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<編集部からのコメント>
消費税増税後の住宅建設の反動減が残る中で、気を吐いてきたカテゴリーが貸家ですね。2015年4月〜9月期の新設住宅着工戸数の増減は前年比でこのようになっています。
・貸家 : +10.8%増/19万5950戸
・分譲住宅 : +6.2%増/12万4893戸
・持ち家 : +3.5%増/14万8339戸
1年前はまさにその消費税増税直後だったわけで、さすがに前年比ではどのカテゴリーも増加しているわけですが、その中でも「貸家」が好調に推移していることが数字の上でもよく分かります。
今や、「分譲住宅」や「持ち家」より着工戸数は多いわけですからね!今後少子高齢化が進む中で、住宅を借りる人よりは所有する人が増えてくるのだとすればバランスを欠いているような気もしますが、こうした貸家建設ニーズが、増税後の住宅市場を底支えしてきたのは間違いありません。
ではなぜ消費税増税という逆風に逆らって「貸家」の需要が伸びてきたかと言うと・・・やはりこれは主に「相続税対策」ということではないかと思います。今年から相続税の中身が大きく刷新されたわけですが、結論から言えば非課税枠が縮小され多くの人、つまりこれまで相続税の対象とならなかったような人まで対象になるようになりました。
そうした中で、相続税対策のニーズが広がったということでしょうね。もちろん相続税がかかる、かからないの違いは消費税の数%の違いよりはるかに大きいので、こうした貸家のニーズは消費税増税の逆風を感じさせず好調に推移した、ということなのでしょう。
ただしこういった貸家建設にはいくつかのハードルがあります。その最大のものの1つが住宅ローン金利の高さではないでしょうか?ご存知のように住宅ローン金利は今や史上最低水準であり、それにはもちろん基準となる市場金利も史上最低水準となっている点が大きいですが、それに加えて住宅ローンの金融機関側から見た「安全性の高さ」も影響しています。
ローンのリスクが高ければ貸付金利は高くなるわけですから、逆に安全性が高ければ金利が低くなるのは当然です。
ではなぜ住宅ローンが貸付として安全性が高いかと言うと、住宅を担保に取っていることもありますが、やはり債務者がそこに住んでいる、というのが大きいわけですね。マイホームというのは生活の最大の基盤なわけですから維持しようとする優先順位は一般的にかなり高いということです。仮にその家を引き払ってもどこかに住まないといけないわけですからね!
実際のところ住宅ローンが焦げ付いてしまうリスクというのはかなり低いのでしょう。さもないと今のような1%を大きく下回る住宅ローン金利というのは実現できません。
しかしながら。
マイホームの場合はそうだとしても、貸家の場合は金融機関から見てそこまで高い安全性は期待できません。不採算となれば諦めてしまう可能性は相対的に高いですね。もちろんそのビジネスを諦めてしまったからと言って債務者のローンが減免されるものではありませんが、総合的に見ればやはり通常の住宅ローンと比較するとリスクが高いのは間違いないと思います。
確かに貸家をビジネスという視点から「起業」と考えればそれほど簡単に成功するものではないのは容易に想像つきます。
そうした貸家を建設する際のネックとなる「住宅ローン金利の高さ」を緩和させてくれるかもしれない住宅ローンをみずほ銀行が販売開始していますね。「賃貸併用住宅ローン」というわけですが、特徴としてはこのようになっています。
・賃貸部分も含めて1つの住宅ローンで利用できる
・賃料収入も考慮して審査を行う
・借入金利は通常の住宅ローンと同様
あくまで「賃貸併用」ということで、マイホームが併設されてることが条件となってくるわけですが、それと引き換えに「借入金利は通常の住宅ローンと同様」
ということですから、なかなか魅力的に響きます。もちろん実際の住宅ローン金利も、信用力によって金利の優遇幅や貸出可能額が大きく変化するわけですから、「通常の住宅ローンと同様」だからと言って必ずしも最優遇金利が適用されるものではありませんが・・・。
それはともかく、その利用条件をもう少し調べてみるとこういうことですね。
・みずほ銀行が提携する大手ハウスメーカーで賃貸併用住宅を購入・建築・建て替えし、大手ハウスメーカーのグループ会社でサブリース(30年一括借上)を利用する顧客が対象
・対象となる物件は、総床面積に占める自宅部分の面積割合が50%以上(賃貸分の面積割合が50%未満)の賃貸併用住宅
大手ハウスメーカーが30年一括借り上げした物件が対象ということで・・・かなり狭き門であるのと同時に、みずほ銀行自体はほとんどリスクを取っていないことが分かります。このように恵まれた条件ではむしろ一般の住宅ローン金利よりも低くても良いような気がしますね。
そんなわけでこのみずほ銀行の「賃貸併用住宅ローン」がエポックメイキングな商品である・・・ということは無さそうですが、今後も貸家の建設ニーズが高水準で推移するのであれば、より魅力的な「貸家ローン」が提供される可能性はあります。貸家ビジネスに乗り出そうとされている方は情報収集を進めてみてはいかがでしょうか。
ただし、繰り返しになりますが今後少子高齢化が進む中で、住宅を借りる人よりは所有する人が増えてくると思いますので、貸家ビジネスを始めるにあたっては節税などの貸し手の動機だけでなく、借り手の需要についても十分な検証が必要です。
特に今の住宅市場はマンション人気が牽引している面があるわけですが、借り手もよりマンションを好むのだとすれば戸建ての貸家を建てても苦戦する可能性が十分あります。
そしてその肝心の節税効果も、一定期間誰かが住むのが条件になっているかと思いますので、最悪の場合、割高なローンを組んだにも関わらず家賃収入はほとんど得られず相続税はきっちりかかるといった「三重苦」もあり得ます。
世の中、うまい話はないということですね。販売業者はメリットは丁寧に説明してくれてもデメリットやリスクの説明はおざなり、というのが通例だと思いますので十分ご注意ください。
貸家に興味がある方は参考になさってください。