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日銀が長期金利の水準を直接コントロールするイールドカーブコントロールを始めてからもう2年が経過しようとしていますね。早いものです。過去3年の長期金利の推移をチェックしてみるとこうなります。
2016年後半から長期金利は0.05%前後という極めて狭いレンジで安定的に推移してきたことが分かります。つまりはイールドカーブコントロールが効果を挙げてきたということですね!
ただ一方で足元ではそのレンジから外れやや上昇傾向にあることが分かります。過去1年の長期金利の推移はこうです。
確かに長期金利は上昇しているわけですが、これは7月末に日銀が長期金利の「上限」を従来の0.1%から0.2%に引き上げることを発表したからですね。今のところまだ0.11%といった水準ですが、早晩0.2%に近づいていくと思いますので、今後住宅ローン金利があと0.1%程度上昇する可能性についてはご留意ください。
さてそのように金利がわずかながら上昇する可能性が高まっている中で、住宅ローンの貸し出し状況がどうなっていくか興味が湧くわけですが、そうした「住宅ローン人気」をタイムリーに知ることができるデータが、住宅金融支援機構が3ヶ月に1回発表する「業態別の住宅ローン新規貸出額」調査です。その最新版=2018年1月〜3月期の結果が発表されていますので早速チェックしてみるとこうなっています。
残念ながら2018年1月〜3月期は−9.2%ということで1割近い減少となっています。上記の通り過去2年は長期金利も住宅ローン金利も安定して推移していたわけで、そこだけ考えれば住宅ローンの新規貸し出しも安定して推移してもいいような気はしますが、結果的には苦戦したわけですね。
今回の「1月〜3月期」のデータで2017年度の数字も固まりましたので「通期」の数字を抜き出すと、貸出額1,000億円以上の主要業態ではこうなりました。
・国内銀行 : −9.5%
・信用金庫 : −16.4%
・労働金庫 : +8.0%
・住宅金融支援機構 : −16.0%
いつものようになぜか労働金庫が増加していますが、それ以外は全体的に苦戦していますね。特に信用金庫やフラット35(住宅金融支援機構)は2割近い減少ですから「大苦戦」と言えそうです。
ではなぜこのように前年度比で大きく減少したかと言うと・・・いつものようにこれまでの新規貸出額の推移をチェックしてみるとこうなります。
要するに2016年1月に発表されたマイナス金利政策によって「住宅ローンブーム」が起きた2016年度が「好調過ぎた」わけで、2017年度はその「反動」が出たと考えて良さそうです。
とは言いつつ3ヶ月ごとの実績を見ると2017年度も比較的高水準で推移してきたことが分かります。
ただ今回発表された2018年1月〜3月期の新規貸し出し実績だけを見ると2016年以前と比較して大差ないことが分かります。その点では「住宅ローンブーム」もいよいよひと段落し、基調としては「巡航速度」に落ち着いたと考えて良さそうです。
なお上記の通り主要業態の中では住宅金融支援機構=フラット35の苦戦が目立つわけですが、この新規貸出額の中でフラット35の貸出額と長期金利の推移をチェックしてみるとこうなります。
こちらも確かに前年度と比較すると大きく減少しているものの、それ以前の実績と比較すると「苦戦」という感じではないですね。むしろ「比較的好調」という印象すら受けます。やはり長期金利低下が大きな追い風になっているのでしょうね。
長期金利は4年前と比較すると大きく低下したものですねぇ・・・ありがたいことです。
そうしたわけで、住宅ローンの人気動向が気になる方は、単純に前年実績と比較するのではなく数年のレンジで見ていただければと思います。
なお、今回の発表は年度の集計もあったためか随分遅かったですね。既に3月から半年経過しています。「元データ」と言える日銀の「貸出先別貸出金」統計では既に4月〜6月の実績が発表されていますので、その結果をチェックするとこうなっています。
国内銀行のみの数値ですので前述のグラフとは数値は若干異なっていますが、新規貸し出しのほとんどは国内銀行経由ですので全体のトレンドは同じですね。
では4月〜6月期の実績はと言うと・・・過去4年と比較して多いことも少ないこともなく、やはり「巡航速度」という印象です。
冒頭ご案内したようにもしかすると足元では、金利上昇懸念から多少住宅ローン需要が増えているかもしれませんが、全体的には落ち着いた状況で住宅ローンの借入・借り換え手続きを進めることができそうですね。ポジティブに捉えて良さそうです。
参考になさってください。
<日本住宅ローンプランニング編集部>