマイナス金利、というのが一般的な理解なのではないかと思いますが、それ以外のマイナス金利としては「預金を預けさせないようにする」という意図的なものもあります。
これまたヨーロッパの事例ですが、民間銀行に対して、中央銀行に資金を眠らせるのではなく、貸出や投資に資金を振り向けさせるために、中央銀行の民間銀行向け預金金利をマイナスにする場合というのがあります。
また大手銀行が「これ以上、預金が集まっても困る」という意思表示として、大口預金者に対して手数料を取ったり、金利をマイナスにするケースも出てきていますね。
いずれも根っこにはヨーロッパの債務問題と、それに伴う金利の低下が背景にあるわけですが、結果的には金融市場に異次元の事態が起こっているということですね。
翻って上記記事では「マイナス金利って何?低金利時代の住宅ローン返済方法」として、こうした「マイナス金利」を背景にしたアカデミックなアドバイスが予想されたわけですが、実際にはこの場合のマイナス金利とは「住宅ローンで払う利息額より住宅ローン控除額のほうが大きく、実質マイナス金利のような恩恵を受けられることを意味するのだ」とのことですね。
うーん、そうした言い回しを聞いたことはないですし、そもそも全く違うものを同じ言葉でくくるのもどうかと思いますねぇ。
そうしたわけでこのタイトルには抵抗があるものの、最近、関心が薄れているかもしれない住宅ローン減税について久しぶりに考えてみたいと思います。そもそもの住宅ローン減税の枠組みとはこういうことですね。
1.対象となる住宅ローン
期間10年以上で以下目的の住宅ローンの年末残高
・住宅の新築、取得
・住宅の取得とともにする敷地の取得
・一定の増改築等
2.対象となる住宅
居住目的で以下条件を満たす住宅
・床面積50平方メートル以上
・中古住宅の場合は、築後20年以内(耐火建築物は25年以内)、または耐震基準適合住宅
3.対象となる年収
・3,000万円以下
4.減税メリット
・2014年4月〜2019年6月居住分まで : 年末残高の1%(上限40万円)×10年=最大400万円
住宅ローン残高の1%が減税されるということは、これをメリットとすると、住宅ローン金利が1%未満の場合は金利より減税メリットの方が大きい、つまり住宅ローンを借りて「おつりがくる状態」となります。それをとらえて上記記事では「マイナス金利」と表現しているわけですね。
「取らぬ狸」ではありますが、このような試算も案内されています(変動金利0.57%の場合)。
もちろんこれはあくまで「減税」ですのでそれ以上の税金を払っていないと最大限のメリットは得られず、中低所得層では使い残すケースも結構あるようですが、それでもメリットはメリットですので利用しない手はありません。
となるとポイントとなってくるのは「2019年6月居住分まで」とされる入居時期ですね。「まだ4年近く先の話ではないか」と思われるかもしれませんが、人気が高まりつつある新築マンションの場合、契約から入居まで2年以上かかるようなケースもざらですね。注文住宅の場合も然りです。
つまりは現行の住宅ローン減税を利用しようと思うと実質的なデッドラインはその2年前の2017年6月等になる可能性があるということです。
で、2017年と言えば・・・10%への消費税増税が待ち構えているのですね。増税に関しては上記入居までに時間がかかる新築マンションや注文住宅などの場合、その半年前にデッドラインが設けられるのが前例となっています。とすると増税も加味した実質的なデッドラインは2016年9月末と考える方も多そうです。
2016年9月といえば今から約1年後ということで・・・それほど多くの時間が残されているわけではありませんね。それまでに契約しようと思うと、恐らくすでに計画されているものの中から選ぶ、ということになるのではないでしょうか。だとすると実は未来の話ではなく、極めて現実的な話になってくるということですね。
「増税前に現在の住宅ローン減税を活用して住宅を購入したい」という方は早め早めに検討を進められることをおススメします。
ただし。
焦って検討を進める必要は全くないと思います。その理由は大きく3つですが、1つ目はこの住宅ローン減税はさらに拡充される可能性が高いということですね。
日本経済にとっても、政策運営上も、増税後に住宅投資が一気に落ち込むことは望ましくありません。とすると増税に見合うだけの「増税緩和策」が投下される可能性が高いということです。
実際、8%増税時にはこの住宅ローン減税の拡充と住まい給付金の創設により、「5%の時より8%の時の方がお得」という驚きの状態が起こりましたからね。同じような手厚い追加対策は期待できそうです。
2つ目は増税にせよ住宅ローン減税にせよ、全体の数%という話ですが、不動産価格はもっと大きい割合で増減する可能性があるということです。都心部なら不動産価格は過熱傾向にある一方で、郊外なら下落していてもおかしくありません。つまり税金の数%の差など軽く吹っ飛ばす価格変動が起こりえるということですね。
その点では増税・減税だけに目を奪われるのではなく、総合的に住宅購入のタイミングを探る必要があるということです。
最後の3つ目としては、いつもご案内しているように住宅に対する精神的な満足度が最も大切であるということですね。要は「一生住みたいと思えるかどうか」ということです。
仮に気に入らなくてどこかで住み替えや建て替えなどをしてしまうと、そうした価格差や税金の差が「誤差」と思えるくらいの追加支出が発生することになります。となるとそのような魅力的な住宅に出会えることが大前提であり、締切を設けて選んでいく類のものではないということですね。
もちろん、こうした住宅ローン減税や消費税増税が住宅購入を決定する際の「重要なファクター」であるのは間違いありませんが、「最重要なファクター」ではない、ということです。
参考になさってください。
今後、再増税のタイミングが近づいてくるにつれて徐々にいろいろな対応政策が出てくるのでしょうね。何か動きが出てきましたら当サイトでも随時、ご案内していきたいと思います。