他の多くの金融商品と異なり、住宅ローンには審査があります。つまり、銀行からすればあくまで「貸してあげる」という立場だということですね。実際にはその資金は銀行のものではなく預金者のものではあるのですが。
それはともかくとして審査がある以上、結果的には「審査に通った人」と「審査に通らなかった人」に分かれることになります。当然、この二者間の「銀行満足度」は全くあべこべですね。審査に通った方は銀行に感謝する一方で審査に通らなかった方が不満を爆発させるのは必然と言えます。
特に住宅ローン審査においては仮にダメだったとしてもその理由は全く開示されないわけで、よりフラストレーションが溜まりやすいわけですね。当サイトに届く口コミの中でも銀行に対して悪い評価のものはこうした審査に関するものが多い気がします。
記者個人としては、少なくともダメだった理由に関しては開示してもいいような気がするのですがどうなのでしょうね? 仮に返済負担率が高い、といったことなら貯金をして頭金を増やせば通る可能性が高まるわけで、顧客にとっても銀行にとっても悪いことではないと思います。
もちろん審査がダメだった理由が、「会社の信用力が低い」など、本人の努力では改善できなかったり、開示するには憚られるケースもあるとは思いますが・・・。
100歩譲って直接的にNG事由を開示できないのであればせめて事前に審査項目や審査基準を開示してほしいものですね。そうすれば顧客だけでなく銀行も業務の効率化が図れますし、何より双方のストレスが相当軽減されます。銀行関係者の方々はぜひ前向きにご検討ください。
さてそのベールに包まれがちな銀行の審査項目ですが、国土交通省が発表した「平成27年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」においてこのように説明されております。
%は、これらの項目を「考慮する」と回答した金融機関の割合で、前年との対比です。
・融資を行う際に考慮する項目
完済時年齢 : 99.30% → 99.30%
健康状態 : 96.30% → 98.40%
担保評価 : 96.30% → 97.80%
借入時年齢 : 97.60% → 97.50%
勤続年数 : 95.90% → 96.40%
年収 : 94.80% → 95.60%
連帯保証 : 90.30% → 92.60%
金融機関の営業エリア : 91.90% → 92.40%
融資可能額(融資率)/購入の場合 : 91.60% → 90.70%
融資可能額(融資率)/借換えの場合 : 91.50% → 88.40%
返済負担率 : 96.60% → 87.40%
カードローン等の他の債務の状況や返済履歴 : 85.60% → 77.50%
雇用形態 : 74.90% → 77.10%
所有資産 : 24.40% → 68.00%
国籍 : 63.10% → 64.90%
申込人との取引状況 : 64.80% → 59.50%
業種 : 42.50% → 38.40%
雇用先の規模 : 32.80% → 30.10%
家族構成 : 29.50% → 29.90%
性別 : 19.80% → 21.10%
その他 : 10.1% → 6.60%
色々な見方ができると思いますが・・・「回答率95%以上」の項目は実質的に「必須」とすれば、該当する項目は以下の通りです。
完済時年齢 : 99.30%
健康状態 : 98.40%
担保評価 : 97.80%
借入時年齢 : 97.50%
勤続年数 : 96.40%
年収 : 95.60%
これらの中で今すぐにはどうにもできないものは「健康状態」や「勤続年数」、「年収」ですね。時間をかけて改善していくほかなさそうです。
他方、年齢にまつわるものや担保評価については、返済期間を短くしたり、借入金額を少なくするなどの工夫ができれば、すぐにリトライできそうですね。
また95%未満の項目も数多くあるわけですが、90%→80%→70%と回答割合が減るにつれて、これらの項目を「重視しない」もしくは「考慮しない」金融機関が増えていくことになります。
もしこうした項目の中で不安を覚えるものがあれば、複数の住宅ローンに申し込む甲斐はありそうです。
ちなみに前年との比較で言えば回答割合は安定的です。つまり、それぞれの銀行の審査は、ある日いきなり基準が緩くなったり、逆にいきなり厳しくなったりすることはなさそう、ということですね。
その点でも複数の金融機関を利用するというのは有効だと言うことですね。待っていてもお目当ての銀行の審査方針が変わることが期待できないのであれば、とっとと諦めて次の銀行に望みをつないだ方がいいという訳です。
なおそうした中でも昨年の調査から大きく動いた項目がありますね。上記の通り「所有資産」がそれですが、昨年の24.4%から68.0%に大きく躍進しております。
顧客の信用力を計るという観点からは確かにこうした「所有資産」を知るというのは有効で、逆にこれまで重視されてこなかったという方が不思議な気もしますが、一方、現実的には何を聞かれ、どのように回答するのでしょうね?
そもそも30代・40代といった住宅ローン利用客の中心層が、時価100万円や200万円を超えるような価値を持つ資産を持っているケースは少ないでしょうしね。あっても預貯金や生命保険などの金融資産か、自動車などの耐久消費財といったところではないでしょうか。
とすると実際にはそうした所有資産が顧客の信用力に大きな影響を与えるということはなさそうです。多額の金融資産や、超高級車を所有しているのであればそもそも住宅ローンを利用する必要はなさそうですからね。つまりほとんどのケースで、そこそこの所有資産しか保有していないのだとすれば、審査結果に与える影響は軽微だという気がしますがいかがでしょうか?
もちろん、そうではないと多くの金融機関が気づいたからこそ躍進したと言えるのかもしれませんが。
さて話を調査結果全体に戻して、上記のような審査項目の「回答金融機関の割合順」は言い換えれば「重要順」とも言えます。つまりこの結果は審査項目の「重要度ランキング」だ、と言うことですね。
住宅ローン審査で不幸にもNGになった方は当然として、これから住宅ローン審査を受けようとされる方も念のため、ご自身の借り入れ条件をチェックしてみてはいかがでしょうか。
参考になさってください。
<日本住宅ローンプランニング編集部>