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当サイトでは毎月半ばになると来月の住宅ローン金利を予想しています。当たる時も当たらない時もあるわけですが、当たらない時というのは概ね「各銀行が市場金利の動きとは異なる決定をした場合」ですね。
特に1〜3月の住宅市場が盛り上がる時期、そして翌4月の「繁忙期」が終わったタイミングで住宅ローン金利が大きく動くことがあり、金利を予測している立場としては悩ましい事態となります。
要するに住宅ローン金利は「市場金利の動き×住宅ローン需要の動き」の相互作用によって決まるということです。
さらに、ある銀行が住宅ローン金利を変動させると競合銀行が追随するという動きも散見されます。その点では「市場金利の動き×住宅ローン需要の動き×競合銀行の動き」の3つの相互作用によって決まると言えるのかもしれません。
当たり前と言えば当たり前なのかもしれませんが、デジタルで決まっていく世界ではなく、競合銀行の思惑や顧客の顔を思い浮かびながら決めていく「ファジーな世界」ということなのでしょうね、きっと。
そんな銀行内の住宅ローン金利の決定プロセスが垣間見える記事を日経新聞が発信していますね。御覧になった方も多いかもしれませんが、エッセンスを抜き出すとこういうことのようです。
・大元のベース : 市場動向をチェックしている部署から数週間先の長期金利の予測値などをはじき出してもらう。
・月半ば : 国債の利回りの動向に目配りしつつ、金利水準に応じた採算性を計算。足元の不動産販売の情報も集め翌月の住宅ローンの需要がどうなるのかを見極める。
・下旬 : 値決めの局面。ライバルの動向については、公表数字だけでなく、期間限定の優遇キャンペーンなどの広告などから、実際どのくらいで貸しているのかを推測。月末の最終営業日まで決まらないこともある。
毎月半ばの市場金利の水準と翌月の住宅ローン需要の見通しから「大枠の金利案」を決め、下旬に他行の動向を意識しながら最終決定する、ということですね。まさに住宅ローン金利が「市場金利の動き×住宅ローン需要の動き×競合銀行の動き」によって決まることが、ハッキリわかります。
言い換えれば翌月の住宅ローン金利を予測するためには、この3つの動向を頭に入れておかないといけない、ということですね。もちろん、実際に毎月金利を予測している方はほとんどおられないでしょうけれど・・・。
ではこの3つの要素の、住宅ローン金利決定に与える影響力というのはどれくらいの比重になっているのでしょうか?直感的にはこういう感じのように思います。
・市場金利の動き : 50%
・住宅ローン需要の動き : 10%
・競合銀行の動き : 40%
あくまで感覚的なものですが・・・。
気になる「正解」ですが、確か住宅金融支援機構の調査でこの金利決定に関するアンケート結果があったかと思いますので探してみるとありました。このような回答結果ですね。
毎月、微妙に変動し、かつ注目を浴びているのは「固定期間選択型」ですのでその金利決定要因を抜き出すとこうなります。
・競合する他機関の金利 : 95.9%
・長期国債流通利回り : 26.8%
・スワップ金利 : 32.1%
・長短金利差 : 7.2%
・無担保コールレート : 4.4%
何とほぼ100%の金融機関が競合金融機関の金利を参考にしている一方で、7割前後の金融機関は「長期国債流通利回り」や「スワップ金利」と言った市場金利を全く考慮していないということですね!
金融機関としてそんなことでいいのでしょうか・・・もしかすると素人である記者の方が市場金利をチェックしているかもしれません・・・。
それはともかくとして、この調査結果からわかることは何でしょうか?
まず素直に感じることは、 「住宅ローン金利が市場金利の動きと関係なく動く可能性がある」という点です。7割の金融機関が市場金利を考慮していないわけですから、そう推測するのも当然かと思いますが、ただ実際にはさすがにそういうケースは少ないと思います。下手すれば赤字になってしまいますからね。
ではなぜ市場金利を考慮していないのに突飛な金利にならないかと言えば、それはおそらく各地域や各業態に「プライスリーダー」たる金融機関がいて、そのプライスリーダーに追随しているからなのでしょうね。
そしてそのプライスリーダーが適正な値付けをしている限り、追随する金融機関の住宅ローン金利も「概ね適正な水準」に落ちつくことになります。
ただし。
もしそうなのだとすれば、追随するフォロワーたちは常にプライスリーダーの住宅ローン金利の動きに「一歩遅れる」可能性が高いということですね。事前に翌月の住宅ローン金利を発表してくれればいいですが、ほとんどの金融機関の金利発表は月末や月初かと思いますのでそれを待っていると間に合わない可能性も出てきます。
つまりプライスリーダーが大きく金利を動かした時に、フォロアーの金利変動は「1ヶ月遅れる」のではないか、ということです。
実際、この4月に三菱UFJ銀行が10年固定金利を大きく引き上げた時も、すぐに追随する銀行はそれほど多くなく、翌5月に金利を引き上げてきた銀行が多かったように記憶します。
その三菱UFJ銀行は5月に再び10年固定金利を大きく引き下げる、というオチまでついておりましたが・・・。
そうしたわけで、仮説に基づく解釈ではありますが、「住宅ローン金利は概ね市場金利の動きに影響を受けるが、その反映のタイミングは金融機関によって1ヶ月程度のタイムラグがある」と結論づけておきたいと思います。
ちなみに現在の金利環境について補足しておきますと、日銀のいわゆるイールドカーブコントロールによって長期国債流通利回り=長期金利は概ね「−0.1%〜0.1%」の範囲内に留まるよう管理されております。
つまり、住宅ローン金利が上記の通り「概ね市場金利の動きに影響を受ける」のであれば、当面は「大きく上昇することも大きく低下することもなく、小動きにとどまる」ということです。
実際、その通りだと思いますが。
言い換えれば、「翌月の住宅ローン金利予測」が今ほど簡単な状況も、今ほど重要性が失われている状況もない、ということですね(苦笑)。
そうした「逆風」にめげず、金利予測の精度を高めていきたいと思います!
参考になさってください。
<日本住宅ローンプランニング編集部>