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<編集部からの異論・反論・意見>
1月29日に予想外の金融政策である「マイナス金利」が発表され、金融市場は大きく揺れ動いています。
また、こうした動きにいち早く反応したのが定期預金金利の方で、続々と金利の引き下げが発表されています。ついにゼロ近辺まで下がってきましたね・・・昔は1億円あれば利息で食っていける、という時代もありましたが、今や利息を全くあてにできない時代になったということです。
ただ一方でありがたいのは住宅ローン利用者からすれば強烈な追い風になるということですね。今後、住宅ローン金利が下がるのは間違いありませんが、実際、上記ニュースの通り新生銀行が2月3日に住宅ローン金利を引き下げています。
つまり1日に発表した2月の金利をわずか2日で引き下げた、ということですね。マイナス金利の「衝撃」を象徴した動きと言えそうです。
そうしたわけで「マイナス金利=金利低下」というざっくりとした理解は広がっているのではないかと思いますが、一方でこのマイナス金利を正確に理解されている方は実はあまり多くないかもしれません。
ポイントとしては2つですね。1つ目はそもそものこの「マイナス金利の意味」で、2つ目は「マイナス金利がどこに適用されるのか」という点です。
まず1つ目の「マイナス金利の意味」 ですが、通常はプラス金利ですので、たとえば100万円を預金すると1年後に101万円といった具合に「元本+利息」でどんどん増えていきます。
しかしマイナス金利となると利息がマイナスになってしまうので「元本−利息」でどんどん減っていってしまうのですね。たとえば100万円を預金すると1年後に99万円になる、といった具合です。
そして話がさらにややこしくなるのが住宅ローンなどの借り入れをする場合ですね。通常は「元本+利息」で返済を進めていくわけですが、マイナス金利になれば上記の通り「元本−利息」の返済ですから、どんどん元本返済が進むことになります。
仮に「元本据え置き」なら、利息を「もらえてしまう」という、訳のわからないことが起こるということですね。
そうなってくるとだれも預金などしなくなりそうなものですが、ではなぜ日銀がこの「マイナス金利」というインパクトの強い金融政策を選択したかと言えば、ポイントの2つ目にも関わってきますが、銀行に対して「日銀の当座預金に資金を眠らせるのではなく、どんどん融資や投資に回せ」という強い圧力を加えるためです。
銀行がどんどん融資や投資を積み増せば、景気が拡大する効果が期待できるのですね。
したがってこの「マイナス金利がどこに適用されるのか」と言う問いに対しては「銀行が余った資金を預けている日銀の当座預金」が正解となります。つまり、このマイナス金利とは、あくまで銀行と日銀との間の金利の話であり、われわれ個人客が利用する預金や住宅ローンがダイレクトにマイナスになるわけではない、ということです。
すぐにでも預金や住宅ローンの金利がマイナスになる、といったややヒステリックな反応も感じないではないですが、今のところそれは杞憂ということですね。仮に預金がマイナスとなればどんどん資金が流出し、銀行からすれば大切な顧客基盤が失われることになりますし、住宅ローン金利がマイナスとなれば、銀行からすればそもそも住宅ローンビジネスをやめてしまった方がいい、という判断も出てくるかもしれません。
いずれにしても預金や住宅ローンにつき、当面、「金利の低下」は間違いないとしても「マイナス金利になる」と考えるのは時期尚早ということです。プラス金利とマイナス金利との間には大きな大きなルビコン川が流れているということですね。冷静に対応いただければと思います。
そもそも預金金利がマイナスとなれば、多くの預金者=有権者が、黒田緩和=アベノミクスに反感を抱くのは間違いありません。政治的にも相当リスクがあるということですね。
加えて「マイナス金利」がそこまで急速に広がらない理由としては、上記の通りマイナス金利が適用されるのが「銀行が余った資金を預けている日銀の当座預金」なわけですが、このすべてがマイナス金利となるのではなく、実際にはこの一部なのです。
つまり当座預金のベースの部分には引き続き+0.1%の金利をつけつつ、それより増えた部分だけ0%もしくは−0.1%の金利を付与する(金利をもらう)ということですので、実はきわめて「局地的な話」なのですね。
逆に言えばこうした非常に「小出し」な施策で大きな反応を得たわけですから、日銀の「演出力」はなかなかのもの、と言えるのかもしれません。
では具体的にこのマイナス金利となる残高がどれくらいの規模になるかと言えば、今朝の日経新聞の試算によるとこういうことのようです。
・基礎残高(+0.1%) : 210兆円
・マクロ加算残高(0%) : 40兆円
・政策金利残高(−0.1%) : 10兆円
つまり、全体のわずか4%弱だということです。
その損失も「たった」100億円ですね。当然のことながらプラスの利息=2,100億円の中に十分とどまりますし、銀行業界全体の多額の利益を考慮すれば誤差の範囲です。
そのように考えると世の中がいきなり「マイナス金利の世界」になったわけではなく、むしろ「ほとんど全く何も変わらない」というのが実態ですね。
しかしながら銀行からすれば「預金はもうこれ以上いらない」という状況が明確になるわけで預金金利が低下するのは当然ですし、日銀の当座預金に預けられない以上、貸出競争にますます拍車がかかるのも間違いありません。
また国債の需要がさらに高まりますので、国債価格の上昇=金利の低下が起こるのも必然です。
そうしたわけで住宅ローン金利が一足飛びにマイナスになってしまうことはないにしても、今後さらに住宅ローン金利が低下するのは確実ということですね。
上記の通り今回のマイナス金利の発表が1月末でしたので、2月の住宅ローン金利にはこのマイナス金利の影響が「織り込まれていない」ものと思います。つまり、3月の住宅ローン金利が大いに下がる可能性は高そうですし、上記の新生銀行のようにそれを待たずして金利を引き下げてくる銀行もあるかもしれません。
期待したいと思います。
なお2016年の金利予測について、「金融緩和も限界なので金利が上昇する」と煽っておられた識者の方もおられたと思いますが、十分反省いただければと思います。
参考になさってください。