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9月も中旬となりました。今月は期末に向けて、また来年秋の消費税増税に向けて住宅ローンの需要が高まってくるなのではないかと思えましたし、実際、当サイトのトラフィックも出だしは好調だったわけですが、台風21号や北海道の地震の影響があったのかその後はややスローダウンしている印象を受けます。
今年は本当に災害が続きますね。マイホーム選びにはぜひそうした防災の観点からも慎重な選択をしていただければと思います。先日のNHKスペシャルでは「日本にいる限り、どこにいても災害からは逃れられない」という突き放したものでしたが・・・。
ちなみに地震による倒壊や、山崩れ、河川の決壊、津波などの被害風景を見てみると、「1階はダメだったけれど2階は無事」というケースを良く目にします。統計的に正しいかどうかは分かりませんが、とりあえず寝室を2階に移すだけでも防災対策にはなりそうですね。
さて本題に入っていきたいと思いますが、まずはいつものようにこれまでの金利推移を振り返ると、何と言っても衝撃的だったのがもう2年以上前となってしまいましたが、2016年1月末に発表された「マイナス金利政策」です。金利がマイナスになるというのは想定外でしたが結果的に住宅ローン金利も劇的に低下しました。
しかしそうした金利低下も2016年後半には反転しました。2016年9月に発表された新たな金融緩和の枠組み=「金利操作付き金融緩和」と、2016年11月のアメリカ大統領選挙でトランプ氏が勝利してからの「トランプラリー」によって、長期金利はプラス水準まで回復しています。
今後のさらなる金利上昇に対する不安が募るわけですが、ただ長期金利が大きく上昇するかと言うとそれはなさそうです。と言うのも日銀による「金利操作付き金融緩和=イールドカーブコントロール」で長期金利は「0%前後」に操作されることになっているからですね。
長期金利のグラフに−0.1%と0.1%の線を足してやれば、これまで日銀の思惑通り長期金利がコントロールされてきたことが分かります。
しかし。
この7月31日に、日銀が長期金利の変動幅をこれまでの2倍まで容認すると発表しました。従来の変動レンジが「−0.1%〜+0.1%」だったのに対して今後は「−0.2%〜+0.2%」になるということですね。
あくまで「変動幅の拡大」ではありますが、これまでの経緯を踏まえれば長期金利は更なる上昇を目指すものと思いますので、実質的に「金利上昇容認」ということです。実際、長期金利は先月のこの時期が0.095%で、本日が上記の通り0.105%ですから、わずかに0.1%を上回り少しずつ上昇しています。
正直思っていたより上昇ペースは遅いですが、長期金利は今後ジワジワと0.2%に向かって上昇していくものと思います。とすると住宅ローン金利もまた現状の金利水準から+0.1%程度上昇する可能性が高いということですね。
住宅ローン利用者としては残念な動きですが、ただ仮に+0.1%程度上昇したとしても引き続き住宅ローン金利は低水準にとどまることに加え、今回の「金利上昇容認」と同時に発表された金融政策の見通し=フォワードガイダンスによって当分の間低金利が維持されると「約束」されました。その点では過剰に反応する必要はなさそうです。
特に住宅ローンの「変動金利タイプ」についてはそもそも長期金利上昇の影響を受けないことに加え、上記フォワードガイダンスによって金利上昇リスクが後退しましたのでますます有利となりました。人気がさらに高まりそうですね。
ちなみにその金融緩和がいつ終了するのかという点ですが、2019年秋の消費税増税後に景気が相応に落ち込むとすれば金融緩和はむしろ拡大しないといけないかもしれませんし、
「プライマリーバランス黒字化」や「GDP600兆円達成」などの政策目標を考慮すれば実際には2020年代後半まで続くということですかね?
少子高齢化を背景に永遠に続く可能性すらあります。つまり我々が想像する以上に長い間、低金利が継続するかもしれないということです。
今回、「長期金利変動幅拡大」=「実質的に金利上昇容認」と言う流れが出来てしまいましたので金利上昇リスクは多少高まった気もしますが、しかしそれでも全体的に見れば低金利が維持される可能性が高いわけで、「金利が上昇した場合」の試算は当然必要だとしても、「金利が上昇しなかった場合」の試算も併せて行っておいた方が良さそうです。
住宅ローンは金額が大きいですからね・・・。
[2018年10月の住宅ローン金利予想]
毎度前置きが長くなって恐縮ですが、大まかな金利の動きや背景を踏まえた上で、ここから来月=2018年10月の住宅ローン金利を具体的に予想していきたいと思います。
まず金利環境としては上記の通り、日銀のイールドカーブコントロールによって長期金利はおおよそ「−0.2%〜0.2%」のレンジ内で推移していくものと思いますので、住宅ローン金利もまた最大0.4%の幅の中で動いていくと考えられます。だとすると来月の住宅ローン金利は基本的に「大きく下がることも大きく上がることもない」ということですね。
その上で、もう少し細かく過去3ヶ月の長期金利の推移をみるとこうなっています。
1ヶ月前の8月中旬の長期金利の水準と比較しても、メガバンク各行が金利を決定したであろう8月下旬ごろの金利水準と比較してもわずかに上昇しています。今のところ「+0.01%」程度の上昇余地でしょうか。
ただ全体の住宅ローン金利を引き上げるにはやや「上昇不足」という気もしますね。こうした金利水準が続くようであれば10月の住宅ローン金利は「据え置きかわずかに上昇」ということになりそうです。
念のため8月25日前後の国債金利と本日現在の国債金利との差をチェックしてみるとこうなります。
◆8月25日前後の国債金利と本日の国債金利の比較
・1年 : −0.12% → −0.12% (変わらず)
・10年 : 0.11% → 0.12% (+0.01%上昇)
・20年 : 0.61% → 0.61% (変わらず)
・30年 : 0.83% → 0.82% (−0.01%低下)
ただ具体的な数字をチェックしてみると「上昇」というより「変わらず」との印象が強いですね。30年もの金利はわずかに低下していますし・・・。
そうしたわけで10月の住宅ローン金利の予測ですが、「固定金利タイプは据え置き」と予測しておきたいと思います。
なぜか市場金利の上昇ペースは遅いですが、固定金利タイプの住宅ローンを検討されている方は金利があまり動いていない今の内に借りてしまった方がいいかもしれませんね。
次に住宅ローン「変動」金利タイプについて。
人気の住宅ローン金利タイプと言えば変動金利ですが、この変動金利タイプのベースとなるのは長期金利ではなく「短期金利」です。
そしてこの短期金利については日銀の「ゼロ金利政策」によって一足早く金利ゼロに到達したことに加え、日銀が完全にコントロールしているために上がることも下がることもなくずっと「超・低金利」を維持してきました。
では9月13日現在の代表的な短期金利である「無担保コール翌日物」金利はと言えば「−0.058%」とマイナス水準を維持しています。1ヶ月前の金利は「−0.052%」でしたから、わずかに下落しており、引き続き「異次元の低金利」だと言うことです・・・マイナスですからね。
加えて日銀のこうしたゼロ金利政策=短期金利の引き下げ政策もまた、十分なインフレ状態となるまで続けられますから、「相当の長期間」継続されるのは間違いありません。
そしてそのように短期金利の低下がまだまだ続くとすれば、それはつまり、住宅ローン変動金利タイプもまだまだ低金利が続くことを意味します。
繰り返しになりますが、そもそも少子高齢化が進む日本では、円安や増税などの一時的な要因を除けば、「十分なインフレなど永遠に起こらない」かもしれませんしね。
住宅ローン金利が上昇した、低下した、と言ってもそれはあくまで10年固定や20年固定といった「固定金利タイプ」の話であり、「変動金利タイプ」は基本的にはゼロ金利政策が復活した2008年12月以降の約10年間全く上昇していません。
住宅ローンの変動金利タイプをご検討の方は、長期金利の変動に一喜一憂する必要は全くない、ということです。
さらに上記の通り2018年7月からのフォワードガイダンス公表によって金利上昇リスクが後退していますので尚更、変動金利タイプに追い風が吹いていると言えそうです。
変動金利が変動しないという何とも不思議な状態となっているわけですが、参考になさってください。
[補足:これまでの金利動向と金利上昇リスクについて]
補足として、2000年からの長期金利の推移を振り返るとこのようになっています。
2016年 はマイナス水準にあったわけですから当たり前ですが、長期金利は現在も「歴史的な低水準」にあることがよくわかります。ぜひこのチャンスを生かして、毎月の住宅ローン返済額を大いに削減していただければと思います。
一方で。
このグラフからあえて金利上昇リスクを探るとすれば、前回の景気回復局面である2003年〜2006年ごろの金利推移を見てみると、2003年には長期金利が0.5%前後という当時の過去最低水準まで下がったのち、その後1.5%近くまで跳ね上がっていることが分かります。
たかが1.5%ではあるのですが、されど1.5%と言えます。仮にそのように金利上昇すれば住宅ローン金利も当然、相応に上昇することになります。
2003年当時、世界経済の見通しが大きく好転したことや、小泉政権への期待、りそな銀行への公的資金注入により金融不安が大幅に後退したことに加え、「VaR」と呼ばれるリスク管理手法に起因する「VaRショック」と名づけられた「国債の投げ売り」が金利上昇を加速させたと言われてますが、どのような理由であれ長期的に見れば、金利が上昇する可能性というのはゼロではありません。
もちろんそれは「長期的に見れば」ということであり、上記の通りマイナス金利政策や「金利操作付き金融緩和」が実行されている現状では金利が極めて上がりにくいことには変わりません。
しかしそれでも今の歴史的な低水準からすれば、いつかは「多少なりとも」上昇する可能性があります。実際のところ長期金利は2016年当時のマイナス水準からは脱却し、プラス水準に回復していますね。
金利上昇リスクを過度に心配する必要がないというのは申し上げた通りですが、お伝えしたいのは今が住宅ローンの借り入れ・借り換えの絶好の機会だと言うことですね。細かな金利変動に左右されることなく、ぜひ検討を進めていただきたいと思います。
みなさんが来月も最高の住宅ローンに出逢えることを祈っております。
<日本住宅ローンプランニング編集部>