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これまでの住宅ローン金利の推移を振り返ってみると、異次元緩和やマイナス金利政策などの影響もあって「史上空前の水準」まで低下しております。
そうした低金利は現在でも維持されているわけですが、一方、住宅ローン金利の変化を細かく見れば昨年の夏くらいから上昇しているのも事実です。これはもちろん市場金利が上昇しているからですが、ではなぜそのように市場金利が上昇しているかと言えば理由は大きく2つです。
まず1つ目は、日銀の新たな「金利操作付き金融緩和=イールドカーブコントロール」によって、長期金利の操作目標が0%前後=−0.1%〜+0.1%に設定されたこと。2つ目は、昨年11月のアメリカ大統領選挙でトランプ氏が勝利したことから、アメリカの金利が急上昇し、それに連動する形で日本の金利も上昇したこと、ですね。
実際に長期金利の推移をチェックしてみるとこうなっています。
確かに昨年7月末を底に金利が上昇してきていることが分かります。そのように市場金利も住宅ローン金利もジワジワ上昇している中で、住宅ローンの貸し出しが増えているのか減っているのか気になるところですね。
普通であれば「向かい風」ということになりますが、そうした貸し出し動向を把握するために定点観測している2つのデータ=3か月に1度発表される日銀の「主要銀行貸出動向アンケート調査」と住宅金融支援機構の「フラット35の申請結果」の最新の数値をチェックしてみたいと思います。
ちなみに前回の記事はこちらです。
>>>金利上昇で住宅ローンは減った?2017年第1四半期の銀行貸出動向とフラット35実績
まず前者の日銀の「主要銀行貸出動向アンケート調査」ですが、調査期間が2017年6月9日〜2017年7月10日となっており、2017年第2四半期=4月〜6月の動向が概ね反映されております。
では気になる個人の資金需要=ローン需要を見てみるとこのようになっています。
「個人向け」の欄を見てみると指数は前回1月の「7」から「2」へやはり低下しています。「やや減少」したと回答した金融機関が3つ(6%)あることも印象的ですが、全体的に個人の資金需要がスローダウンし始めているのもは間違いなさそうです。
次にその個人の資金需要を「住宅ローン」と「消費者ローン」に分けてみるとこうなります。
こちらはさらにスローダウンが鮮明で、住宅ローンは前回「7」だったものが「0」と完全に増加が止まっていたことが分かります。金融機関の内訳はこういうことですね。
・やや増加 : 6%
・横ばい : 88%
・やや減少 : 6%
ほとんどが「横ばい」ということですし、「やや減少」と同じ分だけ「やや増加」もあるわけですからそこまで悲観する必要もないのかもしれませんが、住宅ローン金利が順調に低下する中、拡大を続けてきた住宅ローン需要がここに来て曲がり角を迎えつつあるというのはかなり印象深い調査結果と言えそうです。
ちなみに上記グラフから最近の「需要マイナス局面」を振り返ってみると、「2014年半ば」と「2015年秋」の2回だったことが分かります。前者は消費税が5%から8%に上昇した時、後者は結局延期されたものの消費税が8%から10%へ上昇予定だった時で、その点ではどちらも「増税前の駆け込み需要の反動減」だったわけですね。
とすると、2015年10月の消費税増税はまさにこの2017年の4月に延期されていたわけですから(結局、再延期となりましたが)、今回の落ち込みの原因も「金利上昇」ではなく、意外と「増税前の駆け込み需要の反動減」の可能性も高そうです。
仮に「反動減」なら過去の例を見ても分かるようにほどなくして需要は元に戻ることになりますが、一方、金利上昇を背景にした需要後退であれば「金利次第」ということになります。果たして今後の住宅ローン需要はどうなるのでしょうか?
ちなみに金融機関自身の見通しはこのようになっています。
前回の予測が「3」だったものが今回は「1」ということですから、引き続き慎重な見通しということですね。
また今回の消費者ローンも含めた個人の資金需要が「2」だったわけですから「1」ということはさらに需要が後退するということですし、今回「0」だった住宅ローンについては「マイナス予測」という可能性すらあります。
だとすると金融機関は、今回の住宅ローン需要後退が一時的な事象ではなく、もっと継続的な事象と捉えているということですね。
もしそれが正しいのだとすれば業界関係者からすれば不安の種と言えますが、ただ住宅ローン利用者の立場から言えばそうした需要後退はさらなる「貸し出し競争の激化」が期待できるわけで、場合によってはより好い条件を引き出せる可能性もあります。
手続きがこれまでより早く済むかもしれませんしね。前向きに捉えていきたいと思います。
最後に金融機関の貸し出しスタンスの変化をチェックするとこうなります。まず過去3ヶ月はこう。
意外にも個人向けは前回の「12」から「8」に後退していますが、ただこの数字の中には「消費者ローン」が含まれており、今銀行の消費者ローンには明らかに逆風が吹いていますからね。その点では住宅ローンの貸し出しスタンスが後退していることはないような気がするのですがいかがでしょうか。
実際、DIとしては後退していても、内訳を見れば「慎重化」させたと回答した金融機関がありませんのであまりネガティブに捉える必要はなさそうです。
次に今後3ヶ月はこう。
こちらも前回予想の「9」から「8」に後退していますが、コメントとしては同様です。今回の結果の「8」からも変わらないわけですしね。
繰り返しになりますが、今回の調査結果のポイントは「住宅ローン需要の後退が一時的なものなのかそうでないのか」という点です。3ヶ月後の次回調査に注目です。
さてここまでが日銀の「主要銀行貸出動向アンケート調査」結果ですが、もう1つの定点観測データである後者の住宅金融支援機構の「フラット35の申請結果」をチェックしたいと思います。
まず前回の2017年1−3月期の申請・実績戸数は前年同期と比較するとこのようになっていました。
・フラット35申請戸数 : 33,167戸→29,290戸
・フラット35実績戸数 : 24,126戸→26,683戸
申請戸数は前年同期比で減少する一方、実績戸数は増加するという矛盾を見せていますが、恐らく実態としては申請戸数の推移の方が正しく、2017年1−3月期のフラット35の申し込みはスローダウンしたということですね。
では今回の2017年4−6月期の申請・実績戸数はと言うとこういうことになります。
・フラット35申請戸数 : 37,504戸→31,040戸
・フラット35実績戸数 : 29,635戸→22,236戸
今回はスッキリ、申請個数も実績個数も仲良く「前年割れ」となりました。しかも結構な落ち込みですね!やはり2017年4−6月期=第2四半期はフラット35に限らず住宅ローン全体の申し込みがスローダウンしたということなのでしょうね。
ちなみにこれまでジワジワ上昇してきた住宅ローン金利ですが、市場金利は概ね日銀の目標値に近づいており、更なる金利上昇余地は小さくなっています。仮に今回の住宅ローン需要の後退の主因が「金利上昇」だったとしても、住宅ローン金利がイールドカーブコントロール下の「上限」に抵触すればそこから上昇することはほとんどなくなります。
とするとどちらにしても早晩、住宅ローン需要は「巡航速度」に戻っていくことになりそうですね。次の増税予定時期である2019年10月まではまだかなりの時間がありますし。
参考になさってください。
<日本住宅ローンプランニング編集部>