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<編集部からの異論・反論・意見>
さて先日の当欄で、日銀の「主要銀行貸出動向アンケート調査」の結果をご紹介しました。
その中で各金融機関の融資姿勢はこういうことになっておりました。
こちらは今後3ヶ月で貸出スタンス=融資姿勢をどのように変化させるのか、という質問ですが、個人向けについてはこのような見通しということですね。
・個人向け : 15 → 19
つまりすでに相応に積極化しているところ、今後3ヶ月でさらに積極化しようとしているわけですから、住宅ローン利用予定者からすれば大変心強い結果と言えます。企業向け融資が「5〜13」ですから、個人向け融資に対するスタンスがいかに積極的であるかよく理解できます。
>>>住宅ローン需要は減少中?銀行の融資姿勢はどうなるか
この結果を受けて「こうした積極姿勢がずっと続くことを期待したい」と結びました。特に今は日銀のマイナス金利政策によって住宅ローン需要が高まっていますので尚更です。
しかしながら・・・最新の住宅金融支援機構が発表した「民間住宅ローンの貸出動向調査」によると「住宅ローン審査」については必ずしも易しくなっているとは言い切れないようです。「審査内容の変化」について、308金融機関の回答結果はこういうことですね。
・厳格化した : 0.3%
・やや厳格化 : 2.6%
・慎重になった : 13.6%
・時間がかかるようになった : 2.6%
・スピードアップした : 9.9%
・ほぼ変わらない : 63.2%
・やや緩和した : 7.0%
・緩和した : 0.7%
こうして回答結果を並べてみると必ずしも審査の厳格化だけを問うているのではなく、なぜか「スピードアップした」など全然関係ない回答も混ざっていて設問があまり適切ではありませんが、それはともかく大きく分けるとこういうことです。
・厳格化した、慎重になった : 16.5%
・審査基準はほぼ変わらない : 75.7%
・緩和した : 7.7%
つまり全体的には審査基準は変わらないと答えた金融機関が圧倒的ではあるものの、「厳格化した、慎重になった」と回答した金融機関の割合は、「緩和した」と回答した金融機関の割合の2倍以上となっており、均せば「審査基準はより厳しくなった」と言えます。
住宅ローン金利はどんどん低下しているわけですが、それは銀行にとって概ね「利益の減少」と「貸し倒れした場合の余力の低下」を意味します。となると審査基準が厳しくなるのは当然ですね。
この2つの回答結果が「矛盾しない」のだとすると、解釈としては「個人向けの貸出はどんどん増やしていきたいが、住宅ローンの審査は厳しくせざるを得ない」という、アクセルとブレーキの両方を踏み続けないといけない金融機関のジレンマを象徴していると言えるのかもしれません。
ただ金融機関の組織論としては、営業部門と審査部門は分かれているわけで、営業がどんどん新規案件を獲得してくるけれど、審査セクションがばしばし落としていく、というのは現実的に十分両立可能なのかもしれませんね。落とされた顧客からすればたまったものではありませんが。
なお、そうは言いつつ融資姿勢で言えば74%の金融機関は「ほぼ不変」であり、住宅ローン審査基準にしても76%の金融機関は「ほぼ変わらない」と回答していることから、全体的には「どちらも変わらない」というのが多数派ではあります。
ちなみにこの住宅ローンの審査基準について業態ごとに回答結果を分けてみるとなかなか興味深い結果となっています。
つまり一瞥して分かるように、住宅ローンの審査基準が相対的に厳しくなっているのは、第2地方銀行や信用金庫、信用組合、労働金庫など、中小金融機関である、という点ですね。
それとは対照的に「都銀・信託」は全くの不変です。
昨今の金利環境は中小金融機関に厳しい、という話がたびたび報じられておりますので、それが正しいのだとするとこれらの金融機関が審査基準を厳しくするのは当然と言えるのかもしれませんね。
ということは「住宅ローン審査に落ちたら、メガバンクの住宅ローンに申し込め」ということになるのでしょうか?今のところ記者にはそうしたイメージはありませんが・・・。
いずれにしても住宅ローンの審査基準というのは銀行によって、業態によって、日々変化していっておりますので、なるべく複数の金融機関に申し込んで不測の事態に備えていただければと思います。
ちなみにその具体的な審査基準については「重視度が増している項目」として以下のような回答となっております。
上位ベスト5は以下の通りです。
・返済負担率 : 59.5%
・職種、勤務先、雇用形態 : 49.7%
・借入者の社会属性 : 35.5%
・借入比率 : 32.9%
・預貯金や資産の保有状況 : 27.3%
昨年度の回答結果とほとんど変わっていないところを見ると、日本語の問題ですが「本審査で重視度が増している項目」と言うよりは「本審査で重視されている項目」ということなのでしょうね。
審査に落とされた方は、勤務先や社会属性は容易に変更できないにしても、頭金を増やし、予算を減らせば、少なくとも「返済負担率」や「借入比率」は改善できますね。検討してみてください。
最後に審査の所要日数はこのようになっています。
平均は3.2営業日と思ったより短いですが、その中身は「1営業日」から「8営業日以上」まで幅広く分布しています。
やはりこうした点からも繰り返しになりますが複数の住宅ローンに申し込むことは有効だと言えそうです。特に最近は住宅ローンの申し込みが殺到しているようですので、住宅ローン審査の長期化には注意が必要です。
参考になさってください。