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5月14日にアクセスが増えたなーと思ったら、NHKのクローズアップ現代が「住宅ローン破綻」特集をやっていたのですね。
たまたまNHKのサイトを覗くと放送内容が全て掲載されていましたので、その要旨をまとめてみたいと思います。まず住宅ローン返済が苦しくなる理由として取り上げられていたのは以下です。
1.「働き方改革」などの影響による残業時間減少→残業代減少による収入減
2.教育費の上昇
3.低金利による借りすぎ
4.転職失敗
5.不動産投資失敗
いかがでしょう?
管理職に上がれば残業代が付かなくなる場合が多そうですし、教育費の上昇もこの10年以上大きな変化はないように読み取れますし、低金利による借りすぎも金利が上昇しない限り問題なさそうですし、転職については自分の意思で行うものですし、不動産投資の失敗はそもそも「住宅ローン」ではない気がしますね。
とすると特に何か住宅ローンに新たな問題が起き始めているというものではなく、番組紹介にある
・見えてきたのは、収入が安定しているはずのサラリーマンに忍び寄る危機の実態だ。
というオドロオドロシイ説明は「的を得ていない」と考えて良さそうです。
こうした「煽り」に納得いくかどうかはさておき話を先に進めると、その解決策として以下のような方法が紹介されています。
1.残業時間減少対策
・残業代を見込まない。
2.教育費対策
・子供も含めて家族と話し合う。
3.借りすぎ対策
・ローンを返済しながら貯蓄ができるかどうかを考えてから借りる。年間で少なくとも50万円ぐらい貯蓄をする。
・ローンの返済期間は65歳まで。65歳までの返済期間で試算をし、こんなに返せないよということだったら、「借り過ぎ」のシグナルになる。
4.転職失敗対策
・同一業種、同一職種にこだわらない。
・社内でまず副業をしてみる。
5.不動産投資失敗
・何の知識もなくやるのは非常にリスクがある。一歩立ち止まって、家族に1回相談する。ほかの意見を聞くのも大事。
番組構成としてはバラバラですが、全体を読み進めると一応全て対策が述べられていますね。なるほど。
今、住宅ローンを借りているサラリーマンに危機が忍び寄っているかどうかはともかく、どれも有効なアドバイスかと思いますので、お心当たりがある方はぜひ参考にしてみてください。
なお、恐らくメインで訴えたかったのではないかと思われる「残業時間減少対策」については
・浮いた時間で副業を始めてみる
というのも手ですね。 さすがに割高な残業代をカバーするのは難しいでしょうけれど、それでも数万円の収入は見込めると思いますし、選んだ職種によってはスキルアップも期待できます。
では実際の住宅ローン破綻の割合はどれくらいなのでしょうか?いつものように住宅金融支援機構のデータをチェックするとこうなります。まず3ヶ月以上延滞するなど「全く返せなくなった人」の割合はこうです。
・2014年3月期 : 旧公庫ローン 4.00% / フラット35 0.58% = 合計 2.58%
・2015年3月期 : 旧公庫ローン 3.95% / フラット35 0.52% = 合計 2.35%
・2016年3月期 : 旧公庫ローン 3.93% / フラット35 0.49% = 合計 2.11%
・2017年3月期 : 旧公庫ローン 3.92% / フラット35 0.44% = 合計 1.89%
・2018年3月期 : 旧公庫ローン 3.88% / フラット35 0.43% = 合計 1.69%
旧公庫は新規貸し出しを行っていませんので、繰り上げ返済や完済などによって健全な借り手が減っていく一方で、それができない借り手が残っているとすると、延滞割合が高止まりするのは仕方ないと思います。
その点では実態はフラット35の延滞率に近いと思いますが、その旧公庫分も含めて延滞率はどんどん低下していっていることが分かります。やはり景気が良いということなのでしょうね・・・。
次にこの「全く返せなくなった人」に加え、返済が苦しくなってきたので「返済条件を緩和してもらった人」も含めると割合はこうなります。
・2014年3月期 : 旧公庫ローン 10.68% / フラット35 1.00% = 合計 6.67%
・2015年3月期 : 旧公庫ローン 10.20% / フラット35 0.90% = 合計 5.87%
・2016年3月期 : 旧公庫ローン 9.92% / フラット35 0.83% = 合計 5.12%
・2017年3月期 : 旧公庫ローン 9.78% / フラット35 0.77% = 合計 4.52%
・2018年3月期 : 旧公庫ローン 9.48% / フラット35 0.75% = 合計 3.94%
こちらも旧公庫分の割合の高さが目に行きますが、上記事情に加え、ちょうどバブル期からバブル崩壊期の地価が下落しているタイミングで住宅ローンを借りて返済に困って人も多いのかもしれません。つまり「時代背景」が影響している可能性ですね。
その点でもやはりフラット35の割合が実態に近いと思いますが、全体的に見れば同じように順調に低下していることが分かります。
番組内容は常識的なものですが、ただ唯一、上記の通り番組紹介文である
・見えてきたのは、収入が安定しているはずのサラリーマンに忍び寄る危機の実態だ。
という一文については「事実ではなさそう」と指摘しておきたいと思います。
もちろん、住宅ローンの借入にあたっては慎重であればあるほどいいのは間違いありませんが!
参考になさってください。
<日本住宅ローンプランニング編集部>