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<編集部からの異論・反論・意見>
度重なる金融緩和はついに「マイナス金利政策」にまで行きつき、「来るところまで来た」という感が強いですね。もちろん住宅ローン利用者からすればありがたいことです。
そのような金利環境から、住宅ローン金利に対する関心も徐々に高まっているのではないかと思いますが、読者の方々の一部には「住宅ローン金利の決まり方が分かればいいのに」と思われているかもしれません。
もし住宅ローン金利の決定メカニズムが分かれば、今後の住宅ローン金利の動向を簡単に予測できるようになるのでは?と期待できるからですね。
では実際のところ住宅ローン金利はどのように決まるのでしょうか?
恐らく、一番よくなされている説明は「住宅ローン金利は長期金利の動きに連動する」というものですね。長期金利が上昇すれば住宅ローン金利も上昇し、長期金利が下落すれば住宅ローン金利も下落する、というものです。
長期金利=10年もの国債金利ですが、住宅ローンも20年〜30年という長い期間貸し出される商品であり、これらの「期間の長い金利」が相関するのは当然です。
ただ残念ながらこの回答では50点ですね。
と言うのも住宅ローン残高の約6割を占める住宅ローン変動金利タイプの説明が抜け落ちているからです。
変動金利タイプの金利は概ね6ヶ月ごとに見直されることから、長期金利のような期間の長い金利ではなく、もっと期間の短い市場金利と連動しています。たとえば「一晩だけ」といった極めて短期間の市場金利と相関しているわけです。
しかしながら長期金利にしても「一晩だけ」金利にしても市場金利には違いなく、「一体何が違うのか、市場金利に連動するという点では同じではないか」と思われるかもしれません。
仰る通りではあるのですが、この2つの市場金利が決定的に異なるのは、前者の長期金利が巨大な国債市場で形成され、様々な思惑によって上がったり下がったりを繰り返すのに対し、後者の「一晩だけ」金利のような短期金利は、日銀が金融政策によってその金利水準をほぼ完全にコントロールしているためにほとんど変動しないのですね!
そうしたわけで結果的に住宅ローン金利は以下のような性格を帯びることになります。
・住宅ローン固定金利、フラット35金利 : 月によってそれなりに金利が変動する
・住宅ローン変動金利 : 金利がほとんど変動しない
「変動金利の金利こそ変動しない」とは何かの冗談のようですが、事実だから仕方ありません。
よく「専門家」の意見として、住宅ローン変動金利はいつ大きく上昇するか分からないから利用すべきではない、といった内容のものが紹介されますが、そうしたコメントを目にするたびに、この人は本当に住宅ローン金利の仕組みを分かっているのかな?と首をかしげてしまいます。
おそらく「専門家」は「専門家」でも住宅ローンの専門家ではない、ということでしょうね。
今後仮に2%のインフレ目標が達成され、金融緩和の縮小や政策金利の引き上げが検討されるとしても、日銀はこの短期金利の引き上げについては苦労するでしょうね。
恐らく1,000万を超える世帯が住宅ローンの変動金利タイプを利用しているわけで、短期金利の引き上げに対してこの家計が完全に「人質」となっているということですね。
消費税の3%分の引き上げですら1年以上の景気後退を招いたことを考えれば、仮に短期金利を引き上げるとするとそれ以上の景気後退が発生する可能性が出てきます。
もちろんそれは「政治リスク」でもあり、そう考えるとこの短期金利は「永遠に引き上げられない」と考えてしまうのは記者だけでしょうか?
まぁそもそもそれ以前に、前提となっている「2%のインフレ目標が達成され、金融緩和の縮小や政策金利の引き上げが検討される」 事態すら、少子高齢化によって縮小傾向にある日本経済では「実現不可能」と感じてしまいますが。
何と言っても金融緩和はバブル崩壊以降の30年近く、ずっと拡大し続けているわけですからね!縮小を予想すること自体無理があります。
というわけで本題に戻って、住宅ローン金利の決まり方としてはこのように
・固定金利の決まり方
・変動金利の決まり方
の違いをそれぞれ説明できれば100点ではないかと思って・・・いましたが。
何気なく先日発表された住宅金融支援機構のデータを見ていたら、思いがけない調査結果を発見しました。それがこれですね。
金利決定の考慮要因としてたとえば変動金利タイプを例にとるとこのようになっています。
・競合する他機関の金利 : 96%
・長期金利 : 16%
・銀行間金利 : 16%
・長期金利と短期金利の金利差 : 6%
・短期金利 : 10%
つまり・・・住宅ローン金利を決定している圧倒的な要因は「競合する他機関の金利」なのですね!横並び体質が骨の芯までしみ込んでいるわけで、ある意味、身も蓋もない回答ではありますが、少なくとも正直に回答している結果だという点は評価してよさそうです。
この体質は他の金利タイプも同様で、最も市場金利の影響を受けている全期間固定金利タイプでもこの割合ですね。
・競合する他機関の金利 : 91%
・長期金利 : 35%
・銀行間金利 : 29%
・長期金利と短期金利の金利差 : 8%
・短期金利 : 1%
いやぁひどい。結果的に価格カルテルが行われているようなものですが、「結果的に」ということならお咎めはないのでしょうね。
そうしたわけで本題に戻って「住宅ローン金利の決まり方は?」と聞かれれば「競合する他機関の金利を見て決まります」というのが正解ということですね。
ただ現実的に、そうは言いつつ住宅ローン金利が市場金利の動きや政策金利の動きに乖離することはなく、トンチンカンな動きがほとんど見られないのは、結局のところプライスリーダーである金融機関が市場金利をベースにして住宅ローン金利を決定しているから、ということでしょうね。
月末になると真っ先に報道されるのが三菱UFJ銀行の翌月の住宅ローン金利ですが、これはつまり既存の銀行の中では三菱UFJ銀行がプライスリーダーになっているということですね。
また最近では、住宅ローン業界の中でネット銀行のシェアが徐々に高まっているわけですが、ネット銀行の金利もプライスリーダー的になっているのは間違いないと思います。ネット銀行の動きに数ヶ月遅れてメガバンクが追随するのが最近の恒例ですからね。
加えて全期間固定金利についてはフラット35の存在も大きいですね。フラット35の金利はほぼ市場金利に即して決まると思いますので結果的に住宅ローン金利全体に市場金利の影響を与える触媒になっているものと思われます。
そんなわけで、住宅ローン金利が決定されるメカニズムとしては「競合する他機関の金利」が大きいものの、出来上がりの住宅ローン金利としてはやはり
・住宅ローン固定金利、フラット35金利 : 長期金利に連動
・住宅ローン変動金利 : 短期金利に連動
と言う理解で良い、と言うことになります。
参考になさってください。