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先日もご案内したように、住宅ローンの金利タイプのシェアに関する調査について信頼できるものはいくつかあります。
>>>住宅ローン金利タイプの人気シェア割合が大きく変動!?不動産流通経営協会調べ
それらの中で比較的新しいデータは以下2つです。いずれも「2016年度」の結果を調査したものですね。
まず1つ目は国土交通省が住宅購入者に対してアンケート調査を行ったもので、このようになっています。
こちらは2011年ごろに変動金利タイプのシェアが60%前後に上昇した後、ずっとその「60%前後」を維持していることが分かります。極めて安定的ですね!
2つ目は一般社団法人住宅生産団体連合会が発表した「2016年度戸建注文住宅の顧客実態調査」ですね。あくまで注文住宅購入者の方々のデータとなりますが、その金利タイプはこのようになっています。
こちらは、全体のシェアを見ると徐々に変化していることが分かります。2014年度から2016年度にかけての変化を抜き出すとこうですね。
・変動金利タイプ : 59.7% → 47.1% → 48.4%
・固定金利期間選択タイプ : 17.8% → 15.4% → 23.4%
・全期間固定金利タイプ : 17.8% → 23.6% → 24.0%
多少のデコボコはあるものの、全体を通して変動金利タイプのシェアが徐々に低下する一方、固定金利、特に全期間固定金利が順調に増加していることが分かります。
つまり、片や「変動金利の人気は堅調」である一方、片や「変動金利の人気は後退」ということですから、どちらかが間違っているということになりそうです。報道ではマイナス金利政策発動以降、「10年固定金利など、固定金利の人気が高まっている」ということでしたから、後者の住宅生産団体連合会の調査の方がしっくり来る気もしますがいかがでしょうか?
いずれにしても消費者アンケートはどうとでも答えられますので、ある程度の誤差は考慮しておいた方が良さそうです。
さて前置きが長くなりましたが、先日、住宅金融支援機構が同じような住宅ローン金利タイプシェアの調査結果を発表しておりますのでご紹介したいと思います。「民間住宅ローン利用者の実態調査」の「民間住宅ローン利用者編 2017年度
第1回」がそれですが、その中で「金利タイプ構成比」はこのようになっています。
最新は「2017年4月〜9月の住宅ローン利用者」ということになりますが、ほぼ同じ時期となる「2016年3月〜9月」「2015年3月〜6月」の住宅ローン利用者の回答結果と比較すると、それぞれの金利タイプは以下のように推移していることが分かります。
・変動金利タイプ : 35.8% → 49.2% → 50.4%
・固定金利期間選択タイプ : 26.3% → 36.9% → 36.9%
・全期間固定金利タイプ : 38.0% → 13.9% → 12.6%
上記2つの調査結果とはこれまた対照的で、変動金利や固定金利期間選択タイプが順調に拡大する一方、全期間固定金利は「一人負け」という状態ですね。シェアの落ち方も半端ありません。
どちらかと言えば「変動金利タイプ推し」である当サイトとしては好ましい結果にも見えますが、ただこれは世の中のトレンドがそのように「変動金利に人気が集中している」というわけではなく、「過去いい加減な調査をしてきたツケが今に出ている」という理解が正しいのでしょうね。
どんな調査を見ても、全期間固定金利のシェアが4割に迫るという結果を見たことがありません。住宅金融支援機構の意向によるものだったのか、過去の調査会社B社が「忖度」したのかは分かりませんが、一時のデタラメな調査が今も影響を及ぼしているということです。
そうしたわけで、この3つの調査結果を見ても全体的なトレンドを把握するには「力不足」という感が否めません。
個人的には、上記の通り「変動金利から10年固定金利などへのシフト」が多少なりとも起きていると考えておりますが、より正確な実態を把握するには「消費者アンケート」ではなく、その上流の「金融機関アンケート」の調査結果が待たれます。
ただそうは言いつつ、これらのアンケートから共通項を導き出すとすれば現状の大まかな金利タイプ別のシェアはこのようになるかと思います。
・変動金利タイプ : 5割
・固定金利期間選択タイプ : 3割
・全期間固定金利タイプ : 2割
やはり変動金利タイプが人気ということですね。また、この数字から大きく乖離した調査結果は「信憑性が低い」と考えてよさそうです。各種住宅ローンアンケートの正確性を把握する目安としてもらえればと思います。
なお今回の住宅金融支援機構の調査結果には色々な集計が掲載されているわけですが、個人的に気になったのがこの調査結果です。
ただでさえシェアが下がっているという結果になった全期間固定金利について、その内訳をみるとフラット35のシェアがさらにシェアを落としているということです。この結果を信じればフラット35のシェアは「往時の20%程度に落ち込んでいる」という計算になるでしょうか。
もちろん、実際にフラット35のシェアがそこまで下がっているわけではないことは、フラット35の貸出額などを見ればわかります。つまりはこの結果は繰り返しになりますが、「これまでの民間住宅ローン利用者実態調査がいかにデタラメだったか」を示す証左と言えるわけですが、ただポジティブにとらえれば「住宅金融支援機構が自分に都合の悪い調査結果でも発表するようになった」とも言えます。
そもそも独立行政法人である住宅金融支援機構が、そうした「情報操作」によってフラット35人気を醸成しようとしたこと自体があってはならないわけですが、しかしそれでも透明性が向上した点は良いことだと言えます。
ぜひこのまま、自分たちのためではなく、すべての住宅ローン利用者のために正確な情報を発信していってほしいものですね。
参考になさってください。
<日本住宅ローンプランニング編集部>