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これまで「全期間固定金利はかなりの人気」という、あり得ない調査結果を流布し続けたのが住宅金融支援機構です。フラット35の元締めとして「固定金利人気」を醸成したかったのでしょうけれど、ウソはいけません。
そうした「大本営発表」と、それを何の検証もせずに垂れ流すメディアに怒り続けてきた記者ですが、その住宅金融支援機構もさすがに反省したのか前回のアンケート調査から改心し、より実態に即した納得感のある調査結果を発表するようになりました。時間がかかりましたねぇ。。。
ではその最新のアンケート調査=「民間住宅ローン利用者の実態調査」では、「住宅ローン金利タイプ別構成比」はこのように発表されています。
今回の結果をざっくり言えば、
・変動型 : 5割
・固定期間選択型 : 4割
・全期間固定型 : 1割
ということで・・・まぁ、そんなものでしょうね。以前は
・変動型 : 4割
・固定期間選択型 : 2割
・全期間固定型 : 4割
と言っていたわけですから、よくまぁそこまで話が盛れたものです。
なおそのように数字を「盛ってしまった」理由として、上記グラフにも言い訳がましく書き込まれているように、調査会社A社、B社、C社の違いであるとのことです。つまりは「調査会社のせいですよ、住宅金融支援機構のせいではありませんよ。」と言っているわけですが、もちろんそんなことはありません。
なぜなら住宅金融支援機構自身が、金融機関からの回答結果をもとにこういった「金利タイプシェア」の推移を発表しているからです。
つまり、住宅金融支援機構は「本当は」変動金利タイプがおおむね6割前後で推移していることを知っていたわけですね。ちなみに上記調査結果では全期間固定金利はわずか5%前後のシェアです・・・。
全期間固定金利はほとんど全く人気がないことを知っていながら、冒頭の調査では全期間固定金利のシェアは「4割前後で時に1位の人気」と強弁していたわけですから罪は重いです。
単なる無知ならまだしも、上記の通り住宅金融支援機構はフラット35の販売元ですから、セールス支援の意図があったことは明白です。その点では「調査会社B」は優秀だったのでしょうね・・・あくまでクライアントに対して、という意味ですが。
とまぁ、いつものように住宅金融支援機構の「プロパガンダ体質」を批判するのはこれくらいにしておきまして、今回の「民間住宅ローン利用者の実態調査」の中身を見ていきたいと思います。今回の調査は2016年10月から2017年3月までの新規借り入れを対象にしているわけですが、月別の内訳をみるとこうなっています。
全体的には大きな変化はないもののあえて言えば、2月に変動型のシェアが下がった後、3月に大きく伸びていることが分かります。というわけでこの時期の長期金利の推移をチェックしてみるとこうなっています。
細かく見れば長期金利は2月初旬にピークアウトした後、3月にかけてわずかに低下していることが分かります。とすると「1月から2月にかけての金利上昇に不安を感じた利用者が2月は固定金利を選択した一方、2月から3月にかけての金利低下に安心した利用者が3月は変動金利を選択した」と説明することはできます・・・が。
上がった、下がったと言ってもその差は0.05%程度ですからね!0.5%ではなく、0.05%です。利用者の金利タイプを大きく変える力はありません。そもそもこれまで金利は大きく変化してきたにも関わらず、その金利タイプ割合はそれほど変化してこなかったわけですからね。その点では上記2月・3月の金利タイプの変化は・・・単なる調査上の誤差、ということなのでしょう。
今回の調査結果は素直に「変動型>固定期間選択型>全期間固定型という人気順である」と把握しておけばよいのではないかと思います。
なお、回答者1,500人の今後の住宅ローン金利見通しはこのようになっています。
「現状よりも上昇する」と考えている人が固定金利を選んでいるわけで回答結果と選択されている金利タイプの辻褄はあっていますね!
しかし着目すべきはその点ではなく、全ての金利タイプグループにおいて、「住宅ローン金利は現状よりも上昇する」という回答が増えている点です。確かに上記グラフの通り長期金利は昨年8月から右肩上がりで上昇してきましたので、そのように考える人が増えていてもおかしくはありません。
日銀の一般消費者を対象にした「生活意識に関するアンケート調査」においても、金利観に徐々に変化が出ていることが分かります。
そのように考えるとここ最近の市場金利の変化が、住宅ローン金利の変動などを通じて住宅ローン利用者に着実に影響を与えているのでしょうね。
とは言いつつ。
そうした心境の変化をもってしても、上記の通り全体的に見れば「選ばれている金利タイプに大きな変化はない」わけで、今回の調査の最大のポイントはその点にあるのかもしれません。
その理由を推察すると、 「これから金利が上昇する可能性はあるものの、それほど大きな金利上昇にはならない」と解釈しているということでしょうか。確かに足元の低い物価上昇率を見ると、異次元緩和はまだまだ続く可能性が高く、それはつまり住宅ローンの低金利もまだまだ続くということですね。
だとすれば結果的には「変動金利が最も有利」なわけで、人気が継続しているのもうなずけます。
参考になさってください。