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<編集部からの異論・反論・意見>
よくメディアの記事をチェックしていると、資産運用について銀行や証券会社などのスタッフに相談してはダメ、という話を目にします。なぜかと言えば、売りやすいもの・手数料が高いものが売りつけられる可能性が高く、本当に意味のあるアドバイスを得られない、という懸念があるからですね。
記者の数少ない経験から言えば金融機関のスタッフがそこまで自分本位だとは思いませんが、ただ顧客からはわかりやすく価格が上昇しているものや、わかりやすく配当が分配されているものが求められ、金融機関側も人件費を賄うためにそもそも相応の手数料が含まれた商品しかラインナップしていないのだとすれば、結果的に「売りやすいもの・手数料が高いものが売りつけられてしまう」という状況はなんとなく理解できます。
その点では「相談してはダメ」とまでは言わないまでも、「お店で買ってはダメ」と言ってもいいのかもしれません。
一方で、定期預金などのプレーンな預金商品について「銀行に相談してはいけない」といった忠告を見ることはありません。商品を取り巻く環境は同じにも関わらずです。
結局その違いは、比較しやすい商品であるかどうか、そして顧客がよく理解している商品であるかどうか、ということなのでしょうね。つまり預金というのは素人でも簡単に比較できて、内容の理解も容易です。とすると「A銀行の0.3%の定期預金より、うちの0.1%の定期預金の方が得です!」などといったセールストークは成り立たないわけで、うまく言いくるめられてしまう可能性は低いということですね。
そもそも、比較が容易すぎてわざわざ銀行に相談しにいく人がいないから、そうしたアドバイスも発生しない、ということなのかもしれませんが。
とすると住宅ローンについてはどうでしょう?比較も理解もしやすい商品なら銀行に相談してもいいし、逆にそうでないならまず自分でしっかり勉強してからそれなりの緊張感を持って臨んだ方がいいということになります。
結論から言えば・・・どちらかと言うと後者なのでしょうね。
要するに、住宅ローンの比較や理解はそんなに簡単ではなく、一定の理解・勉強が必要であり、銀行員にアドバイスを求める場合も言いくるめられないよう、その場で決めず家族や知り合いに相談したりネットや書籍で調べるなど、能動的に情報収集し、自律的に判断していく必要があるということです。
住宅ローンは当然、優劣は金利で表わされるわけで比較は簡単なような気がしますが、理解を難しくしている要因は何があるのでしょうか?
恐らく大きく2つあって、1つ目は住宅ローンの「表面金利」と「実質金利」は異なるということですね。もちろん実質金利の方が大切なわけですが、実質金利を知る上では、
・高額な事務手数料が求められないか
・保証料が有料か無料か
・団体信用保険が有料か無料か
といった「隠れ金利」を考慮しないといけません。仮に全部Yesの場合、表面金利に「+0.7%」ほど上乗せしないと実質金利は分からないことになります。ちなみに手前味噌ですが当サイトではそうした実質金利をご案内していますので参考になさってください。
>>>住宅ローン「実質金利」比較・ランキング
住宅ローンを分かりにくくしている2つ目は将来の金利は誰も分からないということですね。将来的に金利が上昇していくのであれば固定金利の方が良いですし、そうでないなら一番金利が低い変動金利が良い、ということになります。
誰も正確に予言できない以上、そうした判断は利用者に委ねられるわけですが、実際には変動金利は競争が激しく、銀行側からすればほぼ赤字の状態ですので、変動金利を勧められることはまずないと思います。それよりも5年固定、10年固定、20年固定、全期間固定といったより期間の長い金利が勧められるのが通例です。期間が長ければ金利も高くなりますからね。
そして正解がない以上、非常に言いくるめられる可能性が高く、相談者は十分に警戒する必要があると言えそうです。
そうした実態が垣間見えるのが業態別の住宅ローン金利タイプのシェアですね。住宅金融支援機構が発表している「借入先別の金利タイプ」という調査ではこのようになっています。
黄色が変動金利、ピンクが全期間固定金利ですが、業態によってその割合にかなりバラつきがあることが分かります。本来、顧客のニーズはそれほど大きく変わらないわけですが、実際の借り入れ結果がこのように変動するということは結局、顧客の意思決定に金融機関の思惑が強く影響したというのは間違いないと思います。
ちなみにいつもご案内しているようにこの調査は実態とかけ離れているわけですが特に「お手盛り」となっているのは「都銀・信託銀行」の項目だと思います。都銀・信託銀行の貸出シェアの半分が全期間固定金利なんて見たことも聞いたこともありません。したがって、この都銀・信託銀行の数字は無視し、地方銀行以下の数字に着目していただければと思います。
それでも業態によって貸出シェアに大きな差異があるという結論は変わりませんね。
さてここで上記引用したコラムに触れたいと思いますが、 銀行に住宅ローン相談してはいけない2つの「意外な」理由とのことですので俄然興味がわきますが結論から言うとこういうことですね。
・理由1:正しい住宅ローンの比較ができないから
・理由2:あなたにとって有利な住宅ローンは勧められない
・・・「意外」でも何でもないですね・・・ディスって恐縮ですが。
気を取り直して、では実際に住宅ローン利用者の方が最終的に住宅ローンを決めた際に役に立った相談相手として同じく住宅金融支援機構の調査ではこのようになっています。
こちらも4ヶ月前の調査で34.6%のシェアだった「住宅・販売事業者」がいきなり19.0%に下がるなど信憑性が怪しい面がありますが、それはともかくとして2位の「金融機関」への相談が住宅ローン決定にそれほど大きな影響を与えてないことが示唆されています。
だとすると「住宅ローンについて銀行に相談するな」と言うよりは「住宅ローンについて銀行に相談してもあまり満足できないかも。」と言ったものの方がより適切なアドバイスと言えるのかもしれませんね。
いずれにしても何事もそうではありますが、販売サイドにアドバイスを求める場合は上記の通り、言いくるめられないようその場で決めず家族や知り合いに相談したりネットや書籍で調べるなど、能動的に情報収集し、自律的に判断していく姿勢が重要ということですね。
そしてそれは住宅ローンも同様だということです。特に住宅ローンの場合、他の商品サービスと比べて金額も期間も桁違いですから、なおさら慎重な判断が必要なのは言うまでもありません。
参考になさってください。