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4月となりました。いよいよ2017年度、つまりは新年度が始まるわけですが、このタイミングで新生活、そして新居での生活を始める方も少なくないと思います。そうした方々が新しい環境に1日でも早く慣れ、実り多いスタートが切れることを祈っております。
ただ一方で住宅市場、そして住宅ローン市場の方は、繁忙期がひと段落という状況ですね。再び盛り上がるのはゴールデンウィーク明けという話も聞きますが、実際はどうなのでしょうか。
先週末にはそうした「閑散期入り」を象徴するようなニュースが飛び込んできました。三菱UFJ銀行や三井住友銀行が、これまで大幅に引き下げてきた「10年固定金利」の金利を4月に一気に引き上げ、1年以上前の水準に戻すという内容です。
正直、4月になって金利を多少引き上げてくるだろうな、とは予想しておりましたが、「大幅な金利引き上げ」というのは全くの想定外でした。一体何が起きているのでしょうか?
というわけで、いつものように足元の金利環境をチェックしていきたいと思います。
確かにこれまで下がる一方だった住宅ローン金利が最近はジワジワ上昇してきたわけですが、住宅ローン金利上昇のキッカケは2016年7月末に発表された「追加金融緩和」が期待外れに終わったことです。
さらに2016年11月のアメリカ大統領選挙でトランプ氏が勝利し、2016年12月にアメリカの中央銀行であるFRBが追加利上げを行ったことでアメリカの金利が上昇しています。アメリカの長期金利をチェックしてみるとこうなっています。
昨年末に急上昇していますね。となると世界の金融市場はつながっていますので、日本の金利にも相応の金利上昇圧力となります。
ただ一方で、FRBは2017年3月に再度利上げを行ったわけですが、アメリカの長期金利はほぼ反応せず2.4%前後を維持しています。これはトランプ政権に対する期待が陰り始めたことが要因ではないかと思いますが、いずれにしてもアメリカの金利上昇が一服していることは、日本の住宅ローン利用者にとっては歓迎すべきことですね。
さらに国内の金融政策に目を向けると、日本の金利上昇を抑える働きが期待されるのが、日銀の新たな金融緩和の枠組みである「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」です。これはつまり日銀が直接的に市場金利をコントロールしていくということですが、この枠組みの中で現状の長期金利の操作目標は「0%」に設定されています。今のところその「0%」の意味は「−0.1%〜0.1%の間」と考えられています。
実際、足元の長期金利の動向を見てみると、2016年9月のこの「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」発表以降、その「−0.1%〜0.1%の間」に収まっていることが分かります。
2月3日には長期金利は一時「0.15%」まで上昇し、節目である0.1%を超えましたが、日銀がすかさず「無制限の指値オペ」を実施したことですぐに0.1%以下の水準まで低下しました。本日の長期金利も「0.065%」ということで、やはり「−0.1%〜0.1%」の範囲内です。
この日銀の「金利コントロール力」が確かなものであるのなら、アメリカの長期金利が今後どれくらい上昇しても、あるいは他の金利上昇要因が現れたとしても、日本の長期金利は+0.1%を超えることはなく、住宅ローン金利も大きく上昇しない、ということになります。
さらにこの1〜2ヶ月はその長期金利もジワジワ低下しているように見えます。このまま落ち着いて推移してくれることを期待したいと思います。
つまり。
市場金利の動向をチェックする限り、そうした「外部要因」で住宅ローン金利が上昇するような状況ではないということですね。とするとやはり、一部の銀行が住宅ローン金利を引き上げてきたのは「閑散期に入りキャンペーン金利が終了した」ということではないかと思いますが、具体的に三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行の大手銀行=メガバンクの4月の住宅ローン金利はこのような結果となっています。
・変動金利 : −0.072%引き下げ〜据え置き
・10年固定金利 : +0.05%引き上げ〜+0.50%引き上げ
・20年固定金利 : −0.10%引き下げ〜+0.10%引き上げ
・30年固定金利 : 据え置き〜+0.08%引き上げ
全体的に引き上げられておりますし、10年固定金利の「+0.50%引き上げ(三菱UFJ銀行)」が目につきますが、ポイントはそこではなく「各銀行の対応がバラバラ」ということでしょうね。
その10年固定金利も「+0.05%引き上げ」から「+0.50%引き上げ」までかなり幅が広いわけですし、変動金利に至ってはむしろ「−0.072%引き下げ」と金利を下げている銀行すらあります(りそな銀行のネット専用借り換え金利)。
こうした動きから言えることは、「4月に住宅ローンをお休みする銀行=三菱UFJ銀行、三井住友銀行」と「自然体の銀行=みずほ銀行」、そして「むしろ積極的な銀行=りそな銀行」と言った形で、きちんと各銀行のスタンスを理解することが重要だと言えそうです。メガバンクに限らず言えることですが。
なおその今月最もドラスティックな変更だった三菱UFJ銀行の10年固定金利(最優遇金利、保証料含まず)の推移をチェックするとこうなっています。
金利水準としては、マイナス金利政策開始前の2016年2月にまでさかのぼるわけで「1年2ヶ月ぶり」なわけですが、上記の通り環境からすればここまで金利を引き上げる必要はありません。
閑散期に入ったということはありますが、三菱UFJ銀行のこれまでの金利設定を思い出すと、「繁忙期の前にあえて少し金利を引き上げる」という行動パターンもあったと記憶していますので、6月ごろには再度金利をガッツリ引き下げる腹積もりなのかも・・・しれませんね。
どちらにしても住宅ローン利用者からすれば迷惑な話ではありますが。
ちなみに先日の当サイトのコラムでは「4月の住宅ローン金利は、全体的には据え置きも需要期終了により銀行によっては多少の引き上げあり」と予想しました。
結果的には上記の通り据え置きとされた金利はあるものの、大幅に上昇したケースもあり、今月も「当たらずとも遠からず」といった感じでしょうか・・・精進したいと思います。
>>>[4月の住宅ローン金利予想] 全体的には据え置きも、需要期終了により多少の引き上げあり
[2017年4月の住宅ローン金利]
上記ご案内したように、4月の住宅ローン金利は概ね
・変動金利 : 据え置き
・10年固定 : 引き上げ
・20年年固定 : 据え置きor引き上げ
・30年年固定 : 据え置きor引き上げ
と言った動きになりました。
>>>今月の住宅ローン金利比較はこちら
具体的な金利をチェックしていくと、フラット住宅ローンのメイン商品であるフラット35の金利は3月と比較して据え置きとなっています。より期間の短いフラット20の金利も据え置きですね。
>>>最新のフラット35の金利はこちら(楽天銀行)
先日のフラット35の金利予測では
・フラット20金利 : −0.01%の引き下げ
・フラット35金利 : −0.01%の引き下げ
と予想しましたが、こちらもわずかに外してしまいました・・・いつか予想の精度を上げたいものです。
>>>[4月のフラット35金利予想] 前月比−0.01% フラット35表面金利1.11%?
次に民間の住宅ローンをチェックすると、いつものように当サイトで人気の住信SBIネット銀行と、日本最大のメガバンクである三菱UFJ銀行の、3月と4月の住宅ローン金利の推移はこのようになっています。
◆住信SBIネット銀行(住宅ローンWEB申込コース)
・変動金利 : 0.447% → 0.447% (据え置き)
・10年固定 : 0.500% → 0.560% (+0.06%)
・20年固定 : 1.060% → 1.060% (据え置き)
・30年固定 : 1.280% → 1.280% (据え置き)
>>>最新の金利はこちら
◆三菱UFJ銀行(保証料を加えた実質金利)
・変動金利 : 1.075% → 1.075% (据え置き)
・10年固定 : 0.750% → 1.250% (+0.50%)
・20年固定 : 3.000% → 2.900% (−0.10%)
・30年固定 : 1.550% → 1.550% (据え置き)
>>>最新の金利はこちら
何度もご案内しているように、やはり今月の三菱UFJ銀行の+0.5%金利引き上げは「事件」ですね・・・。
さて住信SBIネット銀行の住宅ローンに話を戻すと、同行は「ネット専用住宅ローン」の販売に注力しています。これは契約相手が住信SBIネット銀行ではなく、親会社である三井住友信託銀行となるもので、より安心感を感じる方は少なくなさそうです。
引き続きこうした「低金利+安心安全」な住宅ローンを積極的に提供していってほしいものです。
さてこちらも当サイトで人気の新生銀行の4月の住宅ローン金利はと言うと以下の通りです。
◆新生銀行
・変動金利 : 0.480% → 0.550% (+0.07%)
・10年固定 : 1.050% → 1.050% (据え置き)
・20年固定 : 1.300% → 1.450% (+0.15%)
・30年固定 : 1.900% → 1.900% (据え置き)
金利上昇が目立つことから、パっと見では4月は「お休み」かなと思ってしまいますが、恒例となりつつある「全金利タイプ−0.15%金利優遇キャンペーン」が実施されており、それを加味すれば金利はこのようになります。
・変動金利 : 0.550% → 0.400% (−0.15%)
・10年固定 : 1.050% → 0.900% (−0.15%)
・20年固定 : 1.450% → 1.300% (−0.15%)
・30年固定 : 1.900% → 1.750% (−0.15%)
なぜか20年固定金利だけは「行って来い」で変わらずですが、それ以外は前月と比較してしっかり下がっていますね。引き続き積極的であるというのは間違いありません。
>>>最新の金利はこちら
なお新生銀行は、万が一の時の保障や返済停止機能を組み合わせた「安心パック」を付加するなど、金利競争以外のサービス拡充にも注力しています。住宅ローンの金利や手数料だけでなく、そうした付加価値についても目を向けてみると、また違った住宅ローン選びができるかもしれませんね。ちなみにこのサービスは日経新聞が選定した新商品・新サービスの中で、最優秀賞を受賞したようです。
[2017年5月以降の住宅ローン金利の動向]
今後の住宅ローン金利の動向ですが、上記の通り当面は日銀の「金利操作」によって長期金利はこれまでのように概ね「−0.1%〜0.1%」の範囲内で推移するものと思われ、金利環境からすれば今後の住宅ローン金利は大きく上昇することも大きく低下することもなく、「細かな金利変動にとどまる」と考えられます。
とすると問題は、今月「お休み」している銀行がいつ再度営業強化に乗り出してくるかがポイントとなってきます。冒頭ご案内したように「ゴールデンウィーク明け」という噂もありますが、遅くとも6月や7月の夏のボーナスシーズンには再び金利を引き下げてくるのではないでしょうか。
また、そうは言いつつりそな銀行や新生銀行のようにむしろ住宅ローン金利を引き下げて積極攻勢に出てくる銀行もあるわけで、その点では全体的に金利が下がってくるのはもう少し先でも、個別には金利を下げてくる住宅ローンが出てきそうです。
当面は全体的な金利動向よりも、「個別の銀行の貸し出しスタンス」がより重要だと言えそうですね。
ちなみに。
今後の「本格的な」金利上昇の可能性を考えると、カギとなるのは物価です。政府や日銀は、物価上昇=インフレの状態にするためにあらゆる金融政策を取っているわけですが、景気回復と相まっていよいよ本当にインフレになってくれば、頼みの綱である「異次元の金融緩和」も縮小に向かいますので、実需と金融政策の両面から金利上昇の機運が高まることになります。
では足元の物価動向はと言うと、多少上昇しているものの金融緩和を縮小・終了させるにはまだまだ力不足です。
そうでなくても少子化が続く日本で本当にインフレとなるのか疑問を感じなくもありません。最近の物価動向は以下の通りです。
政府や日銀が目指すように日本経済が本格的なインフレ経済に変貌するとしても、時期としてはかなり先のことであるのは間違いなさそうですね。
実際、新たな金融緩和が次々と出てくるのもインフレ誘導政策がうまくいっていない何よりの証拠です。
ここでいつものように長期金利の2000年からの推移を振り返ってみたいと思います。
■長期金利グラフ
このグラフから「金利上昇の教訓」を探ろうとすれば、前回の景気回復が始まった2003年に長期金利は0.435%の最低金利をつけた後、急速に上昇し、1.5%前後にまで実に1%近く上がったことが分かります。
仮に今後、景気回復が順調に進むのであれば、金利についても同じ様に+1.0%程度上昇する可能性がある、ということを示唆しております。
今のところ、慌てたり、焦ったりする必要は全くありませんし、逆に低金利が常態化した日本では「金利が上昇したとしてもその程度」とも言えるわけでむしろ安心しても良いという気すらしますが、とは言いつつ住宅ローン金利が低いのに越したことはありません。
住宅ローンをご検討の方は、そうした将来的な金利上昇リスクを頭の「片隅の片隅」に入れて、相対的に金利が低い間に着実にご検討を進めていただければと思います。今月=4月も全体的には住宅ローン金利が空前の低金利であるのは間違いありませんし、繰り返しで恐縮ですが、個別にも金利を引き下げている銀行があるわけですからね。
[今月の住宅ローン金利レンジ]
最後に、今月の具体的な住宅ローン金利のレンジをチェックするとこのようになっています。
■2017年4月の住宅ローン金利状況(実質金利)
・変動金利 :0.400%〜2.675%
・10年固定:0.500%〜3.800%
・20年固定:1.060%〜2.900%
>>>今月の住宅ローン金利比較はこちら
やはりこうして見ると、今まで考えられなかったような、極めて魅力的な金利水準ですね!
長期金利も住宅ローン金利も「史上最低水準」であるのは間違いありません。多少の金利変動に一喜一憂せず、着実に超低金利のメリットを享受いただければと思います。
参考になさってください。
<日本住宅ローンプランニング編集部>