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<編集部からの異論・反論・意見>
1月末に発表された「マイナス金利」の影響はとどまることを知らないようで、先日の長期金利=10年もの国債金利はついに一時マイナス水準に落ち込みました。
マイナス金利ということは買い手が損をするわけで、預ければ預けるほど元本が減ることを意味します。一体だれが買うのかという話ですが、恐らくこうした「損する国債」を購入する理由は2つです。
1つ目は国債価格がまだまだ上昇(=金利がどんどんマイナスになる)するという読みですね。基本的に1万円のものを1万100円で購入すると損ですが、さらに1万200円で買ってくれる人がいればむしろ得、ということになります。そうした予想をしている投資家がいるということなのでしょう。
2つ目は日銀の当座預金のマイナス金利適用範囲が拡大していけば、銀行は余剰資金の別の運用先を探す必要が出てきます。仮に当座預金が−0.1%なのであれば、国債のマイナス金利が−0.05%でもそちらの方が得、ということですね。
とは言いつつ先日もご案内しましたが、日銀の当座預金の中でマイナス金利が適用されるのは全体のわずか4%程度です。つまり全体的にはまだまだ圧倒的に「プラス金利」ということですね。
>>>マイナス金利ってそもそも何!?今後の住宅ローン金利はどうなる?
さらにこのマイナス金利はまだ発表されたばかりで、実際に適用されているわけではありません。つまり金融市場も銀行もメディアも世論もちょっと過剰反応しすぎのような気がするのですがいかがでしょうか?
ただ銀行が慌てれば慌てるほど住宅ローン金利については下落する可能性が高まるわけですから、住宅ローン利用者からすればこのタイミングでしっかり「漁夫の利」を得ればよい、という割り切りもあるかもしれませんが。
ちなみにいつものように長期金利のグラフをチェックするとこうなっています。
マイナス金利発表直後から急落し、一時マイナスになったのは申し上げた通りですが、足元では0.005%とギリギリプラス金利を維持しています。個人的にはまずはこのゼロ金利近辺が適正水準であるような気がするのですがいかがでしょう?
上記の通り、実際の「マイナス金利」が非常に限定的にスタートすることを踏まえれば、一気にマイナス金利が広まることは少し違和感があるからです。
とは言いつつ。
住宅ローン利用者として気になるのは「その後」ですね。つまり日銀がさらなる追加緩和を実施し、マイナス金利を拡大した場合に住宅ローン金利がマイナスになる場合があるのかどうか、ということです。
常識的に考えれば住宅ローン金利がマイナスになることはありません。なぜならマイナス金利の世界では「借りると得する」わけですから、逆に言えば「貸すと損する」ことになります。わざわざ手間暇かけて融資した住宅ローンが最初から赤字ということであれば収益的には「貸さない」ことがベストです。
本当にマイナス金利の世界となれば、銀行は預金者から利息をもらいつつ(マイナス金利では預金者が利息を払います)、預金はすべてタンス預金にしておくのが最も合理的なわけです。
もちろん預金者がすんなり利息を払うとも思えませんので、実際に預金金利がマイナスになるかどうかはかなり微妙ですが、であればなおさら住宅ローンがマイナス金利となる可能性は限られてきます。
ではそれでも住宅ローン金利がマイナスとなる場合というのはどういうケースでしょうか?
1つ目は事務手数料や保証料などの「隠れ金利」を含めればプラスになる場合ですね。たとえばこれらの「隠れ金利」が「+0.2%」程度だとすれば、表面金利が「−0.1%」といった水準になることはあり得るということです。
実際には人件費や、貸し倒れ率なども加味しないといけませんので、さすがにこの実質的な利ざや=+0.1%で銀行の住宅ローンビジネスの採算が合うとは思えませんが・・・。
よく「マイナス金利の住宅ローン」の例として取り上げられ、上記記事でも紹介されているデンマークの住宅ローン専門会社ノルディア・クレジットの住宅ローンも、「銀行に払う手数料を加えた実際の金利は0%を少し上回る。」とのことですから、これに当てはまるのかもしれませんね。
2つ目はお約束ですが、「最初だけ金利がいい」パターンですね。例えば当初3年間は「−0.1%」だけれど、残りの32年間は「+1.0%」になる、といったケースです。この場合も全体的にはプラス金利となりますので銀行としては取り組み易いですね。
最初の3年間で逃げられてしまうと元も子もありませんが。
3つ目は「住宅ローン金利はマイナスだけれど他の取引ではプラスで、全体的にも採算はプラス」というケースです。例えば預金の「マイナス金利」をがんがん払ってくれる、といったケースや、送金手数料・ATM手数料などの手数料、あるいは投資信託や外貨預金などの手数料を銀行にどんどん落としてくれる、といったケースですね。
つまり優良顧客向けの優遇サービスのような位置づけですが、これまた現実的にはなかなか難しいものと思います。住宅ローンのコストを賄うだけの利益を落としてくれる取引というのは想像しづらいからです。
むしろこれは銀行よりはハウスメーカーや住宅販売会社などで取りうる作戦かもしれません。要するに住宅販売でしっかり儲けて、ローンでは多少損をしてもいいという考え方です。消費者からすれば単に「割高な住宅を買わされているだけ」ということになりますが・・・。
一方、マイナス金利として最もありえそうなのが4つ目の「仲介するだけの住宅ローン」のケースでしょうか。
銀行は自分で預金を集めますので、わざわざマイナス金利をつけてまで住宅ローンを貸すくらいなら、貸さない方がよっぽど「儲かる」わけですが、もし「お金を出す人」は別にいて、金融機関は単に仲介者として販売するだけであればその住宅ローンの金利がプラスであろうとマイナスであろうと関係ありません。販売できれば手数料が手に入るからです。
ではそんな「お金を出す人は別にいて、金融機関は単に仲介者として販売するだけ」の住宅ローンというのはどういうものがあるのでしょうか?
その最も典型的な例が「フラット35」ですね。フラット35は住宅金融支援機構が投資家に販売した債券の代金を元手に住宅ローンとして貸し出されています。その債券金利は市場金利に概ね連動していると思いますので、仮に市場金利が大幅にマイナスとなれば、債券金利もマイナスとなり、出来上がりの住宅ローン金利もマイナスになる可能性はゼロではありません。
もちろん住宅金融支援機構もそうした状態になれば銀行と同じように、債券を発行しつつ、住宅ローンの貸出を「しない」方が利益が上がるわけですが、ただ公的機関として「住宅の金融支援」を使命としている以上、そうした判断はしないと思われます。
であれば、住宅金融支援機構が一定の損失を負担する形でのマイナス金利の住宅ローンというのはあり得るかもしれません。
ちなみにその損失も結局、最終的には国民負担になるわけですが・・・。
それはともかくとして、ではどれくらい金利が下がるとフラット35がマイナスになるのか、ということですが、1月の長期金利が概ね0.2%前後の時のフラット35の最安値が1.5%程度ですから、必要な利ざやはおおむね「1.3%程度」ということになります。
つまり長期金利が「−1.3%」程度まで下がれば、フラット35の表面金利がマイナスになる可能性が出てくるということです。
ただ残念ながらフラット35には別途手数料がかかりますし、団体信用保険も有料です。これらの「隠れ金利」を「0.5%程度」とするなら、実質金利がマイナスとなるのは長期金利が「−1.8%」程度まで下がった時、ということになります。
すでにマイナス金利の「負の側面」が出始めている現状を踏まえれば、残念ながらそこまでマイナス金利が拡大する可能性はほぼゼロですが、「マイナス金利の住宅ローン」を切望されている方は参考になさってください。
個人的には、政治的なリスクもはらむマイナス金利の拡大はこれ以上ないような気がしてきましたが、果たしてどうなるでしょうか?