※当サイトには広告リンクが含まれています。
以前ご案内したように住宅金融支援機構のディスクロージャー資料を元にすると住宅ローンの破綻率はおおよそこういった形になることが分かりました。
・約6%の人が住宅ローンの返済条件を緩和してもらっており、
・約2%の人が住宅ローンの返済ができなくなっており、
・約0.3%の人が住宅ローン破綻し、自宅を手放している。
実感の伴う割合と言えるのではないでしょうか?
>>>住宅ローン破たんは増えている?減っている?本当の破綻率を調べてみた
この数値は住宅金融支援機構の2015年3月期の財務データを元にしていたわけですが、今般2016年3月期のデータが発表されておりますのでそれを元に破綻率の変化を調べてみたいと思います。
日本経済は緩やかに回復していると思いますので破綻率は改善してもいいと思うのですが、果たしてどうでしょうか?
というわけで早速、住宅金融支援機構のリスク管理債権=要するに「住宅ローン返済に困っている人」の割合の推移をチェックするとこうなっています。
・2008年3月期 : 8.37%
・2009年3月期 : 8.10%
・2010年3月期 : 8.49%
・2011年3月期 : 8.48%
・2012年3月期 : 7.80%
・2013年3月期 : 7.47%
・2014年3月期 : 6.67%
・2015年3月期 : 5.87%
・2016年3月期 : 5.12%
見事に順調に減っていますね!素晴らしい。これが上記の通り景気回復に伴うものなのか、あるいは金利の低下によるものなのか、はたまたその両方なのかは分かりませんが、「住宅ローン返済に困っている人」の割合が減っている、という点は素直に歓迎したいと思います。
では次にこの「5.12%」の中身をもう少し分解していくと、まずその内訳はこのようになっています。
・破綻先 : 783億円
・3ヶ月以上延滞 : 938億円
・延滞先 : 3,413億円
・貸出条件緩和先 : 7,308億円
・リスク管理先合計 : 1兆2,442億円
・住宅ローン残高 : 24兆3,015億円
つまり、確かにリスク管理先の残高は1兆2,442億円で、全体の残高24兆3,015億円からすれば5.12%となるわけですが、その大部分は「貸出条件緩和先」であり、たとえば金利を下げたり、返済期間を延ばしてあげたりしながらも返済自体は続いているわけですね。
逆に言えば、完全に「破綻」してしまっているのは文字通り「破綻先」であり、この割合は0.32%ということになります。
住宅金融支援機構が貸し出している住宅ローン「フラット35」のベースとなる機構債の金利は2016年9月は0.37%でしたが、今月=2016年10月のフラット35の金利は最安値で1.06%でした。
つまりマージンがおおよそ0.69%なわけですが、上記の通り破綻率が0.32%にとどまるのであれば、十分カバーできることになります。
一方、「破綻寸前」と言える「3ヶ月以上延滞先」を加えるとこの割合は0.71%に跳ね上がりますが、ただこれがすぐに赤字にならないのは住宅ローンの貸出に際し、その住宅を担保に取っているからですね。本当に住宅ローン破綻すれば、住宅金融支援機構としては住宅を売却して回収を図ることになります。
ではその担保によるカバー率がどうなっているかと言うとこうなっています。
「担保・保証による保全部分」がそれにあたりますが、おおよそ半分くらいがカバーされている、ということですね。
逆に言えば「半分しかカバーされていない」ということであり意外な気もしますが、いずれにしても実際の破綻に伴う損失率は上記「0.71%」のおよそ半分の約「0.36%」と言うことですね。
とするとやはり、現状のフラット35の利ざや水準を維持できれば、そうした損失を十分カバーできる、ということになりそうです。
そうしたわけで上記住宅ローン破綻率の「目安」をアップデートすればこのようになります。
・約3%の人が住宅ローンの返済条件を緩和してもらっており、
・約2%の人が住宅ローンの返済ができなくなっており、
・約0.3%の人が住宅ローン破綻し、自宅を手放している。
少ないような、やっぱり多いような・・・という感じでしょうか。
ちなみに上記、「破綻先+3ヶ月以上延滞先」の担保不足による損失率=約0.36%に注目すると、今の0.5%前後という変動金利の水準は金融機関から見ればほぼ儲けが出ないレベルであり、逆に住宅ローン利用者からすれば「出血大サービス」ということですね。
ぜひ積極的に活用してみてはいかがでしょうか。
なお前回同様、「貸出がほぼ住宅ローンのみ」の銀行のこのリスク管理債権の割合をチェックすると、2015年3月期から2016年3月期でこのように変化しています。
・住信SBIネット銀行 : 0.1% → 0.1%
・ソニー銀行 : 0.2% → 0.2%
いずれも低いですね!住宅金融支援機構の数値=5.12%との差は明らかです。これらの銀行の住宅ローン金利が低い理由の1つは「破綻率が低いから」であるのは間違いなさそうですね。
ただしそのように破綻率が低い理由が上記のように「景気回復に伴うもの」であったり、「金利の低下によるもの」であったりするのであれば、今後景気が悪化したり、金利が上昇する中で風景が一変する可能性はあります。
脅かす気は全くありませんが、今が「割と返済しやすい時期」なのだとすれば、今のうちに積極的に返済を進め、「もしもの事態」や「万が一の状況」に備えていただければと思います。
未来のことは誰にも分かりませんからね。参考になさってください。