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当然のことながら、住宅ローンを借りるにあたって「ちゃんと最後まで返済できるかな?」と言う不安は誰しも感じることかと思います。
週刊誌などでは定期的に「これから住宅ローン破産が激増する」と言った煽り記事も見かけますしね。そうした「Xデー」が本当に訪れたことは一度もありませんが・・・。
では実際のところ住宅ローン破綻の実情はどうなっているかと言うと、結論から言えば「それほど心配ない」ということでいいと思います。なぜなら、もしみんながバンバン住宅ローン破綻しているのであれば、今のような住宅ローンの低金利は絶対維持できないからです。
仮に住宅ローンの変動金利が0.5%、経費が0.2%、資金調達費用が0.1%だとすると、住宅ローンの貸し倒れ率は「0.2%以下」ということになります。
また多少の利益は欲しいところでしょうから、0.1%の利益が見込めるとすると、貸し倒れ率は「0.1%以下」ということですね。
上記の数字は「適当」ですが、とはいえ変動金利が0.5%前後という水準にあるのは事実ですから、貸し倒れ率が「0.1%以下」というのは当たらずとも遠からずという感じではないかと思います。
もちろん「貸し倒れ=住宅ローンが完全に回収不能」となる前に担保=自宅の処分が行われますので、「マイホームを手放さざるを得なくなった」というのを住宅ローン破綻と定義するなら対象者はもっと増えるとは思いますが、それでも自宅を売却して住宅ローンがチャラになるのであれば「破綻」という語感からはかなりギャップがあります。
いずれにしても今の住宅ローン金利から推定されることは
・自宅を売却してもローンを返し切れない住宅ローン破綻のボリュームは全体の0.1%以下
ということですね。
とは言いつつ「適当な試算」では納得いかない方もおられるでしょうから、具体的な住宅ローンの破綻率を、住宅金融支援機構の2020年3月期決算から読み解いてみたいと思います。
ちなみに住宅金融支援機構の住宅ローンは、2007年以前の「公庫融資」と2003年以降の「フラット35」に分かれますので、それぞれの中身をチェックすると前年・前々年と比較してこうなります。
<フラット35(買取債権)>
・残高 : 14兆7,979億円 → 15兆9,061億円 → 17兆594億円
・貸出条件緩和 : 476億円 → 536億円 → 609億円
・3ヶ月以上延滞 : 153億円 → 178億円 →203億円
・延滞 : 362億円 → 392億円 → 482億円
・破綻 : 122億円 → 142億円 → 172億円
・リスク債権比率 : 0.75% → 0.78% → 0.86%
問題がある貸し出しの比率が少しずつ上昇していることが分かります。
ちなみにより深刻な、「延滞先+破綻先」の比率はこうなります。
・延滞+破綻比率 : 0.43% → 0.45% → 0.50%
こちらも少しずつ上昇していますが、「200人に1人」の方が、「自宅を売却してもローンを返し切れない」=住宅ローン破綻の予備軍ということになりそうです。
なおこの数字は上記「0.1%以下」とした「住宅ローン破綻率」より高いですが、7〜8割が担保によってカバーされているとすれば、実質的な破綻率はやはり0.1%前後に低下することになります。
次に2007年以前の「公庫融資」分はこうなります。
<公庫融資(貸付金)>
・残高 : 8兆5,279億円 → 7兆5,870億円 → 6兆8,185億円
・貸出条件緩和 : 4,772億円 → 4,003億円 → 3,377億円
・3ヶ月以上延滞 : 597億円 → 534億円 → 499億円
・延滞 : 2,157億円 → 1,914億円 → 1,815億円
・破綻 : 559億円 → 507億円 → 479億円
・リスク債権比率 : 9.48% → 9.17% → 9.05%
こちらは問題のある貸し出しが「底だまり」しているようでその比率は1割近くあります。
より深刻な「延滞先+破綻先」の比率はこうですね。
・延滞+破綻比率 : 3.88% → 3.89% → 4.10%
全体的には返済が進み残高が減少する中で、深刻な貸出の濃度が少しずつ増しているということですね・・・気になるところです。
ではこの「0.50%」と「4.10%」のどちらが正しいのでしょうか?
結論から言えばどちらも正しくありません。片方ずつを見るのではなく、トータルで把握する必要があるからですね。というわけで両者を合算するとこうなります。
・延滞+破綻比率 : 1.69% → 1.56% → 1.53%
それぞれ単体で見ると上昇しているのに、合算すると下がるということもあるわけですね・・・。
というわけで直近の比率「1.53%」から担保カバーを考慮すると「0.3%前後」といった感じですかね。
上記で推測した「0.1%以下」という水準からは乖離がありますが、「0.1%以下」にせよ「0.3%前後」にせよ、住宅ローンの破綻率がそこまで高くないことが分かります。
だからと言って住宅ローン返済に関して慢心して良いわけではありませんが、過度に心配する必要もないということですね。統計的には99.7%=「1,000人中997人」は破綻せずに返済できているということです。
住宅ローンの借入に当たっては楽観することも悲観することもなく、なるべく正しい姿を把握していっていただければと思います。
最後に、ソニー銀行の財務データをチェックしてみると2020年3月期決算を過去2年と比較するとこうなっています。
・残高 : 1兆6,064億円 → 1兆7,532億円 → 1兆9,828億円
・要管理 : 8億円 → 8億円 → 8億円
・危険 : 7億円 → 8億円 → 8億円
・破綻 : 5億円 → 6億円 → 5億円
こちらの区分は住宅金融支援機構と異なるため単純比較はできないものの、「要管理先+危険先+破綻先」の割合はわずか「0.1%」です。こちらは冒頭の「住宅ローン破綻のボリュームは全体の0.1%以下」という仮説を裏付けるものですね。
うまく住宅ローン審査が機能しているということかもしれませんが、ネット銀行が低金利の住宅ローンを貸し出せるのには訳がある、ということになりそうです。
参考になさってください。