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これまで長年にわたり住宅ローン金利が低下してきた背景には、日銀が積極的な金融緩和を進めてきた、という点があります。
金融緩和とは、中央銀行が政策金利を直接的に引き下げることに加え、国債や株式の購入などを通じて金融市場に大量のマネーを投下して、世の中の金利を引き下げていく政策です。
景気が悪くなれば日銀に限らず世界の中央銀行もこうした金融緩和を行うわけですが、それは金利が下がれば企業の経営がラクになり、儲けが増え、従業員の給料も増え、さらに借り入れをして投資を増やすという好循環が生まれることを期待しているわけですね。
で、翻って見れば日本経済は80年代のバブル崩壊以降、失われた10年、もとい失われた20年と言われるほどの景気低迷となりました。そうした中で日銀は断続的にずっと金融緩和を続けざるを得ませんでした。
とするとそれに連動して金利が低下するのも当然ですね。超長期で長期金利の動向を振り返るとこうなります。
局所局所では金利が上昇する局面があったものの、全体を通してみれば20年どころか30年近く金利が低下してきていることが分かります。2016年はついにマイナス水準に到達しましたからね!
こうした金利低下の背景には上記の通り日銀の金融緩和があり、それが結果として住宅ローン金利の低下につながっているわけですが、逆に言えば、今後住宅ローン金利が上昇する時というのは簡単で、「金融緩和が終了する時」ということになります。
その「金融緩和が終了する時」というのも簡単で、「景気が十分に回復した時」ということになります。
そして幸いなことに、今ではその「景気が十分に回復した時」 という判断材料もまた、日銀から明確に示されましたので迷うことがなくなりました。では具体的にどういう基準が示されたかと言うとこうなります。
・インフレ率=消費者物価指数の上昇率が安定的に+2%を達成できるようになった時
要するにインフレ率が2%を安定的に超えてくれば、いよいよ金融緩和は終了し、金利は上昇に向かうことになります。
逆にインフレ率が2%を下回ればまだまだ金融緩和は継続・強化され、金利は低いまま、そして住宅ローン金利も低いまま、ということですね。
とても分かりやすいです。
ただし。
最近個人的には、いつまで経っても達成できないこの「インフレ率2%目標」について、もう少し現実的なものに見直される可能性があるのではないか?という気もしています。
そのターニングポイントとなりそうなのが、来年4月の日銀総裁交代のタイミングですね。そして仮に日銀のインフレ目標が見直されれば基本的には金利上昇圧力となるものと思います。
もちろんインフレ目標が見直されたとしても、日銀としてインフレ経済の実現に向けて努力することに変わりはありませんので過度に心配する必要はありませんが、今後しばらくは消費者物価指数の推移だけでなく、来年の日銀総裁人事や、それに呼応して日銀の金融緩和政策に変化があるのかどうかという点にも注意しておいた方が良さそうです。
ちなみに民進党代表戦に出馬している前原・枝野両氏はインフレ目標を「1%に」と主張しているようですね。1%・・・グッと現実的となり、座り心地が良さそうに感じるのは記者だけでしょうか?
この日銀の政策変更の可能性については当サイトでも積極的に情報発信していきたいと思います。
さて本題に戻りまして、本日8月25日には2017年7月分の消費者物価指数が発表となったわけですが、その結果は前月と比較してこうなっています。
・総合 : +0.4% → +0.4%
・生鮮食品を除く総合 : +0.4% → +0.5%
・食料及びエネルギーを除く総合 : 0.0% → +0.1%
どれも2%に遠く及びません・・・。
また前月と比較すると「生鮮食品を除く総合」や「食料及びエネルギーを除く総合」はわずかに上昇しているものの、総合指数は「変わらず」ということですから、物価上昇圧力は引き続き弱いです。
ちなみに上記指数から「生鮮食品」と「エネルギー」の影響を逆算するとこう変化していることが分かります。
・生鮮食品 : 0.0% → −0.1%
・エネルギー : +0.4% → +0.4%
・食料及びエネルギーを除く総合 : 0.0% → +0.1%
これまで物価上昇を牽引してきた「生鮮食品」の価格はついにマイナスとなった一方で、前月に引き続きエネルギー価格がプラスを維持しています。
また、食料及びエネルギーを除いたコア指数も久しぶりにプラスとなっておりますが、ただ上昇幅は+0.1%とごくわずかですので今のところ心配はいりません。
なおエネルギー価格が上昇している理由は以下の通りかと思います。
・原油価格が上昇しているか
・円安になっているか
・その両方か
ということですが、念のためこれまでの動きをチェックしてみるとまず原油はこう。
確かに1月〜2月にかけて上昇しているものの、その後は概ね低下傾向です。とすると、足元のエネルギー価格の上昇傾向も徐々に後退していきそうですね。
次に米ドルはこう。
こちらも同様の動きですね。年末に大きくドル高円安となった一方で、足元では110円前後まで円高が進んでいます。円高となれば国内のエネルギー価格の下落要因となってきます。
だとすると最近の、エネルギー高が引っ張る形での物価上昇は早晩終息していくということですね。
また、多少プラスと言っても全体の物価上昇率はまだまだ低く、「目標である2%に遠く及ばない」という点に変わりはありません。
ここでより本質的な、「食料及びエネルギーを除く総合指数」=コア指数の推移を振り返ってみるとこうなっています。
・2012年 : −0.4%
・2013年 : −0.2%
・2014年 : +2.2%
・2015年 : +1.4%
・2016年 : +0.6%
・2017年7月 : +0.1%
年毎のトレンドで見ても2014年をピークに徐々に低下しています。繰り返しになりますが、当面は「インフレ目標達成に伴う金融緩和解除→金利上昇」と言うことはなさそうです。
そうしたわけで住宅ローンの借り入れ・借り換えをご検討の方は、物価が低迷し、日銀が強力な金融緩和を実施している間に、より有利な条件で利用されることをオススメしたいと思います。
上記の通りもし来年4月を目途に日銀のインフレ目標が多少見直される可能性があるとするなら尚更ですね。
>>>今月の住宅ローン金利比較ランキング
ではここでこれまでの消費者物価指数の動向をチェックしてみたいと思います。まず1971年からのグラフがこちらです。
オイルショック時の狂乱物価が鮮明ですが、90年代以降物価は上がりも下がりもしない状態が続いていることが分かります。
次に2000年以降でチェックするとこうですね。
やはり0を少し下回るデフレの水準をウロウロしてきたことが分かります。一時的に上昇してもその後しっかり反動が来ていますね。
なお、この表を見ると「2014年には2%を大きく上回っているではないか!」と驚かれるかもしれません。
しかし安心してください。その理由は、消費者物価は「税込」なのですね。つまり2014年4月に5%から8%に消費税が増税となりましたので、こうした物価が2〜3%上昇するのは当然です。
逆に言えば当時のインフレ率が2〜3%にとどまっているのは増税分しか上昇していない、つまりベースとなる物価はほとんど全く上昇していないことを示唆していると言えるわけで、「低すぎるくらい」と表現してもよさそうです。
実際、そうした増税効果がなくなった2015年4月以降、インフレ率はきっちり下がっているわけですからね。
気になる今後の物価見通しですが、短期的には為替相場が大きく円安となったり、エネルギー価格が大きく上昇すればインフレ圧力になります。しかし足元では上記の通り為替相場も原油相場も「円高・原油安」傾向となっており、その心配はなさそうです。為替相場が1ドル=120円台の時や原油価格が1バレル=100ドル台の時ですらまともなインフレは起きなかったわけですし・・・。
また中長期的に見ても、少子高齢化が進んでいるほか、ついに日本の人口そのものも減少し始めた点を踏まえれば、物価が大きく上昇する可能性は低そうです。と言うか、インフレ率=2%達成など永遠に不可能な気がするのですがいかがでしょう?日銀関係者の方々には申し訳ないですが「無理なものは無理」と言う気もします。
未来の金利動向を正確に予測することはできませんが、しかし住宅ローン金利が本格的に上昇する前には物価が上昇するはずですから、今後も住宅ローン利用者の方々はこうして毎月の物価動向をチェックしていっていただければと思います。
参考になさってください。
<日本住宅ローンプランニング編集部>