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<編集部からのコメント>
2015年もいよいよ年の瀬が迫りつつありますね。そろそろ来年=2016年への関心が高まってくるタイミングかもしれません。
昨年は12月中旬まですっかり失念していた「来年の住宅ローン金利予想」ですが、今年はそれに比べれば早めに思い出しましたのでご案内していきたいと思います。
と、その前に昨年の「金利予想」を振り返ってみるとこういうことでした。
>>>本音の2015年住宅ローン金利動向予測・見通し
結論としてはこう述べさせていただきました。
・2014年と同様2015年も住宅ローン金利は低位安定が続くほか、「追加金融緩和第2弾」が放たれ金利がさらに低下する可能性も十分あります。
今のところまだ追加金融緩和第2弾は発射されていないものの概ね及第点と言えそうです。手前味噌ではありますが・・・。
その根拠としては異次元緩和によって金利の低下圧力が維持されることに加え、年末の衆院選挙で自民党が圧勝したからですね。
具体的に過去1年間の長期金利の推移をチェックしてみるとこうなっています。
■長期金利グラフ(グラフ期間:1年)
2015年前半は欧米の金利上昇を受けて日本の長期金利もやや上昇傾向でしたが、それでもピークで0.5%前後ですからね。基調としては「超低金利」状態にあるのは間違いありません。
さらに夏場以降は世界同時株安などの金融市場の混乱も影響してか順調に低下しています。
実際、住宅ローン金利も上昇してもプラス0.1%程度だったことに加え、足元では再び「過去最低金利」を更新する勢いですね。その点でも上記「住宅ローン金利は低位安定が続く」という予想は及第点とさせていただければと思います・・・。
ではいよいよ本題に入っていきまして、来年=2016年の住宅ローン金利予想はどのように考えればよいのでしょうか?
住宅ローンの金利水準を左右する一番の要因はやはり「異次元緩和の動向」ということになります。
異次元緩和とは、2013年から実施されている、「超」金融緩和政策の通称ですが、まずそもそも金融緩和とは何かと言えば、中央銀行である日本銀行が金融市場から主に国債を大量に購入し、金融市場にどんどんマネーを投下するとともに、国債価格の上昇を通じて世の中の金利を低く抑える金融政策です。
金融市場=ほぼ銀行ですから、銀行からすればその資金を企業に貸し出す余裕も圧力も生まれることになります。さらに金利が低くなるわけですから、企業からすれば利息が減って黒字が増えるとともに、バンバン資金を借りて設備投資する好機となるわけですね。
要するに金融緩和とは景気が悪いときに経済活動、特に銀行と企業の経営を下支えする「景気刺激策」なのです。
しかしながらこうした金融緩和はどこかで収束させることが求められています。と言うのもあまりにマネーが金融市場にあふれればバブルを生み出しますし、金利がずっと低いままだと、今度景気が悪くなった時に中央銀行として打つ手がなくなってしまうからですね。
つまり景気が良いときには金利を引き上げ、景気が悪いときには金利を引き下げるという、潮の満ち引きのような滑らかな金融政策が求められるわけですね、本来は。残念ながら日本では基本的にバブル崩壊以降、25年近くに渡って金融緩和が続いているわけではあるのですが。
それはともかくとして、では具体的に何がどうなれば金融緩和が縮小に転じ金利が上昇し始めるのか、ということですが、今の日銀はこれについてはハッキリと明確に定義しておりまして、このようになっています。
・物価上昇率=インフレ率が安定して2%を超えた場合
要するにインフレ率が2%に近づいて来ればいよいよ現在の「超低金利」に黄色信号が灯ってくるということになります。 では足元の物価はどのようになっているかと言えばこのようになっています。
・総合 : 0.0%
・食品除く : −0.1%
・食品、エネルギー除く : +0.9%
つまり全体的に見れば2%に程遠い状態ということですね。これだけ見ても「金利上昇などまだまだ先」ということが分かりますが、では具体的にいつごろこの「2%目標」を達成するかと言うと、これも今の日銀は分かりやすく
「2017年3月ごろ」と予想しています。
ここからも「2016年中に本格的な金利上昇はない」ということがよく分かります。
さらに日銀のこれまでの言動が記憶にある方は「オヤ?」と思われるかもしれません。と言うのも2013年の黒田日銀発足時にこの「2%インフレ目標」達成に関して、「2年後=2015年には達成する」と公言していたからですね。これまでのこの物価目標の「達成時期」の変遷を見てみるとこうなっています。
つまり・・・「永遠の1年半後」となっているわけですね!とすると半年後の来年4月には達成時期は「2017年度前半ごろ=2017年9月ごろ」に延期されるのは明白のような気がします。
そもそも2017年4月には消費税10%への再増税が予想されているわけで、常識的に考えれば税抜の物価には下押し圧力がかかります。物価に消費税を考慮しないとすれば少なくともその反動が完全に消えるであろう2018年4月までは物価上昇を予想するのは困難ですね。
そのあたりのことは日銀も本音ではよく分かっているようで、直近の「経済・物価情勢の展望レポート」における9人の政策委員の物価見通しとしてはこのようになっているようです。
つまり2017年度のインフレ率見通し=1.8%に対して(この時点ですでに2%に届いていませんが)、9人中5人が「下がる可能性が高い」と指摘しているわけですね。だとするとそもそも1.8%という見通し自体、なぜこの水準なのか謎ですが・・・。
いずれにしても物価の現状や今後の見通しを加味すれば少なくとも2016年中に住宅ローン金利が大きく上昇する可能性はなさそうです。
それでは逆に住宅ローン金利が上昇する可能性があるとすればどのような要因でしょうか?
まず考えられるのは上記とは逆のケースで、つまり識者の予想に反して物価が大きく上昇する場合ですが、常識的に考えればそれは無さそうです。何と言っても日本はバブル崩壊以降、これまた25年近くに渡ってデフレが続いてきたわけですからね。
要するにこの金利低下は単なる景気循環ではなく、少子高齢化に伴う構造変化によるところが大きいのですね。そしてこの少子高齢化が永遠に続くとすれば、金利低下も永遠に続く、ということもあり得ます。住宅ローン利用者としてそれを期待するのはあまり健康的ではありませんが。
次に考えられるのは昨年の予想につながりますが、政権交替が起こって政治上の都合で金融緩和が縮小するケースですが、来年夏に予定されている参議院選挙では政権交替は起こりませんのでこれもなさそうです。
そもそも仮に野党第1党の民主党の政権となっても、民主党自身、金融緩和を拡大させた経緯がありますからね。政権交替=金融緩和縮小と考えるのは短絡的です。
後は日本の財政危機が一気に爆発して国債の信用力が大きく低下するケースですが、しかしこれも日銀が市場に出回る国債を買い占めれば金利水準をコントロールすることはできそうです。
大幅な円安にはなるでしょうけれど、円安=金利上昇ではないですからね。また、円安になれば輸出企業にはプラスでかえって景気がよくなるという影響もあるかもしれません。
もちろん、今のように経常収支が黒字であり、増税が予定され、達成可能度合は別として2020年のプライマリーバランス黒字化目標が掲げられている現状ではそのような国債クライシスが起こる可能性は極めて低いですが。
そのように考えていくと・・・やはり金利が本格的に上昇するケースというのは考えにくいですね。
2015年前半に何度か金利上昇局面があったように、「金利上昇が全くない」とは言いませんが、仮に上昇しても2015年と同じように長期金利で言えば最高でも0.5%前後というレベルなのではないかと思います。
2015年の住宅ローン金利も結局、多少上昇することはあっても全体的には過去最低水準を維持したわけですからね。やはりこうした状態が続く、と考えるのが自然なのではないかと思います。
そうしたわけで繰り返しになりますが、2016年の住宅ローン金利予想・予測・見通しとしては
・住宅ローン金利が大きく上昇する可能性はない
というのを当サイトの結論としたいと思います。強く言い切ってみました。
しかしながら、何があるかわからないのが経済であり金融市場ですので、万が一金利が上昇した場合の対応策について事前に十分検討しておくことは大切ですね。参考になさってください。