日銀の1月の金融政策決定会合が終了し、3ヶ月に1回更新されている「経済・物価情勢の展望レポート」の最新版が発表されていますね。このレポートでは日銀の物価見通しが述べられておりますので、今後の住宅ローン金利の動向を予測する上で参考になりそうです。
1980年代のバブル崩壊以降、金利がずっと低下してきている主な理由は、いつもご案内しているように日本銀行=日銀が積極的な金融緩和を実施しているからですね。それに伴い、住宅ローン金利もずっと低下しています。
特に2013年からは異次元の金融緩和=「異次元緩和」がスタートし、2016年にはついに「マイナス金利政策」まで導入されましたので、住宅ローン金利は劇的に低下して今に至ります。長期金利の推移は以下の通りです。
つまり今後、住宅ローン金利が上昇するかしないかは「日銀の金融緩和次第」ということです。金融緩和が続く限り住宅ローン金利は低金利を維持する一方で、金融緩和が終了すれば住宅ローン金利は上昇に向かうというわけですね。
ではいつ金融緩和が終了するのか気になってくるわけですが、今はその基準も明確になっておりますのでとても分かりやすいですね。具体的には「物価上昇率=インフレ率が安定的に2%を超えてきた時」ということです。
ではこれまでの物価上昇率がどのように推移しているかと言うとこうなっています。
世界でインフレが加速している中、日本の物価もいよいよ上昇し総合指数は4%に達しました。要注意ですね。
実際に日銀は2022年12月に長期金利の変動幅を拡大し、実質的な利上げに踏み切りました。今後の金融政策が気になるところです。
では本題の日銀「経済・物価情勢の展望レポート」の最新版=2023年1月発表分の中身をチェックしてみると今後の物価上昇率について、以前と比較して以下のように予想しています。
・2022年度:0.9%→0.9%→1.1%→1.9%→2.3%→2.9%→3.0%
・2023年度:1.0%→1.0%→1.1%→1.1%→1.4%→1.6%→1.6%
・2024年度:未掲載→1.1%→1.3%→1.6%→1.8%
前回のレポートと比較してやや上方修正され、特に2022年度については「3.0%」と目標である2%を超えてきました。
ただ2023年度は「1.6%」、2024年度は「1.8%」の予想であり、今年度=2022年度の物価上昇はあくまで「一時的」という認識のようです。
であれば多少の調整があっても異次元緩和はもう少し続きそうですね。
なおこれまでの経緯を考慮すれば、この見通しは常に下方修正されてきました。日銀の希望的観測も相当色濃く反映されているものと思います。
ちょっと意地悪ですが、これまでの日銀の物価上昇率予想の変遷を集計してみるとこうなります。
緑の「2015年」や青の「2016年」の物価上昇率予想が典型例ですが、当初は2%程度と予想されながら、徐々に下方修正されていき、最終的には0%もしくはマイナスで着地してきたことが分かります。「2021年」も全体的には右肩下がりで着地しました。
ただ「2022年」「2023年」「2024年」はこれまでと大きく異なり、「右肩上がり」になっているわけですね!物価のトレンドがすっかり変わったということです。
それでもこの予想が正しければ、「2023年以降はインフレ率は2%を下回る」という予測ですから
・少なくとも2024年度=2025年4月末までは異次元緩和の終了はない
ということになります。
最後に過去10年の長期金利のグラフを見てみるとこうなっています。
この6年で多少上下したものの全体的に見れば安定していることが分かります。ただやはり足元での長期金利の上昇は突出していますね。本日の長期金利は「0.390%」となっています。
ちなみに人気の「住宅ローン変動金利」の方はと言えば、追い風になってくるのが日銀が2018年7月から発表している「フォワードガイダンス」=金融政策の見通しにて、「低金利を当分の間維持する」と約束していることです。
仮に低金利政策を変更する場合は、この「フォワードガイダンス」によって事前に発表されるでしょうから、変動金利ユーザーにとっては対応を検討する十分な時間が与えられることになります。
実質的に「金利上昇リスク」が大きく後退しているわけですから、「住宅ローン変動金利」を利用しやすくなりますね。
参考になさってください。
<日本住宅ローンプランニング編集部>