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5月も中旬となりました。例年であればGW明けから住宅ローン市場が動き始めるようですが今年はどうでしょうか?
秋に控えた消費税増税を考慮すれば多少の駆け込み需要もありそうですし、折しも金利も低下傾向ですしね。
追い風はそろっている気がするものの、住宅が売れているという話は今のところ聞きません。果たしてどうなるでしょうか・・・。
では本題に入っていきまして、まずはこれまでの金利推移を振り返ってみたいと思います。何と言っても衝撃的だったのがもう3年以上前となってしまいましたが、2016年1月末に発表された「マイナス金利政策」ですね。
金利がマイナスになるというのは想定外でしたが結果的に住宅ローン金利も劇的に低下しました。
しかしそうした金利低下も2016年後半には反転しました。2016年9月に発表された新たな金融緩和の枠組み=「金利操作付き金融緩和」と、2016年11月のアメリカ大統領選挙でトランプ氏が勝利してからの「トランプラリー」によって、長期金利はプラス水準まで回復しました。
ただ幸いなことに、今後長期金利が大きく上昇することはなさそうです。と言うのも日銀による「金利操作付き金融緩和=イールドカーブコントロール」で長期金利は「0%前後」にコントロールされているからですね。
長期金利のグラフに−0.1%と0.1%の線を足してやれば、これまで日銀の思惑通り長期金利の動きが管理されてきたことが分かります。
ただし。
2018年7月に、日銀が長期金利の変動幅をこれまでの2倍まで容認すると発表しました。従来の変動レンジが「−0.1%〜+0.1%」だったのに対して「−0.2%〜+0.2%」になったということですね。
あくまで「変動幅の拡大」ではありますが、これまでの経緯を踏まえれば実質的に「金利上昇容認」ということです。ではその後の長期金利の推移を過去1年のグラフでチェックするとこうなっています。
確かに長期金利は昨年10月くらいまで予想通り上昇していたわけですが・・・それ以降はむしろ低下傾向ですね!先月のこの時期が−0.050%で本日が−0.050%ですから奇しくも同じ値ですが、「変動幅拡大前」よりはるかに低く引き続きマイナス水準となっています。
住宅ローン利用者としてはうれしい誤算というところですが、ではなぜ長期金利がそのように下落しているかと言えば理由は先日も触れましたが以下2つですね。
・株価の下落傾向
・世界的な金利の低下傾向
日経平均の過去1年のグラフはこのようになっています。
確かに昨年10月以降、株価は大きく下落しています。ただ一方で年末年始でボトムをつけ、それ以降は回復傾向ですね。最近の金利低下の要因とは言えなさそうです。
次にアメリカの長期金利はこうなっています。
こちらは引き続き低下傾向ですね。特に最近の動きは日本の長期金利とほぼシンクロしています。
つまりこの半年の日本の長期金利の低下は「株価下落→米国金利低下」と下落要因が引き継がれる形で促されてきた、ということになりそうです。
こうした世界的な金利低下の直接的な原因は「ブレグジット問題」や「中国経済の減速懸念」などかと思います。最近では「米中貿易戦争」が再びクローズアップされていますが、それに加えより大きな不安としては「世界経済の景気後退懸念」があります。
何とも壮大なテーマですが、しかしそうは言いつつ実体経済は好調に推移しています。
また、FRBが意外に早く「利上げ停止&資産圧縮終了」を発表したことも却って株高を招いている気もします。FRBのこうした動きは短期的には金利低下要因ですが、中期的には株高を通じて金利上昇圧力となります。
今後の株価・金利動向を予測するのはかなり難しい状況ですが、しばらくは「足元の景気の好調さ」と「将来不安」の狭間で株価も金利も上下を繰り返す気がしますね。
住宅ローン利用者としては、今のような金利が下がったタイミングで機敏に借入・借換を行うフットワークの軽さを心掛けた方が良さそうです。
なおそうした市場金利の変動の影響を受けなさそうなのが「住宅ローンの変動金利タイプ」ですね。「最も金利が変動しそうな変動金利タイプの金利が変動しない」というのは何かの冗談のようにも響きますが、「変動金利タイプ」は短期金利に連動しそもそも長期金利上昇の影響を受けないことに加え、その短期金利は日銀の金融緩和によってマイナス水準に抑え込まれているからです。
さらにはフォワードガイダンスで金利上昇リスクが後退しており、ますます有利になっているという見方もできそうですね。
ちなみにその日銀の金融緩和がいつ終了するのかという点ですが、秋の消費税増税後に景気が相応に落ち込むとすれば金融緩和はむしろ拡大しないといけないかもしれませんし、
「プライマリーバランス黒字化」や「GDP600兆円達成」などの政策目標を考慮すれば実際には2020年代後半まで続くということですかね?
少子高齢化を背景に永遠に続く可能性すらあります。つまり我々が想像する以上に長い間、低金利が継続するかもしれないということです。
上記の通り2018年7月に 「長期金利変動幅拡大」=「実質的に金利上昇容認」と言う流れが出来てしまいましたので、潜在的な金利上昇リスクは多少高まった気もしますが、しかしそれでも全体的に見れば低金利が維持される可能性が高いわけで、「金利が上昇した場合」の試算は当然必要だとしても、「金利が上昇しなかった場合」の試算も併せて行っておいた方が良さそうです。
もし仮に本当に世界経済が後退すれば金利がさらに大きく低下するのは間違いありませんしね・・・。
[2019年6月の住宅ローン金利予想]
毎度前置きが長くなって恐縮ですが、大まかな金利の動きや背景を踏まえた上で、ここから来月=2019年6月の住宅ローン金利を具体的に予想していきたいと思います。
まず金利環境としては日銀のイールドカーブコントロールによって長期金利は「−0.2%〜0.2%」のレンジ内で推移していくものと思いますので、住宅ローン金利もまた最大0.4%の幅の中で動いていくと考えられます。だとすると来月の住宅ローン金利は基本的に「大きく下がることも大きく上がることもない」ということですね。
その上で、もう少し細かく今度は過去3ヶ月の長期金利の推移をみるとこうなっています。
グラフを見ると先月の同じ時期と比べると長期金利は変わらずですが、メガバンク各行が金利を決定したであろう4月下旬ごろの金利水準と比較するとわずかに下落しています。今のところ来月の住宅ローン金利は「−0.01%程度の下落余地がある」といったところでしょうか。
「−0.01%程度の下落余地しかない」というのが正しいかもしれませんが・・・。
念のため4月25日前後の国債金利と本日現在の国債金利との差をチェックしてみるとこうなります。
◆4月25日前後の国債金利と本日の国債金利の比較
・1年 : −0.16% → −0.16% (変わらず)
・10年 : −0.03% → −0.04% (−0.01%低下)
・20年 : 0.39% → 0.37% (−0.02%低下)
・30年 : 0.58% → 0.54% (−0.04%低下)
国債金利も同様に−0.02%程度の低下になっています。
ただその内訳を見てみると10年もの金利はほぼ変わらない一方で30年もの金利はそれなりに低下していることが分かります。
そうしたわけで6月の住宅ローン金利の予測としては「固定金利タイプは概ね据え置き。ただし20年・30年固定金利は−0.03%程度の低下余地あり。」としておきたいと思います。
次に住宅ローン「変動」金利タイプについて。
人気の住宅ローン金利タイプと言えば変動金利ですが、この変動金利タイプのベースとなるのは長期金利ではなく「短期金利」です。
そしてこの短期金利については日銀の「ゼロ金利政策」によって一足早く金利ゼロに到達したことに加え、日銀が完全にコントロールしているために上がることも下がることもなくずっと「超・低金利」を維持してきました。
では5月13日現在の代表的な短期金利である「無担保コール翌日物」金利はと言えば「−0.028%」とマイナス水準を維持しています。1ヶ月前の金利は「−0.062%」でしたから割と上昇しているものの引き続き「異次元の低金利」と言えます・・・マイナスですからね。
加えて日銀のこうしたゼロ金利政策=短期金利の引き下げ政策もまた、十分なインフレ状態となるまで続けられますから、「相当の長期間」継続されるのは間違いありません。
そしてそのように短期金利の低下がまだまだ続くとすれば、それはつまり、住宅ローン変動金利タイプもまだまだ低金利が続くことを意味します。
繰り返しになりますが、そもそも少子高齢化が進む日本では、円安や増税などの一時的な要因を除けば、「十分なインフレなど永遠に起こらない」かもしれませんしね。
住宅ローン金利が上昇した、低下した、と言ってもそれはあくまで10年固定や20年固定といった「固定金利タイプ」の話であり、「変動金利タイプ」は基本的にはゼロ金利政策が復活した2008年12月以降の約10年間全く上昇していません。
住宅ローンの変動金利タイプをご検討の方は、長期金利の変動に一喜一憂する必要は全くない、ということです。
「変動金利が変動しない」という何とも不思議な状態となっているわけですが、参考になさってください。
[補足:これまでの金利動向と金利上昇リスクについて]
補足として、2000年からの長期金利の推移を振り返るとこのようになっています。
2016年 はマイナス水準にあったわけですから当たり前ですが、長期金利は現在も「歴史的な低水準」にあることがよくわかります。ぜひこのチャンスを生かして、毎月の住宅ローン返済額を大いに削減していただければと思います。
一方で。
このグラフからあえて金利上昇リスクを探るとすれば、前回の景気回復局面である2003年〜2006年ごろの金利推移を見てみると、2003年には長期金利が0.5%前後という当時の過去最低水準まで下がったのち、その後1.5%近くまで跳ね上がっていることが分かります。
たかが1.5%ではあるのですが、されど1.5%と言えます。仮にそのように金利上昇すれば住宅ローン金利も当然、相応に上昇することになります。
2003年当時、世界経済の見通しが大きく好転したことや、小泉政権への期待、りそな銀行への公的資金注入により金融不安が大幅に後退したことに加え、「VaR」と呼ばれるリスク管理手法に起因する「VaRショック」と名づけられた「国債の投げ売り」が金利上昇を加速させたと言われてますが、どのような理由であれ長期的に見れば、金利が上昇する可能性というのはゼロではありません。
もちろんそれは「長期的に見れば」ということであり、上記の通りマイナス金利政策や「金利操作付き金融緩和」が実行されている現状では金利が極めて上がりにくいことには変わりません。
しかしそれでも今の歴史的な低水準からすれば、いつかは「多少なりとも」上昇する可能性があります。
金利上昇リスクを過度に心配する必要がないというのは申し上げた通りですが、お伝えしたいのは今が住宅ローンの借り入れ・借り換えの絶好の機会だと言うことですね。細かな金利変動に左右されることなく、ぜひ検討を進めていただきたいと思います。
みなさんが来月も最高の住宅ローンに出逢えることを祈っております。
<日本住宅ローンプランニング編集部>