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今の住宅ローン金利が市場最低水準にあるのは間違いありません。何と言っても10年の長期金利がマイナス水準にあるわけですからね。それに連動する住宅ローン金利が低下するのは当然です。
■長期金利グラフ(2000年〜)
逆に言えばどこかのタイミングで上昇する可能性があるわけで、そうした金利上昇リスクを強調する専門家は多いですね。
一方で不思議なのが、ではどういった状況で金利が上昇するのかその要因やシナリオをきちんと説明する専門家はほとんど見たことがありません。特にファイナンシャル・プランナーなどには残念ながら「ただ不安を煽るだけ」という方が少なくないように感じます。
もちろん未来のことは誰にも分かりませんので、将来のリスクに対する謙虚な姿勢が大切なのは言うまでもありませんが、他方で「いつか上昇するかもしれないから気を付けてね」だけではあまりに芸がありません。素人でもそれくらいなら言えます。
住宅ローンの金利上昇リスクに警鐘を鳴らすならやはりそのメカニズムや見通しについても一定の知見を述べていただきたいものです。それが専門家としての付加価値だと思うのですがいかがでしょう?
それはともかくとして記者が理解する本格的な金利上昇要因は簡単明快で、「日銀が金融緩和を終了した時」ということではないかと思います。
たとえばアメリカは昨年12月に金融緩和を終了させ、利上げ、つまり金利上昇に舵を切ったわけですが、これはアメリカの景気が堅調だからですね。つまり景気が良くなれば金融緩和が終了し、景気が悪くなれば金融緩和が復活する、という流れなわけで、これは日本も同様です。
ただ金融緩和終了要因が景気回復だけなら漠然としすぎています。たとえば足元の景気も多少弱さがあるとは言え日銀が指摘するように緩やかに回復しているのであれば、金融緩和が縮小してもおかしくありません。
しかし実際には1月末にマイナス金利政策が発表になったように、金融緩和は拡大の一途ですね。なぜでしょうか?
それは日銀が「2%の物価上昇率=インフレ率達成」を目標に掲げているからですね。
言い換えればインフレ率が2%に届くまでは金融緩和はどんどん拡大される一方で、インフレ率が2%を超えればいよいよ金融緩和が縮小し、金利は上昇に向かう、ということです。
メカニズムはともかく、数値自体はとても分かりやすいですね!
では最新のインフレ率がどうなっているかと言うとこうなっています。
つまり総合指数も、生鮮食品を除く総合指数も、食料及びエネルギーを除く総合指数も、すべて2%に全く届かない状態ということです。
過去3年を振り返ると総合指数は+0.4%→+2.7%→+0.8%と推移しており、特に2014年は2%を大きく超えたように見えますが、この消費者物価指数は消費税を含みます。つまり、2014年に消費税が3%増税になったことを踏まえれば+2.7%の上昇は当然ですし、むしろ少ないくらいと言えそうです。
いずれにしても過去3年間の実績をチェックする限り、物価の上昇率は2%に遠く及ばず、さらに足元ではそうした物価上昇の動きがややスローダウンしているように見える点を踏まえれば
・インフレ率2%達成 → 金融緩和縮小 → 金利アップ → 住宅ローン金利アップ
という動きが出てくるのはまだまだ先、ということになります。
では実際のところ物価はいつごろ2%まで上昇するのでしょうか?その参考となりそうな調査結果を日銀が発表していますね。生活意識に関するアンケート調査です。
これは全国の4,000名を対象にした消費者調査で、さすが日銀だけあってなかなかの規模ですが、物価に関する設問をピックアップすると「現在の物価は1年前と比較してどうなっているか?」という問いに対する回答はこのようになっています。
3ヶ月ごとに「物価上昇=インフレ」の実感がどんどん後退していることが分かります。たとえば「かなり上がった」という回答は22.7%→17.1%→14.1%とどんどん減ってきていることが分かります。
最も多い「少し上がった」という回答も3ヶ月前から5%以上減っている一方で、増えているのが「ほとんど変わらない」「少し下がった」「かなり下がった」という回答ですね。
残念ながらこうした統計や指数以外で記者が物価を実感する機会はそれほどないのですが、それでもたとえばガソリン価格の値下がりはかなり印象に残っています。
もしこうした消費者の実感が真実を示しているのだとすれば・・・インフレ率が2%に到達するのはまだまだ先、ということですね。
そもそも「異次元緩和」の目的が、こうした消費者の「物価上昇期待に働きかける」ということなのであればすでに綻びはじめていると言えそうな気もしますが・・・。
次に同じアンケートから1年後の物価に対する見方を抜粋するとこうなっています。
こちらも物価上昇懸念は少しずつ後退していることが分かります。
さらに「5年後」となるとこういう結果です。
さすがに「1年後」と比較すれば、物価が「かなり上がる」と懸念されている方は多いですが、しかしこちらも全体としては物価上昇懸念が徐々に後退していることが分かります。
こうした消費者目線が案外一番信頼できるのだとすれば、当面、物価が大きく上昇し金融緩和が縮小される可能性は極めて低い、ということですね。
なおこちらのアンケート調査ではもう1つ興味深い回答結果があります。「物価下落=デフレ」についての感想を聞いたものでこうなっています。
半年前までは物価下落=デフレは「困ったもの」との回答結果がまるっきり変わり、今では半分近い方がデフレは好ましいこと、と答えているのですね!
なぜそのように心変わりしたのか気になるところですが、いずれにしてもみんなが「デフレの問題」より「デフレの利点」に目を向け始めたということであれば政府としてはだんだん「デフレからの脱却」の旗印を維持するのが難しくなってきます。
これから参議院選挙や衆議院選挙も控えていますしね。
そして万が一「デフレ退治」の手綱を緩めるようなことになれば、物価は下落し、今度は実需の面から金利が低下していくことになります。
そのように考えるとやはり、物価がどんどん上昇し、金融緩和が縮小され、金利が上がり始めていく、というシナリオの可能性は今のところかなり低そうです。
いよいよ人口が減少し始めた日本では物価は永遠に上昇しないような気もしますしね。
そうした点からも現時点では本格的な金利上昇を心配する必要はない、と言えそうです。
なお上記消費者物価指数については今後の住宅ローン金利見通しに影響を与えることから、当サイトでも定期的にチェックしていきたいと思います。
もし物価がそれほど上がらないかむしろ下がるなら住宅ローン金利にとっては「青信号」。逆に物価が上がってくるようであれば住宅ローン金利にとっては「赤信号」ということですね。
参考になさってください。
<日本住宅ローンプランニング編集部>