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<編集部からの異論・反論・意見>
世の中には圧倒的多数を占める「持ち家」派と少数派の「賃貸」派がおられるわけですが、では住宅ローンを比較する当サイトが持ち家派であるかと言うと・・・必ずしもそうではありません。
これまで何度もご案内してきましたが、賃貸と持ち家の、30年といった期間での総コストにほとんど違いはありません。30年を超えてくると持ち家に分が出てくるような気もしますが、一方持ち家だっていつかどこかで建て替えしないといけませんし、また少子化が進む中では人生の最終盤は自宅ではなく老人ホームを利用しようとする方も増えてくると思いますので、そのような要素も踏まえれば「30年超えてもコストは変わらない」と言えるかもしれません。
そうしたわけで当サイトの結論としては、マイホーム購入は「持ち家が得だ、賃貸は損だ、と言った根拠の薄い経済合理性ではなく、この家が欲しい、この家なら一生住めるという感情で決めればよい」としております。
何を非合理的な、とおしかりを受けるかもしれませんが、「この家なら一生住める」という気持ちは大切で、もし中途半端な理由で選んでしまうと、どこかで「住み替え」の可能性が出てきてしまいますが、そうなれば賃貸だった場合と比べて「コスト負け」するのは間違いないように思います。服もクルマも時計もバッグも、本当に気に入って長く使い続けられるものが一番コストパフォーマンスがよく、その点は家も同じということですね。
さてその「持ち家派」と「賃貸派」ですが、以前ご紹介した内閣府が9年ぶりに実施した「住生活に関する世論調査」ではこのようになっています。
ちょっと小さくて見づらいかもしれませんが、
・持ち家派 : 74.9%
・賃貸派 : 16.5%
・その他 : 8.6%
という割合ですね。やはり圧倒的に「持ち家派」の方が多いです。
>>>持ち家派vs賃貸派、新築派vs中古派 その割合は?
しかしよく考えると、この「持ち家派」の方々はバブル崩壊後、エラい目にあったのですよね。つまり郊外にたとえば8,000万円の住宅を購入したら、バブル崩壊によって半値八掛け四割引き=1,920万円に下がった・・・かどうかは分かりませんが、これに近い衝撃的な住宅価格の下落が待っていたわけです。
もちろん住宅ローンは不動産価格が下がったからと言ってビタ一文減らないばかりか、ますます返済圧力が強まるわけですが、いずれにしてもこの例で言えば住宅ローン利用者は幻のように消えた6,000万円余りを含めて黙々と返済しなければいけない羽目になったのですね。
仮にこの時期、賃貸で過ごしていた方は、当然賃料は高かったでしょうけれど、それでも8,000万円の住宅ローンからすれば微々たる額でしょうから、生涯の資産形成で言えば「持ち家派」に圧勝しているということではないかと思います。
回答者の中にはまさにそうした当事者の方や、その子どもたちが多く含まれているのだと思いますが、それでも「持ち家神話」が揺るがないのは・・・やはりこれはもう文化なのでしょうね。文化なのであればそもそも良い悪いを論じるべきものではないかもしれません。
さて、今回取り上げるのは全国宅地建物取引業協会連合会が、一般消費者を対象に実施した「住宅の居住志向及び購買等に関する意識調査」の結果ですが、ここでも「持ち家派」「賃貸派」の割合を聞いていますね。その結果はこうなっています。
つまり
・持ち家派 : 83.7%
・賃貸派 : 16.2%
ということです。中間の選択肢がなかったためか、よりクリアな回答結果になっています。うん、やはり「持ち家信仰」は文化ですね。
「文化」であるなら理由はもう後付けしかないわけですが、一応チェックしてみるとこうなっています。
1位 : 家賃が無駄 65.7%
2位 : 落ち着きたい 41.9%
3位 : 持ち家は資産 41.2%
4位 : 賃貸は気を遣う 21.5%
5位 : マイホームは夢 15.0%
6位 : その他 2.4%
いかがでしょう?
まず7割近い方が回答している「家賃が無駄」という理由は残念ながら根拠はありません。確かに賃貸の場合、家賃が無駄ですが、それが持ち家に変わると「建物の劣化と維持費、管理費、税金、そして住宅ローン利息が無駄」という状況に変わるだけですね。持ち家の場合、コストが一瞬見えにくくなるだけで、どこに住むにも居住コストはかかるのです。
同様に4割を超える方が回答している「持ち家は資産」という理由もあまりあてになりません。賃貸も持ち家もトータルコストがほぼ同じなのであれば残る資産もほぼ同じだからですね。
では賃貸の場合、どんな資産が残るかと言えば「貯金」ということです。「賃貸暮らしをしながら貯金をするのは難しい」「賃料とほぼ同じ額の住宅ローンを組んだので変わらないはずだ」と思われるかもしれませんが、住宅ローンと違って賃料は築年数が経つにつれてどんどん低下していきます。2年毎の更新のたびに値下げ要求をしてもいいですし、折り合えなければより安い物件に引っ越すこともできます。
30年後の「築30年」のマイホームに住んでいても住宅ローン返済額は全く減りませんが、同じく30年後に「築30年」の賃貸物件に住んでいる場合は賃料は当初よりかなり減っているはずですね。半値くらいになっているかもしれません。その差額が賃貸派の資産である「貯金」となるわけです。
そうしたわけで相変わらず根拠の薄い理由が並ぶことに居心地の悪さを感じる記者ですが、他方、2位の「落ち着きたい」 、4位の「賃貸は気を遣う」、5位の「マイホームは夢」というのは感情が前面に出ていてすがすがしいですね!特に「マイホームは夢」という回答には花丸を差し上げたいくらいです。
もちろん繰り返しになりますが、「持ち家信仰」が文化であるなら、どんな理由も後付けですのであまり議論しても仕方ない、ということになるわけですが。
なお最後に、以前もご紹介しましたが、同調査では現在の不動産について「買い時かどうか」という質問をしているわけですが回答結果はこうなっています。
徐々に「買い時だと思う」が減少する一方で、「買い時だと思わない」が増えているかと言うとそうではありません。代わりに「分からない」が増えているのですね。
その点では需要は底堅いと言えるのかもしれませんが、それでも着実に不透明感が広がっていることは間違いありません。やはりそう遠くない将来のどこかでターニングポイントが来るのでしょうね・・・。それはそれで「買いのチャンス」という強気の見方もあるかもしれませんが。
参考になさってください。