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日銀の7月の金融政策決定会合が終了し、3ヶ月に1回更新されている「経済・物価情勢の展望レポート」の最新版が7月16日に発表されていますね。このレポートでは日銀の物価見通しが述べられておりますので、今後の住宅ローン金利の動向を予測する上で参考になりそうです。
1980年代のバブル崩壊以降、金利がずっと低下してきている主な理由は、いつもご案内しているように日本銀行=日銀が積極的な金融緩和を実施しているからですね。それに伴い、住宅ローン金利もずっと低下しています。
特に2013年からは異次元の金融緩和=「異次元緩和」がスタートし、2016年にはついに「マイナス金利政策」まで導入されましたので、住宅ローン金利は劇的に低下して今に至ります。長期金利の推移は以下の通りです。
つまり今後、住宅ローン金利が上昇するかしないかは「日銀の金融緩和次第」ということです。金融緩和が続く限り住宅ローン金利は低金利を維持する一方で、金融緩和が終了すれば住宅ローン金利は上昇に向かうというわけですね。
ではいつ金融緩和が終了するのか気になってくるわけですが、今はその基準も明確になっておりますのでとても分かりやすいですね。具体的には「物価上昇率=インフレ率が安定的に2%を超えてきた時」ということです。
ではこれまでの物価上昇率がどのように推移しているかと言うとこうなっています。
緑のラインで示された「食料・エネルギーを除く物価指数」は引き続き0%近辺に留まっており、物価上昇圧力は極めて弱いです。今のところ住宅ローン金利が「本格的に」上昇する兆しは全くありません。
なおいつもご案内していることですが、2014年4月から物価上昇率=インフレ率が大きく跳ね上がっているのは消費税増税の影響です。と言うのも物価は「税込み」で集計されるからです。
もちろんそうした「人為的」な物価上昇が永続するはずもなく、増税の影響が消えた1年後にはきっちり低下していることが分かります。こうして見ると、「アベノミクス」や「異次元緩和」が2013年にスタートして7年以上経つのに物価はほとんど上昇していないわけで、「2%のインフレ率達成」は「相当先」であるのは間違いなさそうです。
そうした点を踏まえ、冒頭ご案内した日銀「経済・物価情勢の展望レポート」の最新版=2020年7月発表分の中身をチェックしてみると今後の物価上昇率について、1年前、9ヶ月前、半年前、3ヶ月前の発表と比較して以下のように予想しています。
・2020年度 : +1.2% → +1.0% → +1.0% → −0.6% → −0.6% ※増税の影響を除く
・2021年度 : +1.6% → +1.5% → +1.4% → +0.4% → +0.3%
・2022年度 : 未掲載 → 未掲載 → 未掲載 → +0.7% → +0.7%
毎度のことではありますが、前回のレポートと比較して少し下方修正されたということですね。「いつも通り」と言えますが、しかしそれにしても2020年度のインフレ率の低下は劇的ですね。マイナス=デフレに逆戻りということです。
コロナ問題によって需要が瞬間蒸発したというのはありますが、加えて原油価格急落の影響も大きそうです。
ちなみにこれまでの経緯を考慮すれば、3ヶ月後の次回もやはりこの見通しは下がるのでしょうね・・・。
実際、2020年度は「−0.6%」に低下すると予想されている物価上昇率(生鮮食品を除く)が、2021年度に急に「+0.3%」に上昇し、2022年度は「+0.7%」に戻るという見通しはやっぱり「楽観的」なのではないかと思います。
そうしたわけでちょっと意地悪ですが、これまでの日銀の物価上昇率予想の変遷を集計してみるとこうなります。
緑の「2015年」や青の「2016年」の物価上昇率予想が典型例ですが、当初は2%程度と予想されながら、徐々に下方修正されていき、最終的には0%もしくはマイナスで着地していることが分かります。「2018年」はそこまでではないにしても、やはり右肩下がりで着地しましたね。
とすると「2020年」も「2021年」も「2022年」の予想も同じように推移すると考えてしまうのが当然ですね。実際、「2020年」は上記の通り劇的に低下しました・・・。
果たして日銀が期待するように物価上昇率は徐々に上昇していくのでしょうか?
記者は悲観的ですが、仮に日銀の予想通りとなったとしても「2022年時点でまだインフレ率は2%を下回っている」という予測ですから
・少なくとも2022年度=2023年3月末までは異次元緩和の終了はない
ということで、安心できますね。
ただし。
直近の金融政策のハイライトは2018年7月末に日銀が「長期金利の上昇を容認した」という点です。正確には「長期金利の変動幅がこれまでの2倍になることを容認した」ということですが、具体的にはこうなります。
・変更前:−0.1%〜+0.1%
・変更後:−0.2%〜+0.2%
これだけ見れば「上限」だけでなく「下限」も広がっており、「金利上昇」という感じではありませんが、ただ日銀がイールドカーブコントロールによって長期金利を直接操作し始めた2016年9月以降、長期金利は何度もこの上限=+0.1%にトライしては跳ね返されてきた経緯があります。その点ではやはりこの「変動幅拡大」=「金利上昇容認」ということですね。
実際、長期金利のグラフを見てみると2018年7月以降、10月くらいまでは日銀の思惑通り上昇したことが分かります。
ただ現在の長期金利はそれより低い水準となっており皮肉なものですね。昨年から徐々に上昇しているとは言え、本日の長期金利も「0.015%」と引き続き低水準です。
ちなみに人気の「住宅ローン変動金利」の方はと言えば、追い風になってくるのが日銀が2018年7月から発表している「フォワードガイダンス」=金融政策の見通しにて、「低金利を当分の間維持する」と約束していることです。
仮に低金利政策を変更する場合は、この「フォワードガイダンス」によって事前に発表されるでしょうから、変動金利ユーザーにとっては対応を検討する十分な時間が与えられることになります。
実質的に「金利上昇リスク」が大きく後退しているわけですから、「住宅ローン変動金利」を利用しやすくなりますね。
参考になさってください。
<日本住宅ローンプランニング編集部>