※当サイトには広告リンクが含まれています。
<編集部からの異論・反論・意見>
先週と同じ書き出しとなって恐縮ですが、今年=2016年は各銀行が思い切って金利を引き下げ、幸先のよいスタートとなっていますね。長期金利も足元の株安の動きを受けて空前の低金利水準となっており、住宅ローン利用者にはさらに強い追い風が吹いています。
来年4月には消費税の再増税が控えていることもあり、住宅市場と住宅ローン市場が再び盛り上がってくるのは間違いなさそうです。
ただ一方で2013年のアベノミクス開始以降、景気回復に加え円安などもあり大きく上昇しているのが不動産価格です。国土交通省が発表する「不動産市場動向マンスリーレポート」の12月号によればこうなっています。
あえて解説する必要もなさそうですが、2010年を100とすると住宅価格は全国で106程度となり、6%程度上昇しています。しかしすべての住宅価格が上昇しているわけではなく、突出して上昇しているのがマンション価格ですね。125近い水準となっており、つまりは2010年比で25%近く上昇したということになります。
ちなみに上昇のスタート地点は2013年春ですが、まさにそのタイミングで民主党から自民党への政権交代が行われ、アベノミクスが表明されたわけですから、マンションは「物価上昇=インフレ」を象徴するアベノミクスの申し子と言えそうです。マンション価格自体はインフレ指標には含まれないとは思いますが。
逆に言えば住宅地や戸建て住宅の値段がピクリとも上昇していないのは不可解ですね。いくら都心回帰などのマンション人気があるとしても極端な気がします。
それはともかく、こうした状況を前に少なくともマンション購入については躊躇してしまうのが当然だと思いますが、一方、住宅購入は「子どもが増えた」「今の家が手狭になった」と言ったライフステージ上の必要性から要請されることが多く、「ずっと待つわけにはいかない」という方には先日のコラムで以下のように選択肢をご案内しました。まとめるとこういうことですね。
1.(身も蓋もないですが)高値掴みを許容する
2.2017年4月以降に買う
3.マンションをやめ戸建てにする
4.今購入するものの、さらに上昇すれば早期に売却する
>>>2016年、住宅は購入すべき?するべきではない?
しっくり来る方もそうでない方もおられるとは思いますが、いずれにしても悩ましい状況にさしかかっているのは間違いありません。追い風と向かい風の両方が強くなっているわけですからね。
そうした中で気になる記事を見かけました。上記の通りですが、
・2016年9月末までの間に、お買い得な新築物件が不動産市場に出回り、マンションを購入しやすくなる時期が到来するという。この「投資チャンス」を逃すのはもったいない。
・不動産を安価で買う絶好のチャンス。
・増税前の“エアポケット”を上手に活用したい。
となかなか強気な言葉が並んでいます。もちろん信愛なる週刊ポ○トさまの記事ですので、その多くはあくまでフィクションであり、字面を楽しむのが大人のたしなみというものではありますが、念のためその根拠をチェックしてみるとこういうことですね。
・投資用物件を手がける不動産業者は「2015年夏以降、土地の動きが激しい」と話す。
・・・これだけです。
要するに2015年夏以降、土地の動きが激しいので、おそらく多くの新築物件が増税前に大量に販売される。そうなると安い物件も出てくるので絶好の買いチャンスになる、といったロジックでしょうか?
残念ながら根拠は「ほぼない」ということでしょうね。100歩譲って本当に大量の土地がデベロッパーに取得されていたとしてもマンション開発には3年や4年かかるのはざらですから2017年3月にはまず間に合いません。
加えて新築マンションに対する消費税率8%適用の特例はこれまでの経験に従えば締切が2016年9月末となるでしょうから尚更時間がありません。つまりは少なくとも「2015年夏以降、土地の動きが激しい」から増税前にマンション価格が下がる、という可能性はゼロです。
週刊誌の記事を真に受けている方はおられないとは思いますが念のため。
なおこのマンション価格については同じく週刊ポ○トの記事として「マンションバブル崩壊間近 東京の高騰支えた2本柱に揺らぎ」という内容のものが配信されていました。
片や「買いの絶交のチャンス」と煽り、片や「バブル崩壊」と不安を煽るわけですから、読者からすれば往復ビンタを食らわされているように感じそうなものですが、そこで目くじらを立てないのが大人のたしなみであるのは申し上げた通りです。
それはともかく、この後者の記事は大変しっかりしていてまず2015年のマンション市場は「相続税対策」と「外国人」という2つの柱によってバブル化したと端的に指摘しています。
そして前者の「相続税対策」については税務署が厳しくチェックする方針であることを明確にしており、後者の「外国人」についてもアメリカの金利が上昇する見込みであることや、中国の景気が怪しいことから「爆買い」が収まっていく可能性を指摘しています。
その結果、「2016年はマンションバブル崩壊の年になるかもしれない。」とのことですね!こちらはなかなか説得力があります。
また、今回取り上げた記事はどちらも近い将来での価格下落を示唆しているという点では少なくとも「結論は同じ」と言えるかもしれません。
いずれにしてももし本当にマンション価格が下がるのであれば、すでにお持ちの方はともかくとしてこれから買おうとされている方には朗報と言えそうです。
もちろん未来のことは誰にもわかりませんので実際に下がるのかどうかは分かりませんし、株価と違って不動産はいきなり2倍になったり半分になったりするものでもありませんので、上がるにせよ下がるにせよそうした価格変動を強く期待するのはあまり健全ではないかもしれませんが、とは言いつつ少なくとも上記のような「タワマン減税のメリット縮小」や「アメリカの利上げ」、「中国経済の減速」は実際に起こっていることですから、何がしかの影響が出てくると考えるのは自然なことですね。
「マンション価格の変調の可能性を視野に入れておく」くらいが現実的なスタンスとなるでしょうか。
参考になさってください。