長期金利のこれまでの動きを振り返ると上記グラフの通りですが、2011年の東日本大震災の影響や、リーマンショック以降、追加的な金融緩和期待が続いてきたこともあり、中長期的に下落トレンドを維持してきました。
特に金利が急低下したのが2013年の4月初旬でしたが、これは新しく日銀総裁に選ばれ、大規模な金融緩和を約束していた黒田総裁が、その新しい金融緩和策を発表したタイミングですね。新しい金融緩和は「量的・質的金融緩和」というのが正式名称のようですが、別名「異次元緩和」と呼ばれる、市場の期待を大きく上回る大規模な内容でした。
2014年10月末には驚きのタイミングで日銀による新たな異次元緩和第2弾が発表されたこともあり長期金利はさらに大きく低下しました。
しかし何と言っても「事件」は2016年1月に発表された異次元緩和第3弾ですね!日銀はここでついに「マイナス金利政策」を発表しました。
マイナス金利と言われても全くピンとこないですが、要するに銀行が日銀にお金を預ける場合に利息を取ることにしたのですね。通常、お金を預ければ利息がもらえるわけですが、逆に利息が取られるわけですから「マイナス」金利と表現されるのです。
もちろんあくまでこれは銀行と日銀の間で起こることですので個人客に直接影響があるわけではないのですが、銀行からすれば日銀にお金を預けるとペナルティを取られるようなものですから、少なくとも国債でも購入しようとするはずです。国債価格の上昇=金利低下ですから、このマイナス金利は強力な金利低下要因になります。
実際、2016年2月以降の長期金利はマイナスでしたね。やはりマイナス金利政策の影響は強力でした・・・。
ただその後の長期金利の動きをチェックしてみると、2016年後半から金利が突然上昇しました。となると今後の金利上昇リスクが気になるかもしれませんが、2016年9月に発表された新たな金融緩和の枠組=「長短金利操作付き量的・質的金融緩和=いわゆるイールドカーブコントロール」において、長期金利の操作目標は「0%」に設定されていますので、今の水準から大きく上昇することはなさそうです。この5年間の長期金利の推移はと言うと以下のグラフの通りとなっています。
■長期金利推移(グラフ期間5年)
実際、2017年以降、金利上昇はピタっと収まっていることが分かります。住宅ローン利用者としてはありがたい状況です。
他方、懸念される動きとしては2018年7月末の日銀の金融政策決定会合において、長期金利の変動幅を以下のように変更したことが挙げられます。
・変更前:−0.1%〜0.1%
・変更後:−0.2%〜0.2%
これまで長期金利が0.1%に近づくと日銀は「指値オペ」を実施して金利上昇を抑え込んできたわけですが、0.2%まで上昇することが容認されましたので、住宅ローン金利についても相応に上昇する可能性が出てきました。
上記グラフを見てみると確かに2018年7月以降、長期金利は明らかに上昇しました・・・が。
足元では0.020%となっていますね。つまり金利は低水準のままだということです。これは2018年秋以降の世界的な株安や金利安の影響を受けたものですね。
また過去1年はコロナ問題の影響を受けてなぜか金利が上昇傾向にあるのは気になるところです。今後の動きには要注意です。
ただこうした動きはあくまで長期金利=10年金利の話ですので影響が出てくるのは住宅ローン金利の中でも「固定金利」の方です。
短期金利については引き続き誘導目標が「−0.1%」とマイナス水準が維持されていますので、住宅ローンの「変動金利」についてはこのまま低金利が続くことが期待できそうです。
日銀の「フォワードガイダンス」によって、当分低金利が維持されることが「約束」されていますので、その点も変動金利には追い風ですね。
ちなみに長い目で見れば、基本的には景気と金利は連動していますので、景気が回復していくとするといつかは金利も上昇することになります。
さらに異次元緩和により本当にインフレ経済が実現され、金融緩和が解除されれば金利は直接的に上昇することになります。
日本のこれまでの構造的なデフレ状況を考えれば、そう簡単にインフレにはならないとは思いますし、長期金利の推移をみてもらえれば分かるとおり、過去上昇したと言っても2%弱であり、仮に金利が上昇したとしても、驚くような高金利になる可能性は極めて低いのは間違いありません。しかしながら住宅ローンは借り入れ金額が大きいだけに金利が低いに越したことはないですね。
金利が多少回復したとは言え、それでもまだ史上最低水準にあり、物理的に考えて住宅ローン金利そのものがマイナスになることはないでしょうから、今はほぼ限界の水準と考えて良いと思います。つまり住宅ローン金利がここから大きく下がることは考えにくい、という意味でも、繰り返しになりますが、やはり今が住宅ローンを借りる、もしくは借り換えるのに絶好のタイミングですね。
住宅ローン金利が低い間に、焦らず、慌てず、しかし着実に検討を進めていただければと思います。
2021年1月の住宅ローン固定金利は「変わらずか少し引き下げ」という状況です。この1ヶ月で市場金利は大きな変化がありませんでしたのでそれに準じたものですね。
変動金利もいつもと同じく「変化なし」ですので、じっくり検討していただければと思います。
今月の具体的な住宅ローンの金利水準は以下の通りです。引き続き1%を大きく下回るものも提供されています。住宅ローン減税を加味すれば実質的な金利負担がゼロもしくはマイナス=メリットの方が大きい場合もありそうです。
■2021年1月の住宅ローン金利状況(実質金利)
・変動金利 :0.398%〜2.675%
・10年固定:0.53%〜3.85%
・20年固定:0.900%〜1.48%