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<編集部からの異論・反論・意見>
すでに何度もご案内しているように、1月末に発表された「マイナス金利」は相当なアナウンス効果があったようで、結果的に当サイトのトラフィックも「大爆発」しております。住宅ローン利用者の住宅ローン金利に対する関心が一気に高まった、ということなのでしょう。
報道によれば住宅ローンの申し込みが通常の3〜4倍になった、という銀行もあるようですので実際その通りなのではないかと思います。何かと不評のマイナス金利政策ですが、少なくとも住宅ローン市場の活性化には大きく貢献していることになります。
ただ一方で、ではこれが「住宅が爆発的に売れ始めたから住宅ローン市場も活況を呈している」かと言うとおそらくそれはないのではないかと思います。
もちろんある程度、住宅販売にも好影響があるものとは思いますが、しかし金利が安いからと言って住宅を2軒も3軒も買う人はほとんどいませんし、まだ住宅を購入していない方が1月末の政策発表で決断して、数週間で家を買うというのも現実的には考えにくいですね。
さらに1月の首都圏における新築マンションの供給戸数は前年比でマイナス11%と低調である上に契約率は59%と大きく悪化しています(好調の目安は70%以上だそうです)。首都圏の新築マンション市場=日本全国の住宅市場、というわけではないにしても勢いが衰えていることは間違いありません。
そうした中で金融政策一つでいきなり住宅販売が数倍になると考えるのは違和感があります。結局のところ今の住宅ローン市場の活況は「借り換え」に伴うもの、ということなのでしょうね。
だとすると金融機関からすれば全体のパイが増えないばかりか、「おいしい」高金利の住宅ローンが減って、「おいしくない」低金利の住宅ローンに切り替わっていくわけですから踏んだり蹴ったりですが、しかしそれは、相手方のわれわれ住宅ローン利用者から見れば、
「おいしくない」高金利の住宅ローンから「おいしい」低金利の住宅ローンに切り替わることを意味するわけなのでぜひ検討すべきものだと言えます。
今回のマイナス金利政策を受けて、住宅ローン利用者の金利意識が高まり、改めてチェックして現在の金利条件に驚き、借り換えを検討し始めた、ということなのであれば、日本経済全体への影響はともかくとして家計としては「全くもって正しいこと」と言えます。ぜひそのまま借り換え完了まで突っ走っていただければと思います。
ただしちょっと気になるとすればその借り換え効果はどれくらいかと言う点です。
借り換えには登記費用などがかかりますので、金利が十分下がらないと借り換えメリットが出ないばかりか費用倒れ=赤字になることもあるからです。そこで過去の三菱UFJ銀行の変動金利の変遷をチェックしてみます。
・2010年1月:1.475%
・2011年1月:1.275%
・2012年1月:1.075%
・2013年1月:1.075%
・2014年1月:1.075%
・2015年1月:0.975%
・2016年1月:0.875%
これは「最優遇金利」ですのでみんながみんなこの金利で借りられているわけではありませんが、それはともかくとして市場金利の低下に伴い、住宅ローンの金利も徐々に低下してきているのですね。
つまり借り換えメリットも相対的には徐々に低下しているわけであり、これは借り換えには逆風だと言えます。
では実際に、これを住信SBIネット銀行の変動金利:0.579%に借り換えた時の諸費用を含めたトータルのメリットを試算するとこうなります(残高2,000万円×残存期間20年とします)。
・2010年1月:−132万円
・2011年1月:−88万円
・2012年1月:−45万円
・2013年1月:−45万円
・2014年1月:−45万円
・2015年1月:−23万円
・2016年1月:−2万円
一応、それでもどの条件でも多少の金利削減効果が減られる計算ですが、しかし0.875%→0.579%に大きく引き下がっても実際のメリットが−2万円にとどまるのは諸費用(この場合は約60万円)がかかるからです。
つまりは借り換えで満足を得るのには十分な「金利差」が必要ということです。
そこで考えたいのが上記のような「変動金利→変動金利」の借り換えではなく、「固定金利→変動金利」への借り換えです。
もちろん固定金利利用者の中にも、「10年固定金利」のように比較的、変動金利に近いタイプの金利を利用されている方もいれば、借入期間終了まで金利が変わらない「全期間固定金利」を利用されている方もいるわけで、それぞれ金利観は大いに異なると思いますし。
特に後者の「全期間固定金利」を利用されている方は金利上昇リスクに対する懸念が人一倍強く、「固定金利→変動金利」への借り換えには抵抗があると思いますが、せっかく日銀が住宅ローン利用者に対して「マイナス金利」というまたとないバレンタインギフトをくれたわけですから、ちょっとくらい味見してはどうか、ということです。
では仮に記者が「全期間固定金利利用者」に対して「変動金利への借り換え」を説得しようとすればどうなるのか考えてみたいと思います。
1つ目は、日本の金利は80年代のバブル崩壊以降、ずっと金利の低下が続いてきたということですね。かれこれ25年以上経過した計算になります。なぜかと言えば直接的には日銀が金融緩和を拡大してきたからで、それはなぜかと言えば、日本がずっと不景気だったからで、それはなぜかと言えば、少子高齢化に伴う成長の終焉と市場の縮小が始まっているからですね。
つまり今の日本は構造的に金利が下がる状態になっているということです。これを逆回転させるには少子高齢化を逆回転させる必要がありますが、大規模な移民でも受け入れない限り、それは不可能です。
2つ目は、日銀は2%のインフレ率達成を目標にしていますが、全くもって達成の目途は立っていません。もともとは2015年3月には達成しないといけなかったのが1年以上「延滞」しているほか、その目標もずるずる先延ばしとなり「永遠の1年半後」という状態です。
そしてその目標が達成されるまでは今の低金利政策を続けないといけませんので、金融政策という観点からも金利が上昇する余地はありません。
3つ目は、住宅ローンの変動金利は市場金利ではなく、日銀がほぼ直接コントロールしている「1日だけ」「一晩だけ」といった非常に短い期間の金利をベースにしています。つまり、住宅ローンの変動金利が上がるのも下がるのも日銀次第、ということです。
日銀は当然、中央銀行として景気にも一定の責任を負いますので、多くの住宅ローン変動金利利用者が次々と破綻していくような金利上昇を容認できるはずがありません。その点でも住宅ローン変動金利の急激な金利上昇リスクはほぼゼロと言えます。
ちなみに住宅ローン固定金利のベースとなる長期金利は国債金利ですのでこれはほぼ完全な市場金利です。つまり投機的な動きによって乱高下する可能性は十分あります。実際、何度も起こっていますしね。
4つ目は、今後もマイナス金利拡大に伴い住宅ローン金利の低下が進むとすれば、固定金利から変動金利に一旦借り替えておいて、さらにまた固定金利に戻すということも可能ですね。「固定金利→変動金利→固定金利」ということです。
同じ銀行内で「変動金利→固定金利」に切り替えるのであれば手数料はわずかですみます。そうすれば金利低下を待つ間も変動金利で待てますので損がありません。
逆に、この状況で変動金利の金利上昇シナリオを提示せよ、と言われても困ってしまいます。
最近ではYahooニュースに記事が出るようなエコノミストブロガーの方が「これ以上金融緩和をするとかえって金利が上昇する」という見通しを述べておりましたが、その懸念はマイナス金利で吹き飛びましたね。今、何を想っておられるのでしょうか・・・。
返済不可能な国債残高を背景に国債が暴落するというホラーストーリーもありますが、良いか悪いかは別にして今の異次元緩和ではそうした国債が売りに出れば日銀が買ってしまいますので起こりえないですね。
さらに変動金利のベース金利は上記の通り国債市場ではありませんので、一定の防波堤があります。
最もありえるシナリオがアメリカのように日本の景気が順調に拡大し、金融緩和が縮小・終了する中で金利が自然に上昇していくケースですが、これもある日突然起こるのではなく、日銀が何度も示唆し、何度も警告し、何度も注意喚起した上で行うのがセオリーですので、不安に駆られる必要はないと思います。
もちろんそこまで好景気であれば住宅価格も相応に上昇しているでしょうしね。
・・・と言うより、これまでの趣旨から言えば少子高齢化が10年単位・100年単位で進む日本で「金融緩和が縮小・終了する」ことは永遠にない気がするのは記者だけでしょうか。
「マイナス金利」政策が発動された今は余計にそう感じます。
そうしたわけであまり煽る気はありませんが、標題の“マイナス金利時代”の上手な住宅ローン借り換え方法とは、金利上昇リスクが相対的に減少したことを背景に、「固定金利から変動金利に思い切って乗り換えてみる」ということにしたいと思います。
ちなみに同じ三菱UFJ銀行の30年固定金利の変遷はこのようになっています。
・2010年1月:3.550%
・2011年1月:3.420%
・2012年1月:2.600%
・2013年1月:2.490%
・2014年1月:2.340%
・2015年1月:1.730%
・2016年1月:1.650%
これを同じく、住信SBIネット銀行の変動金利:0.579%に借り換えた時の諸費用を含めたトータルのメリットはこうなります(残高2,000万円×残存期間20年)。
・2010年1月:−617万円
・2011年1月:−585万円
・2012年1月:−388万円
・2013年1月:−362万円
・2014年1月:−327万円
・2015年1月:−188万円
・2016年1月:−171万円
なかなかの破壊力ですね!繰り返しになりますがこれは約60万円の諸費用「込み」の借り換えメリット=金利削減額です。
ちょっと前のめり過ぎかもしれませんが、それはやはり「マイナス金利」政策に、これまでの金利上昇リスクを吹き飛ばすだけのパワーがあるということですね。少なくとも金利上昇リスクが相対的に後退したのは間違いありません。
だからこそ、多くの住宅ローン利用者が借り換えを検討されているのだと思いますが。
参考になさってください。