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5月も中旬となりました。いつものように来月の住宅ローン金利予想をしていきたいと思います。
まずこれまでの金利推移を振り返ってみると何と言っても衝撃的だったのがもう6年前となってしまいましたが、2016年1月末に発表された「マイナス金利政策」ですね。
金利がマイナスになるというのは想定外でしたが結果的に住宅ローン金利も劇的に低下しました。
しかしそうした金利低下も2016年後半には反転しました。ただ幸いなことに、今後長期金利が大きく上昇することはなさそうです。と言うのも日銀による「金利操作付き金融緩和=イールドカーブコントロール」で長期金利は「0%前後」にコントロールされているからですね。
長期金利のグラフに−0.1%と0.1%の線を足してやれば、これまで日銀の思惑通り長期金利の動きが管理されてきたことが分かります。
ただし。
2018年7月に、日銀が長期金利の変動幅をこれまでの2倍まで容認すると発表しました。従来の変動レンジが「−0.1%〜+0.1%」だったのに対して「−0.2%〜+0.2%」になったということですね。
さらに2021年3月には変動レンジを再拡大し「−0.25%〜+0.25%」となっています。
あくまで「変動幅の拡大」ではありますが、これまでの経緯を踏まえれば実質的に「金利上昇容認」ということです。ではその後の長期金利の推移をチェックするとこうなっています。
2021年3月以降、金利は上がらないばかりかむしろ下落傾向で推移してきたのですが・・・足元では世界的なインフレ傾向や利上げの動きを受けて大きく上昇しています。
ウクライナ危機も影を落としていますね。
イールドカーブコントロールの上限である「+0.25%」を上回ることはないと思いますが、住宅ローン利用者としては要注意ですね。
気になるのがこのイールドカーブコントロールを始めとする日銀の金融緩和がいつまで続くのかという点ですが、足元のインフレも早晩落ち着くのだとすると2020年代後半まで続くかもしれません。
少子高齢化を背景に永遠に続く可能性すらあります。つまり我々が想像する以上に長い間、低金利が継続するかもしれないということです。
久しぶりの長期金利上昇で焦りますが、住宅ローン金利がいきなり大きく上昇することは考えにくいですので、冷静に借り入れ・借り換えのタイミングを検討いただければと思います。
[2022年6月の住宅ローン金利予想]
毎度前置きが長くなって恐縮ですが、大まかな金利の動きや背景を踏まえた上で、ここから来月=2022年6月の住宅ローン金利を具体的に予想していきたいと思います。
まず金利環境としては上記の通り日銀のイールドカーブコントロールによって長期金利は概ね「−0.25%〜0.25%」のレンジ内で推移していくものと思いますので、住宅ローン金利もまた最大0.5%の幅の中で動いていくと考えられます。だとすると来月の住宅ローン金利は基本的に「大きく下がることも大きく上がることもない」ということですね。
その上で、過去3ヶ月の長期金利の推移をみるとこうなっています。
ただそうは言いつつ、上記の通りここ数ヶ月で上昇した長期金利ですが、先月の同じ時期と比べても、メガバンク各行が金利を決定したであろう4月下旬ごろの金利水準と比べてもわずかに上昇しています。
念のため4月25日前後の国債金利と本日現在の国債金利との差をチェックしてみるとこうなります。
◆4月25日前後の国債金利と本日の国債金利の比較
・1年 : −0.09% → −0.08% (+0.01%)
・10年 : 0.25% → 0.25% (変わらず)
・20年 : 0.78% → 0.78% (変わらず)
・30年 : 1.00% → 1.02% (+0.02%)
10年・20年は奇しくも同じ金利である一方で、30年は少し上昇しています。
6月の住宅ローン金利の予測としては「固定金利タイプは据え置きもしくはわずかに上昇」としておきたいと思います。
次に住宅ローン「変動」金利タイプについて。
人気の住宅ローン金利タイプと言えば変動金利ですが、この変動金利タイプのベースとなるのは長期金利ではなく「短期金利」です。
そしてこの短期金利については日銀の「ゼロ金利政策」によって一足早く金利ゼロに到達したことに加え、日銀が完全にコントロールしているために上がることも下がることもなくずっと「超・低金利」を維持してきました。
では5月12日現在の代表的な短期金利である「無担保コール翌日物」金利はと言えば「−0.007%」とマイナス水準を維持しています。
1ヶ月前の金利は「−0.013%」でしたからわずかに上昇するも引き続き「異次元の低金利」となっています。マイナスですからね。
加えて日銀のこうしたゼロ金利政策=短期金利の引き下げ政策もまた、十分なインフレ状態となるまで続けられますから、「相当の長期間」継続されるものと思います。
そしてそのように短期金利の低下がまだまだ続くとすれば、それはつまり、住宅ローン変動金利タイプもまだまだ低金利が続くことを意味します。
繰り返しになりますが、そもそも少子高齢化が進む日本では、円安や増税などの一時的な要因を除けば、「十分なインフレなど永遠に起こらない」かもしれませんしね。
海外の物価はコロナやウクライナ危機の影響で歴史的な水準にまで上昇していますが、日本の物価は依然低いままです。
住宅ローン金利が上昇した、低下した、と言ってもそれはあくまで10年固定や20年固定といった「固定金利タイプ」の話であり、「変動金利タイプ」は基本的にはゼロ金利政策が復活した2008年12月以降の約14年間全く上昇していません。
住宅ローンの変動金利タイプをご検討の方は、長期金利の変動に一喜一憂する必要は全くない、ということです。「変動金利が変動しない」という何とも不思議な状態となっているわけですね。
[補足:これまでの金利動向と金利上昇リスクについて]
補足として、2000年からの長期金利の推移を振り返るとこのようになっています。
長期金利は「歴史的な低水準」にあることがよくわかります。ぜひこのチャンスを生かして、毎月の住宅ローン返済額を大いに削減していただければと思います。
一方で。
このグラフからあえて金利上昇リスクを探るとすれば、前回の景気回復局面である2003年〜2006年ごろの金利推移を見てみると、2003年には長期金利が0.5%前後という当時の過去最低水準まで下がったのち、その後1.5%近くまで跳ね上がっていることが分かります。
たかが1.5%ではあるのですが、されど1.5%と言えます。仮にそのように金利上昇すれば住宅ローン金利も当然、相応に上昇することになります。
2003年当時、世界経済の見通しが大きく好転したことや、小泉政権への期待、りそな銀行への公的資金注入により金融不安が大幅に後退したことに加え、「VaR」と呼ばれるリスク管理手法に起因する「VaRショック」と名づけられた「国債の投げ売り」が金利上昇を加速させたと言われてますが、どのような理由であれ長期的に見れば、金利が上昇する可能性というのはゼロではありません。
もちろんそれは「長期的に見れば」ということであり、上記の通りマイナス金利政策や「金利操作付き金融緩和」が実行されている現状では金利が極めて上がりにくいことには変わりません。
しかしそれでも今の歴史的な低水準からすれば、いつかは「多少なりとも」上昇する可能性があります。
金利上昇リスクを過度に心配する必要がないというのは申し上げた通りですが、ぜひ低金利の間に検討を進めていただきたいと思います。
みなさんが来月も最高の住宅ローンに出逢えることを祈っております。
<日本住宅ローンプランニング編集部>